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プレス技術 連載「モノづくり革新の旗手たち」

2025.08.25

高度なパイプ加工技術と試作部品開発のノウハウを武器に新規需要の開拓に邁進する―イセ工業

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イセ工業㈱ 代表取締役
秋庭 新吉氏

 1979 年創業のイセ工業(愛知県安城市)は、パイプ加工部品を手掛けるプレス加工メーカー。各種自動車エンジン向けパイプ部品の試作・開発を中心に受注を拡大、急成長を遂げてきた。設計から製造・検査に至るまで一貫生産を得意とし、最近では幅広い生産技術の蓄積を背景に航空機部品の製造に乗り出すなど業容を拡大している。同社の二代目社長 秋庭新吉氏に同社のものづくりに対する想いと、これからの戦略について聞いた。

航空機部品のアセンブリにフォーカス

『プレス技術』編集部

パイプ加工を得意としています。

秋庭

自動車の排気関連部品などパイプ加工部品を試作メインで作ってきました。当社は開発・試作をメインにやってきた会社なのでEV にせよエンジンにせよ、新しい製品が作られないと仕事が増えないという課題があります。現在は、EV 開発自体が先送りになっている一方、一部再開が決まっているエンジン開発についても限定的なため厳しい状況が続いています。それを補填するために航空機部品などさまざま部品を開拓しており、一部実績が出始めたところです。

御社の強みは。

主なものは三つ、コア技術である「パイプ加工」、豊富な加工レパートリーを駆使した「一貫生産体制」、開発・試作で培われた「小ロット生産対応」です。特に一貫生産に関しては、メインのパイプ加工のほかに組立・溶接技術、各種治具設計製造、パイプ加工にまつわる金型設計製造などの複数の要素技術があり、部品を作って、アセンブリをして、測定まで社内でできるというのが大きな強みであり、ワンステップなものづくりに対応できる手を持っています。
穴あけ加工とベンダー曲げ加工サンプル

穴あけ加工とベンダー曲げ加工サンプル

EV シフトに対する準備はいつ頃から。

2017 年頃からです。EV シフトのみならず、その少し前から自動車に対する新たなニーズとしていわゆる「CASE」が提唱され、さらに生産技術についても部品の共通化などの試みが活発化するなど自動車の開発環境自体が大きく変わってくることが予想されていました。なので、当社でも2017 年には幹部を集め、2018 年からの5 ヵ年計画として経営計画書を作成し、現状の外部環境分析から未来予測までを実施。5 年後、自社がどうなっていたいか、そのためには何をすべきかをロードマップの形でまとめていきました。

そのときに見えてきた課題は。

最大の課題は試作開発への依存度が高すぎることでした。当社の売上比率のうち試作・開発が約8 割。それらの売上げのすべてをほぼ1 社から毎年、繰り返し発注いただいて会社が成長してきました。ただ、これからもそのペースが続くとは考え難く、お客様にどうやったら注文を続けていただけるか戦略を再検討する必要がありましたし、それとは別に新規分野の開拓、例えば航空機部品などへの挑戦も必要になると考えました。

航空機部品にフォーカスした理由は。

航空機産業は規模としても大きく、また当社が普段得意としている小ロット品の数量が航空産業に置き換えると量産部品の規模感に該当するなど、当社の生産スタイルにマッチしていたからです。さらに、ちょっとした手作業が求められることも当社にとって好都合でした。航空機産業ではこれまで手作業を含む仕事を依頼しても引き受けてくれる会社がなく困っていたという背景があります。
今はまだパイプ曲げ部品単品のみを注文いただいている状況ですが、今後はアセンブリ製品として提供できるようにするつもりです。航空機産業にはアセンブリも含めて1 社で完結したいというニーズがあり、実際、お客様からもそれを求められています。アセンブリまで受注できれば、事業としてまた違う世界が見えてくるはずです。実際、取り組んでみると、当社は航空機産業の水に合っていると感じています。

技術的な課題はありますか。

溶接部位の品質マネジメントです。特にアルミ溶接が曲者で微細な溶接巣もあってはならず、厳格な審査や認定が必要になります。検査には測定装置が新たに必要になるなど負担もありますが、これをクリアしないと溶接工程を任せていただけません。

自動車の品質マネジメントとの違いは。

マネジメントに求められる考え方や強度が違うと感じています。資材調達から各工程すべてにおいて、いつ・誰が・どの機械でどのように作ったのか製品ごとのプロセス管理の厳密化が求められ、それを証明するために航空・宇宙用のJIS Q9100 などの追加要求事項に対する認証取得も求められます。当社でも愛知県の支援を受けながら今年1 月に審査を受けて、順調にいけば3 月末ぐらいには認証を取得できる予定です。これにより、本格的な参入のための準備が整う状況です。

既存顧客への影響は。

既存の自動車部品関連のお客様にとってもメリットがあると考えています。当社が人員体制を含めて現在の規模を維持することができれば、納期など負荷変動への対応が可能となり、今まで通り発注いただけるはずだからです。
端末処理用パンチ

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端末加工用プレス機械

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