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機械設計 連載「教えてテルえもん!3次元ツール習得への道」

2024.11.28

第4回 3次元CADでの図面作成

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いわてデジタルエンジニア育成センター 小原 照記

3 次元CAD で2 次元図面を作成するメリットとタイミング

 3 次元CADで2 次元図面を作成する大きなメリットは、設計変更に対しての3 次元モデルと2 次元図面の連動性だ。3 次元モデルに修正が入り形状が変更された場合、2 次元図面にもきちんと連動して反映される。記入していた寸法や、作成していた断面図、詳細図などもすべて連動して修正される。正面図は修正したけど右側面図は修正し忘れた、という、製図や2次元CADにありがちな問題は起きない。3 次元CADで2 次元図面を作成することで、各投影図と寸法(サイズ)に矛盾のない図面を作成できるのが大きなメリットである。

 ここまで3 次元CADでの2 次元図面機能について説明してきたが、製図や2次元CADの経験がある人であればあるほど、3 次元CADで簡単に図面をつくれることに驚くだろう。2 次元CADから3次元CADに移行した設計者の中には、「2 次元の図面作成が楽になる」という理由で利用する人もいる。

 上記で述べてきたように、一般的な3 次元CADの場合、3次元モデルと2次元図面は連動する。このことから、3 次元モデルから2 次元図面を作成するタイミングとして、筆者が適切と考えるときが存在する。2次元図面の作成は、3次元モデルがすべて完成してからでは遅い。3 次元モデルを作成している設計の初期段階から用意しておき、その都度2次元図面を更新しながら寸法(サイズ)を確認して進めるべきである。

 設計していると、Aという要件を優先して取りかかっていたら、Bという要件が守れなくなっていた、といったことが考えられる。図面化しておくことで調べやすくなり、間違いなどにも気付きやすい。3 次元CADでの2次元図面の作成は、「最後にやらなければいけない」という固定概念を持つ人もいるが、そんなことはない。早い段階から図面を作成し、全体の形状から細かい寸法のところまで確認しながらでも作業を進められるし、そうする方がよい。

2次元図面と3次元モデルの違い

 2 次元図面と3 次元モデルにはそれぞれ良し悪しがあり、両方使えるようにしておくことは重要である。例えば、カーナビゲーションシステムで目的地までのルートを確認する場合を想像してみてほしい。地図を真上から見た2 次元の図の方が、経路や現在位置を確認しやすいのに対し、複雑な交差点や曲がり角は、3 次元で表示してくれた方がイメージしやすく、曲がり忘れやミスなどを防止してくれる。このように、人間の思考というのは、2次元で考えた方がよい場合もあれば、3次元で考えた方がよい場合もある。

 2次元図面と3次元モデルとの違いを表1に示す。寸法確認に関しては平面の2 次元図面の方が、形状認識については立体の3 次元モデルの方が、確認しやすいと言える。提案力・プレゼン力は、形状に色を付けたり、背景を入れたりして魅力ある画像などをつくれる3 次元モデルの方が優れている。データ互換性については、2次元図面も3次元モデルも中間ファイルがあり、データのやりとりができる。

 3 次元モデルの場合、面のデータも含まれ情報量が多くなり、データの受け渡しがうまくいかないケースもある。情報共有は、2 次元図面は紙やPDFで共有できて扱いやすいのに対して、3 次元モデルは専用のソフトやアプリケーションが必要となるケースが多くある。ただし、最近では無料のビューワやWebブラウザで形状を確認できるものもある。また、3次元モデルをVR(仮想現実)、AR(拡張現実)で表示、確認できるツールなどもある。
表1 3 次元モデルと2 次元図面の比較

表1 3 次元モデルと2 次元図面の比較

2次元CADと3次元CADの違い

 ここまでの内容を整理し、2 次元CADと3 次元CADについて比較していく(表2)。
表2 3 次元CADと2 次元CADの比較

表2 3 次元CADと2 次元CADの比較

 作図機能については、2 次元CADの方が一般的に優れている。図面作成については、作図機能は2 次元CADの方が優れ、隠線処理など見やすい図面をつくれるが、3 次元CADでは立体図を投影して三面図を自動生成でき、3 次元モデルを修正すると図面も連動して修正されるため引き分けとした。

 2 次元CADで2 次元図面を作成した場合、正面図と側面図が合わない図面を描いてしまったり、線を描き忘れてしまったりなどの図面ミスが起きやすい。3次元CADなら干渉や質量が確認でき、3次元CADのデータは、CAEやCAM、3Dプリンタなどに幅広く活用できる。ただし、データ量は3次元CADの方が情報量・容量とも大きくなるため、データ保管には外付けのハードディスクなどが必要になってくる。あるいは、クラウドサービスの利用でもよいだろう。

 価格については一般的に、3 次元CADの方が高価で習得にも時間がかかる。用意するパソコンも、2 次元CADより高スペックなものが必要で、コストもかかる。だが、3 次元CADを導入することで上記にあげた利点も多くあるため、多くの企業が3次元CADを活用している。

 2 次元CADは、紙や鉛筆などを使って部品や製品を正面や横、上から見た図などを描く製図作業をコンピュータでデジタル化したものであり、従来の設計のやり方を大きく変える必要はなかった。しかし3次元CADは、パソコンの中に実際の部品や製品の立体形状を作成するもので、従来の製図作業や2 次元CADでの設計のやり方に+αの考え方が必要になるため、2 次元設計をしてきた人はなかなか考え方を変えられず、習得に時間がかかってしまう場合がある。多くのメリットが3 次元CADにはあるので、めげずに頑張って習得してほしい。
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