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プレス技術 連載「モノづくり革新の旗手たち」

2025.07.16

高度な精密金型技術を武器に金属セパレータの製造技術を強化 燃料電池技術の発展に貢献する―ニシムラ

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㈱ニシムラ 代表取締役社長
木下 学氏

金型とプレス、二つの技術で課題を解決する

セパレータの図面を見たときの印象は。

まず心配したのが、当社が持っている設備で金型が作れるのかということ。セパレータの金型に要求される精度はμm オーダー、成形品では溝の形状の寸法精度のみならず全体の平坦度も求められます。実際金型を削ってみると案の定、精度が出ない。それもそのはず、当時保有していたのは一般的なマシニングセンタでしたので精度が出るわけがありません。
これではいけないと思い、先代に6,000 万円する高性能加工機の導入を具申しました。ところが、当時の当社は今より規模も小さかったので6,000 万円という大金がポンと出てくるわけがありません。そこでものづくり補助金に目をつけ、半分は補助金で賄うから半分出してほしいとしてようやく認めてもらいました。申請書を書いて何とか補助金を獲得。さっそく導入して試行錯誤を経て金型ができました。
高性能マシングセンタによる加工

高性能マシングセンタによる加工

試打ちの結果はいかがでしたか。

寸法精度や平坦度がばらついて使い物になりませんでした。セパレータの形状上、溝など加工が密な部分と、外縁の疎な部分のギャップが激しく、材料にかかる応力のバランスが崩れひずみが発生するのが原因です。同業者がハイブリッドの仕事で稼いでいましたので、大変なものを受けてしまったというのが本音でしたが、そこから金型の開発に加えて、プレス成形技術の開発も同時並行で進めていきました。

どのように乗り越えましたか。

トライ&エラーで試打ちと型修正を繰り返して精度を上げていきました。最初こんな形で、次にあんな形にしてといった具合です。地道な努力がノウハウとして蓄積され、今ではお客様から図面が来ると、だいたい必要になる工程に予測がつくようになりました。取り組み始めからちゃんとしたものができるまで5 ~ 6 年かかりました。

精度確保のキーなるプレス加工上の要素は。

プレス機械の剛性やスライドおよびボルスタの平行度など機械としての精密さです。そこがしっかりしていれば油圧だろうがメカだろうが問題はありません。なので、当社ではブランク打抜き後の成形加工には1,200t のハイドロサーボプレスを使ってきました。当初は機械メーカーの工場でプレスを借りて加工していましたが、今年、自前の機械を導入しました。導入にあたっては、大きな荷重でベッドがたわまないよう、剛性を高くするためのカスタマイズを施しました。これでようやくブランク打抜きから成形までを自社で完結することができるようになりました。
1300t 対向液圧プレスによる成形加工

1300t 対向液圧プレスによる成形加工

金属セパレータで世界一になりたい

水素社会到来の見通しは。

水素がエネルギー源として普及する時代はもう少し先だと見ています。なので、今は水素時代が到来したときのために実績を積み上げているところです。もちろん自動車についてだけを言えばEV 中心の世界になってしまうかもしれませんが、広くエネルギー問題ということ考えていけば、何か1 つが100% 占めることはありません。燃料電池が使われる分野は必ずありますので、そこの市場をしっかり拾うことを狙います。

今後、どういう会社にしていきたいですか。

セパレータ作りで世界一の会社になることです。エネルギーの問題は人類共通の課題。水素がエネルギーとして利用され、その時、あらゆる機器に当社の製品が組み込まれ、自分たちが好きなモノ作りが地球環境を守ることに貢献できるなど、そんなやり甲斐のあることはないと思っています。
ですが、そのためにはセパレータ事業に限らず、さらに「高精度」にこだわっていかなければならないとも思っています。例えば、バッテリーの中に入っている触媒をゼロから1μm のクリアランスで抜いてほしいなどという要望もいただきます。こういった加工は普通のプレス金型メーカーではできないのでおのずと当社の出番が増えてくるはずです。セパレータに限らず、様々な部品が当社の土俵に入ってくるのではないかと期待しています。
高精度を実現するために温度管理は不可欠

高精度を実現するために温度管理は不可欠

きのした まなぶ:1973 年生まれ。51 歳。1995 年、ニシムラ入社。技術部を経て、2015 年、代表取締役就任。家族は妻と二女。趣味はゴルフ。
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