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プレス技術 連載「値決めの鉄則」

2024.11.06

第3回 原価と売価を混同するな!

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西田経営技術士事務所 西田雄平

原価とは?売価とは?

 それでは、本来はどのように考えていくべきなのでしょうか。筆者は原価と売価について、それぞれ次のように定義しています。
原価とは
製品1 個の製造や販売に費やした材料費や労務費、減価償却費、その他すべての経費を合計した価。利益は含まない。
売価とは
需要と供給の関係により適正に決定された価。通常は原価に適正利益を乗せる。

原価にはすべての費用を含める

 ポイントは、原価は製造や販売に費やしたすべての費用である点です。もの作りも商売ですから、販売するまでが仕事です。企画・開発・引合の段階~製造~顧客に納品するまでにかかるすべての費用を原価計算しておかねばなりません。具体的に言えば、製造部門でかかっている費用だけではなく、営業や生産管理、総務経理などの事務方で発生する労務費や諸経費なども、製品1 点1 点に適切な方法で配賦していきます。計算方法は少々複雑ですが、しっかりと原価算入していかねばなりません。このようにすべての費用を計算した原価のことを、筆者は「全社原価」と呼んでいます。

 なお、次は筆者が企業診断時に出会ったNG 原価の事例です。どの企業においても、儲かる値決めができずに困っていました。自社の現状と比較してみてください。
NG 原価の例
 ・材料費しか計算していない。
 ・加工費が一部の工程しか計算していない。
 ・ロスが考慮されていない。
 ・ 間接費や販管費が製品1 個あたりの原価に配賦されていない。
 ・粗利が○○ % あればOK としている。

原価に利益は含めない

 第2 のポイントは、原価に利益は含まないことです。原価に利益を含めてしまうと、いくら儲かるのか分からなくなってしまいます。当たり前のことですが、意外とできていません。「売価計算書」と「原価計算書」の混同が最たるNG 例です。他にも次のような間違いによって、原価に利益が含まれていることがあります。これでは物価上昇の局面において瞬時に正しい原価へとメンテナンスすることができず、値上げの機を逸することにつながってしまいます。

 なお、瞬時にメンテナンスすると言っても、立派なソフトウェアを導入する必要はありません。筆者の顧問先企業の大半はエクセルベースで十分運用できています。
NG 例
 ・売価計算書を原価計算書と誤解している。
 ・チャージやレートの、
  …設定方法や根拠が不明。
  … 過去に誰かが決めたきり。何年も更新されていない。
  … 競合は○○円ぐらいだから、当社は○○円ぐらいとしている。

原価は計算するもの。売価は設定するもの。

 このように原価は製品1 個の製造や販売にかかったすべての費用を計算したものです。したがって実際に原価計算をする際には、

「材料費は◇◇だから○○円/ 個かかる、加工費は◇◇だから○○円/ 個かかる、間接費は◇◇だから○○円/ 個かかる、だから全社原価は○○円/ 個なのだ!」

という具合で数字と根拠にもとづいて計算していきます。

 しかし、売価は設定していきます。自社が目標とする利益率、受注状況、工場操業度、マーケットの状況、市場価格、顧客のターゲット価格、競合の有無、顧客との関係性、将来性などを総合的に考え「いくらで売ろうかなぁ」と、設定していくのです。
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