利益の方程式を追求しよう!
それでは利益を増やしていくためには、どうすればよいのでしょうか。もの作り企業においては、図表1の「利益の方程式」を追求していくことになります。つまり、儲けるためには「原価より高く売る」ということです。この当たり前ともいえる公式をまぶたに焼き付けておいてください。
残念ながら、まず会社が「儲かる見積り(値決め)」を作成できる体制になっていなければ、どれだけ品質をよくしても、どれだけ短納期に対応をしたとしても、利益は残りません。
しかしながら、私がみてきた多くの中小製造業では「自社の個別製品原価を正確に計算できていない」というケースが実は大半を占めています。原価がいい加減なので、どの製品が、いくら儲かるのかをビシッと把握できていないのが実態でした。
粗利ではダメ! 全社利益で考えよう!
原価がいい加減な企業の多くは、粗利で損益判断を行ってしまっている傾向にあります。粗利とは文字通り、粗々(あらあら)とした利益です。実は粗利の中には未計算の費用が含まれています。
図表2を見てください。これは「粗利=売価−材料費−加工費」としている会社の場合です。ここでの粗利には純粋な利益の他に製造間接費や販管費など事務方で発生している費用が含まれます。もの作り企業も販売するまでが仕事なので、こうした費用も含めて「原価」としておかないと本当はいくらで値決めをすれば儲かるのかが分からなくなってしまいます。大切なのは粗利ではなく「全社利益」で考えていくことです。
図表3は「全社利益=売価−全社原価」として考えていった場合です。全社原価とは、製造や販売に費やした全ての費用(材料費、労務費、減価償却費、エネルギー費の他、会社の運営にかかった経費)を製品1個あたりに適切に配賦、計算したものを言います。このように全社原価がズバリ80円/個であると明確になっていれば、誰がどう見ても最低でも死守したい売価はまずこのラインになると思います。
一方、図表2のように粗利で考えてしまっていると、これ以上は譲れないという防衛ラインが粗利の中に隠されてしまいます。これでは価格交渉の際に「いくらまでなら下げても大丈夫なのだろう…」と困ることになります。
儲かる値決めをしようと思うのであれば、粗利ではなく全社利益で判断していくべきですし、そのためにも岩盤のように固く正確な原価計算できるようにしておきます。これが利益を考えるにあたっての大前提であり、非常に重要な部分です。もちろん筆者は中小製造業のための原価管理手法をお教えしています。