機械設計 連載「教えてテルえもん!3次元ツール習得への道」
2024.11.28
第4回 3次元CADでの図面作成
いわてデジタルエンジニア育成センター 小原 照記
おばら てるき:いわてデジタルエンジニア育成センター長。自動車内装部品の設計会社を退職後、岩手県北上市を活動の拠点に10年以上、3次元デジタル技術関連の人材育成、企業支援に努め、学生から求職者、企業まで幅広く指導し、3次元から始めるDX推進活動を続けている。同センター長のほか、3次元設計能力検定協会の理事も務める。
はじめに
3 次元ツール習得の道として、これまで3 次元CADの「モデリング」と「アセンブリ」の基礎について解説してきた。今回は「図面」について説明する。3 次元CADを導入することで、2 次元図面がなくても、3DプリンタやCAMなどによるモノづくりは可能である。しかし、すぐに2 次元図面をなくすのは現実的ではなく、従来のモノづくりの観点からも困難である。一般的な3 次元CADには、2 次元図面を作成できる機能が搭載されている。今回は、3 次元CADに搭載されている基本的な図面機能について取り上げる。
一般的な3次元CADに搭載されている2次元図面機能
一般的な3次元CADには図面を作成する機能があり、3 次元CADで作成した部品やアセンブリなどの3 次元モデルから、2 次元図面を作成できる。作成した3 次元モデルを正面や上、横から見た図を投影して配置することで、正確な形状の図が簡単に出来上がる。図の投影作業をバッチ処理できる3 次元CADもあり、夜中などに数百枚の図面を自動処理できるものもある。製図や2次元CADでは、面倒な等角投影図も、3 次元CADで作成したモデルを2 次元図面上に投影するだけとなり、ワンタッチで作成できてしまう。
等角投影図以外の図も自由自在に投影して配置でき、尺度も簡単に切り替えられる。また、奥側に隠れている線(隠線)を製図のルールにのっとって細い破線で自動表示するほか、3 次元CADでのモデリングと同様、面に色が付いた状態の表示(シェーディング)などにも簡単に切替えが可能だ。例えば、自転車のフレームや配管部品など、曲面同士が交わる図面を作成する場合の相関線(2 つ以上の立体が交わる部分の線)も、特別な技術を必要とせずに作成できる(図1)。
図1 3 次元CAD「Fusion 360」で図面を作成している画面
組図も3次元CADでアセンブリしたデータがあれば、形状を投影し簡単に作成できる。分解図やバルーンを配置し、数量を数える必要はなく、自動で部品表も作成できる(図2)。
図2 3 次元CAD「Inventor」を用いたモールド金型の図面作成の画面
断面図をつくる場合は、投影した図に対して断面にしたい箇所と配置する箇所を指示する(図3)。そうすることで、切断線と断面図が自動で作成される。断面のハッチングも作成され、切断線は製図の規格どおりの線種となる。切断線は1 本の真っすぐな直線だけではなく、折れ線での指示や、断面の部分的な指示など、さまざまな指示が可能だ。部分拡大図を作成したい場合には、投影した図に対して拡大したい箇所と配置する箇所を指示したうえで、尺度を指示すれば作成できる。そのほか、補助投影図や局部投影図、部分投影図など、さまざまな投影図を簡単かつ正確に作成することができる。
図3 3 次元CAD「SOLIDWORKS」での図面作成の画面
図の配置が完了したら、次に寸法(サイズ)を記入していく。2 次元CADと同様の操作方法で、線や点を選択し、長さや距離、直径・半径、角度などを記入していくことになる。3 次元CADソフトによっては、自動で寸法を追加してくれるものもある。3 次元モデルを作成する際、入力した値を表示させるものや、寸法基準を指示して自動で寸法を付加するものなど、便利な機能があるほか、サイズ(寸法)公差や幾何公差、表面粗さや溶接記号など、図面作成に必要な指示記号も付けられる。