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プレス技術 連載「値決めの鉄則」

2025.01.20

第8回 避けては通れない間接費用の計算方法

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西田経営技術士事務所 西田雄平

間接費の計算方法

 それでは具体的な間接費の計算方法についてご説明いたします。少々難解なので何度も読み返していただき、可能であれば自社の数字を用いて計算してみてください。

 製品1 個あたりの間接費は、下記の公式に当てはめて求めていきます。
製品1 個あたりの間接費(円/個)
=加工費(円/個)×間接費レート(%)

1.基本はABC 方式

 ABC 方式とは、Activity Based Costing の頭文字をとったもので、「活動基準原価計算」と訳します。Activity = 活動、Based = 基準、Costing =原価計算という意味です。

 簡単に言うと「間接費のように、どの製品に、いくら配賦したら良いか分かりにくい費用は、加工費の大小に応じて、間接費を多く配賦するか少なく配賦するかを決めよう」という考え方です。

 例えば、皆さんの手元にあるボールペン。ボールペンを生産する際にかかる加工費は、想像ですが、おそらく数十円程度ではないでしょうか。本体があり、中芯があり、スプリングがあり、それらを組み立てる。このような感じでボールペンの形に組立て加工されていきます。

 一方、皆さんが身に付けている腕時計。腕時計を生産する際にかかる加工費は、おそらく数千円~数万円はかかっていそうです。部品点数が何十~何百点あり、組立て加工は難しくなります。

 そこで間接費については、加工費の高いものほど、それだけ間接費も多くかかっているはずだと“みなして”いきます。
ボールペン  腕時計
加工費 < 加工費
間接費 < 間接費→ こうなっているものと“みなす”
 加工費の高い製品ほど、
「営業部門は、お客様とのやり取りの回数が多くなっているはずだ」
「設計部門は、図面の枚数が多くなっているはずだ」
「生産管理や総務・経理も、伝票の枚数や諸々の手間暇がそれだけ多くかかっているはずだ」
このように考えて、個別製品原価に明確に配賦しづらかった間接費を一定ルールの下で算入していきます。

2.間接費レートとは

 間接費レートとは、ずばり直間比率です。会社全体の直接費用と間接費用の比率がそれです。
間接費レート(%)
= 会社全体の間接費用(円/年)÷会社全体の直接費用(円/年)
(例)
= 1 億円/年÷ 2 億円/年= 50%

3.それぞれの間接費を計算してみよう

 それではボールペンと腕時計の場合に分けて、製品1 個あたりの間接費を計算してみます。便宜上、ボールペンの加工費を50 円/ 個、腕時計の加工費を5,000 円/ 個と設定します。皆さんが自社製品で実際に原価計算する際には、ST ×レート方式で加工費を求めていってください(加工費の計算方法は本連載の第6 回目(4 月号)に掲載されています)。
(例)ボールペンの場合
製品1 個あたりの間接費(円/個)
=加工費(円/個)×間接費レート(%)
= 50 円/ 個× 50%
= 25 円/ 個
(例)腕時計の場合
製品1 個あたりの間接費(円/個)
=加工費(円/個)×間接費レート(%)
= 5,000 円/個× 50%
= 2,500 円/個

とらわれすぎないことが大切

1.どうしても曖昧さは残る

 間接費とは、そもそも個別製品原価に算入しづらい費用です。材料費や加工費のように「*** 円/kg の素材を**kg 使うから** 円/個だ!」とか「** 時間で** 個加工できるから** 円/個だ!」というふうに明確になりません。どうしても曖昧さが残ってしまうのが、間接費の特徴です。ある程度の納得感が得られれば良しとしていくのが、経験上ベターです(ただし、計算根拠やデータの出処の明確化は必須。定期的な原価メンテナンスができなくなり、価格転嫁へのアクションが遅れてしまいます)。

 まずはABC 方式で試してみてください。それでも「ちょっと違うかも…」という企業様は、迷わず個別相談してほしいと思います(稀に一部の企業においてはABC 方式が合わないこともあります)。これまで「ああでもない、こうでもない」と右往左往し、結局、何年も間接費を原価算入しないまま、値決め・値上げに失敗してきた企業を数多く診てきました。ここまで熱心に読んでくださっている読者の皆さんには「同じ失敗をしてほしくない!」と心から思う次第です。

2.ゴールは収益改善だ!!

 間接費の計算は、収益改善のための手段です。決してゴールではありません。

 実際にやってみると、どうしても細かい部分が気になってきてしまうのですが、そのあたりは「原価と値決めの仕組み」を運用しながら、都度ブラッシュアップしていく方が早い段階で収益改善活動へと移行できます。

 常に「目的は何か?」と振り返りながら、取り組んでいって欲しいと思います。

 今月は「避けては通れない間接費の計算方法」というテーマでお送りしました。本連載における「原価」に関する解説はここまでとなります。

 読者の皆様においては、この段階でいったんエクセルファイルを開き、正しい原価計算にチャレンジしてみてほしいと思います。実際に手を動かしていくことが何よりも大切です。

 さて、来月号のテーマは「値決めのルールを作ろう!」です。いよいよ「値決め・値上げ」のステージに入っていきます。次回もお楽しみに!
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