機械設計 連載「教えてテルえもん!3次元ツール習得への道」
2025.09.03
第16回 3次元CADにおける「フィレット」をマスターしよう!
いわてデジタルエンジニア育成センター 小原 照記
おばら てるき:いわてデジタルエンジニア育成センター長。自動車内装部品の設計会社を退職後、岩手県北上市を活動の拠点に10年以上、3次元デジタル技術関連の人材育成、企業支援に努め、学生から求職者、企業まで幅広く指導し、3次元から始めるDX推進活動を続けている。同センター長のほか、3次元設計能力検定協会の理事も務める。
はじめに
3 次元CADには、3 次元モデルの角張った部分を滑らかに結んで丸める機能として「フィレット」があり、作成された面を「フィレット面」という(図1)。フィレット面は部品の強度を高め、加工作業を容易にするために利用されるほか、意匠的な観点からもよく用いられる。3 次元CADでフィレット面を作成する場合には、エッジ(稜線)や面を指示し半径値を入力して丸めていく。
フィレットは一定の半径値で作成するのが基本だが、使用する3次元CAD環境によっては、弦の長さで値を指定したり、半径値を可変させることができたり、隣り合う3つの面に接する(3 接)フィレットを作成できたりするものもある(図2)。
モデリングをしている際、何でもないような部分であってもなかなか思うようにフィレット面を作成できず、作業が先に進められないといったことに直面する場合がある。実は、モデリング操作の中でもフィレットは難しい作業に分類される。
例えば、フィレットの作成方法は製品形状によって異なる。フィレットを作成できない箇所への対処方法もその都度違う。また、どのような方法でフィレットを作成したかによって最終形状に違いが出たり、フィレットを作成する順番によって形状が変わってきたりもする。要するに、フィレットはモデリング技術と経験が大きく反映される作業といえる。今回は「フィレット作成の基本的な考え方」について詳しく説明する。
フィレットを作成する順番の基本ルール
フィレットは作成する順番によって形状が異なってくるが、一般的に作成しやすいルールとして、以下の3つがある。
1.接線連続するエッジができるように作成する
2.フェース間の角度が大きいエッジから作成する
3. 凹凸のどちらかを先にまとめて作成する
それでは、実際に例を紹介しながら、フィレットの作成順序を変えることにより、コーナー部の作成結果が異なることを確認していく。
1. 接線連続するエッジができるように作成する
図3 の形状ⅠにR10 の部分からフィレットを作成した場合には、折れが発生する。この状態でR20 のフィレットを作成するとコーナー部に三角面が生じてしまう。3 次元CADにおいて三角面はあまり良くないとされている。データ交換の際の品質に大きく影響してくる。三角面はすべての制御ポイントが頂点で完全に一致していれば問題ないが、現実的には演算誤差が生じ、頂点付近の曲面に「シワ」や「ネジレ」が発生してしまう可能性がある。特にデータ作成した3次元CADとは別な3 次元CADとのデータ交換の際に不具合が発生しやすい。
それではR20 からフィレットを作成した場合はどうだろう。エッジが接線連続になることでR10のフィレットを作成しても三角面はできない。フィレットでエッジを選択する場合に、1 本のエッジを選択すると接線連続になっているエッジを自動で認識して選択することができ、1 本1 本エッジを選択する手間を省いて作業時間を短縮できるメリットもある。フィレットを作成する順番を考える際には、フィレットを作成した際に接線連続の形状になるかをイメージして行うとよい。
2.フェース間の角度が大きいエッジから作成する
図4 の「形状II」と「形状III」は一見すると同じような形状に見えるが、AとBのフェース間の角度が異なる。形状II は、BよりもAの角度が大きくなっている。この場合、A→Bの順番でフィレットを作成した方が鋭角な三角面ができなくて済む。これとは逆に、角度の小さいB から先(B→Aの順)にフィレットを作成すると鋭角な三角面が生じてしまう。
図4 「形状II」と「形状III」にフィレットを作成した例
もう一方の形状III は、AよりもBの角度が大きくなっている。この場合、形状II と同じくAから先(A→Bの順)にフィレットを作成してしまうと鋭角な三角面ができてしまう。このケースでは、角度の大きいBから先(B→Aの順)にフィレットを作成すべきなのである。
以上のように、「フェース間の角度が大きい方のエッジからフィレットを作成する」と、品質の良いフィレット面を作成できる。
3.凹凸のどちらかを先にまとめて作成する
図5 の「形状IV」に対して、凸エッジ→凹エッジ→凸エッジの順番でフィレットを作成すると、いびつなラインが生じてしまう。これを防ぐには、まず凸エッジ→凸エッジの順にフィレットを作成した後に、凹エッジにフィレットを作成する必要がある。「凹凸どちらかのエッジを先にまとめてフィレットを作成する」ことで、品質の良いフィレット面を作成できる。凸形状にフィレットを作成すると形状が削られて丸みが付く。逆に、凹形状にフィレットを作成すると肉盛りされるように形状が追加される。