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機械設計 連載「教えてテルえもん!3次元ツール習得への道」

2026.06.08

第28回 3Dプリンタの後処理について

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いわてデジタルエンジニア育成センター 小原 照記

おばら てるき:いわてデジタルエンジニア育成センター長。自動車内装部品の設計会社を退職後、岩手県北上市を活動の拠点に10年以上、3次元デジタル技術関連の人材育成、企業支援に努め、学生から求職者、企業まで幅広く指導し、3次元から始めるDX推進活動を続けている。同センター長のほか、3次元設計能力検定協会の理事も務める。

はじめに 

 3Dプリンタで造形した後には、必ずと言っていいほど、後処理が必要である。今回は、後処理について説明する。後処理は、3Dプリント品の精度を左右する重要な作業である。今回説明する後処理で主に使う道具には、ニッパー、ペンチ、ヤスリ、スクレーパーなどがある(図1)。3Dプリンタの造形方式はさまざまあるが、「材料押出」と「液槽光重合(光造形)」の2種類について説明する。ほかの造形方式であっても共通する内容があるため、ぜひ、参考にしてほしい。
図1  3Dプリンタの後処理に使う主な道具類(左からニッパー、ペンチ、ヤスリ、スクレーパー)

図1  3Dプリンタの後処理に使う主な道具類(左からニッパー、ペンチ、ヤスリ、スクレーパー)

材料押出の場合 

 一般的な材料押出の3Dプリンタを例に、造形後のアプローチについて説明する。材料押出は、熱溶解積層方式と呼ばれたり、英語で「MEX:Material Extrusion」、「FDM」、「FFF」などと呼ばれたりもしている。主に材料としてリールに巻き付けられた細長い糸状になった熱可塑性樹脂(フィラメント)をノズルから押し出して積層する方式である。

 1.造形テーブルから造形物を取り外す 
 造形テーブルから造形物を取り外す。造形物と造形テーブルとの間に、ヘラやスクレーパーなどを少しずつ挿入し、剥がしていく。このとき、強固に密着されていて剥がしにくい場合がある。造形物、造形テーブルを傷つけないように注意が必要である。 

 3Dプリンタの機種によっては、造形終了後、造形中に温められていた特殊な造形テーブルが冷えて簡単に造形物を剥がせるものや、造形テーブルを軽くひねって反らせることで簡単に造形物を剥がせるものなどもある。

 2.ラフト/サポート材の除去 
 造形テーブルから造形物を外した後は、ラフト(土台)やサポート材の除去を行う(図2)。3Dプリンタで材料を積層していく際、下に何もない状態(中空形状)だと、積層しようとした材料は空中にとどまることができず、下に落ちてしまう。それを防ぐのが、中空形状を支えるサポート材である。
図2  材料押出の造形物にサポート材が付いている状態(左)、サポート材を剥がした状態(右)

図2  材料押出の造形物にサポート材が付いている状態(左)、サポート材を剥がした状態(右)

 3Dプリンタの機種や材料によっては、サポート材を水や強アルカリ溶液などで溶かすことができるタイプもあるが、一般的にラフトやサポート材は造形物のモデルと同じ材料が用いられるため、ニッパーやペンチ、手などで引っ張り剥がしていく。サポート材を剥がす際、誤って手を切ってしまったり、破片が目に入ったりする恐れもあるため、作業中は手袋や保護眼鏡をした方がよい。また、サポート材を除去する際、厚みのない細い箇所などは、力を入れすぎて変形させてしまったり、誤って破損させてしまったりすることがあるため、十分注意して作業をする必要がある。 

 サポート材が多く残っているとその分だけ誤差が生じてしまうため、しっかりと除去する必要がある。サポート材を取り除く作業は想像以上に手間がかかる。その手間をできるだけ軽減するには、造形を開始する前に、3 次元モデルの配置やサポート材の設定などを考慮しなければならない。

 3.表面の仕上げ 
 表面の仕上げ方法については、3Dプリンタで造形する目的によって異なるが、紙やすり(サンドペーパー)などを使用して磨いていくことで、ある程度まで表面を滑らかにできる。ただし、使用する3Dプリンタの機種や材料、造形方向にもよるが、方式が材料押出の場合、どうしても積層痕が目立ってしまう。そのような場合、材料がABS樹脂であれば、アセトンで表面を溶かして滑らかにする処理を行うこともある。 

 色を付けたい場合には、模型用のサーフェーサーを吹き付け、パテなどで造形できていない部分(予期せぬ穴や隙間など)を埋めて下地処理を行い、模型用塗料などで塗装する。プラモデルに色を塗るのと同じ要領である。塗装のほかにもめっき処理を施して見映えを良くし、衝撃に対する強度や耐久性を上げる後処理を行うこともある。

液槽光重合(光造形)の場合 

 最近では、数万円で購入できる液槽光重合(光造形)の3Dプリンタも多くあり、気軽に導入できるようになってきた。液槽光重合(光造形)は、液体の光硬化性樹脂(レジン)の必要な部分に光を照射し、硬化させ積層していく方式である。英語で「VPP:Vat Photopolymerization」、「SLA」、「DLP」、「LCD」などとも呼ばれる。造形テーブルが下がっていくタイプと、上に吊り上げ方式で造形していくタイプがあり、光源もUVレーザーやプロジェクタ、液晶ディスプレイなどさまざまなタイプがある。

 1.造形物の洗浄 
 造形テーブルから造形物を取り外す作業は、基本的に材料押出の方式と同じだが、追加で必要な作業として、造形物の洗浄と2 次硬化がある。造形物の表面に未硬化の液体が付着しベトベトしているため、洗浄作業が必要になる。洗浄にはアルコールを使用する。イソプロピルアルコール(IPA)を主に使用するものが多い。アルコールの購入と保管が必要となるが、最近は水で洗える手軽な材料もある。洗浄時間は、3Dプリンタの機種や材料によって変わってくるが、数分~十分程度行う。長時間アルコールに漬けすぎると造形物が溶けてしまうこともあるため、説明書や注意事項をよく読んでほしい。

 2.造形物の2次硬化 
 2 次硬化は、紫外線ランプを使って紫外線を照射して行う。材料の種類によって、2 次硬化が不要なものもあるが、一般的に高耐久樹脂や耐熱性樹脂などは、2 次硬化をしないと本来の性能を発揮できない。2 次硬化処理を施すことによって、完全に硬化されていない層と層との間を硬化させることができる。 

 3Dプリンタの機種によって、専用の洗浄機や2次硬化装置が販売されている。太陽光や市販のネイルドライヤーなどでも代替可能だが、3Dプリンタと2 次硬化する紫外線の波長を合わせるのが望ましい。

 3.サポート材の除去 
 液槽光重合(光造形)の場合は、モデル材とサポート材は同じ材料で造形される。ニッパーなどを使用してサポート材を除去していく(図3)。造形物とサポート材の接続部を細くして、切り離しやすくするといった工夫がよくとられる。サポート材除去後の仕上げについては、材料押出と同様に紙やすりで表面を仕上げ、サーフェーサーを塗布して塗装することもある。
図3 液槽光重合の造形物にサポート材が付いている状態(左)、サポート材を剥がした状態(右)

図3 液槽光重合の造形物にサポート材が付いている状態(左)、サポート材を剥がした状態(右)

 液槽光重合(光造形)は、材料押出の方式と比べて繊細な形状や表面を滑らかに3Dプリントできる特徴がある。しかし、前述したような後処理が必要になるため、3Dプリンタの導入を検討する際は、後処理の手間について十分に考慮すべきである。
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