原価は一つ。売価は無限大。
原価計算の結果は、社内のだれが行っても一つの数字になるようにしておかねばなりません。このあたりのルールがいい加減だと問題が起きてきます。このような状態に陥っていると、経営者や営業は何を信じて損益判断や値決めをしていけば良いのかわかりません。
しかし、売価は無限大です。図表2 のように、時と場合によっては同一製品、同一原価であってもケースバイケースで様々な売価設定が行われます。
もの作り企業にピッタリの原価構成
一般的に、①材料費、②人件費、③経費、この3 つを原価の三要素と言います。ところがこの表現方法だと、製造業で働く人にはピンと来ません。特に③経費の部分が厄介です。経費と言われると、出張費や事務用品代などをパッと思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
しかし、多くの部品加工メーカーが保有しているプレス機や溶接機などの生産設備の購入費も、一般的には経費に該当してきます。決して間違いではないのですが、どこかしっくりきません。そこで製造業の場合は、図表3 のように原価構成を考えていくと、納得感が湧いてくると思います。
まず、①材料費ですが、これはそのままで良いです。次に、②人件費と③経費の部分ですが、これらを加工費と間接費という形でとらえていきます。そして、加工費はマンとマシンに分けておきます。これが最大のポイントです。マンに関する加工費のことを「直接労務費」、マシンに関する加工費のことを「設備費」と言います。
1.マンとマシンに分ける理由
その理由は、もの作り企業には人手中心で加工する職場と、機械中心で加工する職場があるためです。もし、マンとマシンを一括りに「加工費」としてしまうと、作業人数や工数、機械の種類、取得金額の大小、設備稼働率の前提などが原価計算書に反映しづらく、原価の実態を捕まえることが困難になります。
そのため、コストダウンのメスの当てどころが不明瞭になったり、コストアップ時や価格転嫁時の原価シミュレーションがやりづらくなったりします。収益改善を進めるにあたって、これらは致命的です。
残りは間接費です。間接費にもいろいろ種類がありますが、基本的には事務方でかかっている費用と考えておけば良いです(ちなみに外注費や運送費といった原価項目も、企業によっては原価計算書に見える化していくのですが、ややこしくなるので別の機会に述べたいと思います)。
今回は、多くの中小企業が誤解している「原価と売価」について解説をいたしました。本来の姿と比較して貴社の現状はいかがでしたしょうか?
この部分を間違えていては、いつまで経っても儲かる値決めにはつながっていきません。しっかりと利益を残していくため、会社の仕組みを正していってほしいと思います。
次回のテーマは、“顧客の後出しジャンケン”や“理不尽な要求”に負けないための「見積りの6 条件」です。お楽しみに!