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プレス技術 連載「値決めの鉄則」

2025.01.20

第8回 避けては通れない間接費用の計算方法

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西田経営技術士事務所 西田雄平

にしだ ゆうへい:代表取締役
2009年、大学卒業後、ミネベアミツミ㈱に入社し購買管理業務に従事。24歳のときにタイ工場に赴任。現地マネジメントに加え、現地の経営者とタフな商談や価格交渉を経験。2015年、西田経営技術士事務所入社。全国の中小製造業へ「収益改善プログラム」を導入。原価と値決めにメスを入れ、顧問先企業の利益創出に億単位で貢献。主な著書『中小企業のための「値上げ・値決め」の上手なやり方がわかる本』(日本実業出版社)。
https://www.ni-g-j.co.jp/

※記事の無断転載は固くお断りいたします。
 今回のテーマは「間接費」。もの作り企業が「儲かる原価と値決めの仕組みづくり」を進めていく際にぶつかる最大の難所です。当社へご相談に来られる企業の多くが、適切な求め方を知らないが故に誤ったやり方を長年続けてしまっています。これまでの連載で述べてきた内容とも密接に関連してきますので、読者の皆様は時折バックナンバーを振り返り、電卓を片手にじっくりと読み進めてほしいと思います。

間接費とは?

 間接費とは、平たく言うと事務方でかかっている費用です。例えば、製造管理者や総務、経理、営業、生産管理、品質管理、技術、設計部門でかかっている人件費や、そこで発生している諸経費(工場建屋代、事務所家賃、電気代、旅費交通費、事務用品代、倉庫代、共通設備代など)です。実際には企業の事情を個々に考慮し「何を間接費とするか」を定義づけしながら原価算入していく必要があります。

なぜ、間接費を原価算入しておく必要があるのか?

1.全社原価で損益判断するため!

 儲かる値決めとは、「全社原価」より高く売ることです。したがって、顧客から仕事の引き合いがあった段階で「全社原価」を正確に把握できていなければいけません。「全社原価」とは、製品1 個の製造や販売に費やした材料費、人件費、減価償却費、その他すべての費用を合計したものでしたね。間接費の位置づけを図表1 で確認してみてください。
図表1 原価の構成(例)

図表1 原価の構成(例)

 しばしば、図表2 のように材料費と加工費を合計したものを原価とし、粗利で値決めしている企業からの相談を受けますが、多くの方が「間接費まで含めて考えると、本当に儲かっているのか不安だ」と打ち明けられます。全社原価を把握するため、間接費を個別製品原価に配賦していきましょう。
図表2 (NG 例)間接費が原価算入されていない場合

図表2 (NG 例)間接費が原価算入されていない場合

2.「間接費もコストダウン対象だ」という“心”を持つため!

 残念なことに、多くの企業でコストダウンのターゲットにされるのは、いつも製造現場ばかりです。「ロスを減らせ!」、「もっと早く作れ!」、「生産性を上げろ!」、こういった声がよく聞こえてきます。つまり、原価項目で言うところの「材料費、直接労務費、設備費、段取り費を下げろ」ということですね。確かに製造コストの削減は重要なことですが、ほとんどの場合、これを間接部門で働く人たちが言われる訳です。ところが自分たちが発生させている「間接費」については、原価計算書に見える化されていなかったり、一種の聖域のようになっていたりして、コストダウン対象から除外されていることがあります。

 筆者は、これはフェアではないと感じています。間接費も原価の一部なのですから、事務方であってもコスト意識を持って仕事のパフォーマンスを高めていかなければいけません。間接費の原価占有率(全社原価を100% とした際の各原価項目が占める割合)を計算してみると分かりますが、そのウェイトは決して小さくありません。間接費もコストダウン対象になって然るべきです。

 実際に顧問先で間接業務改善に着手していくと、不要な備品や資材、リース代、外部倉庫代、駐車場代、物流費など、長年見過ごされてきた改善対象が続々と発掘されてきます。

 個人の仕事の仕方にしても同様です。何年も前から惰性で不要な資料づくりを続けていたり、頬杖をついてちんたらPC 業務をしていたり…と自己研鑽も含め、やるべきことはまだまだあります。

 ぜひ間接費もしっかりと原価算入し、全社一丸となって収益改善を進めてほしいと思います。
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