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機械設計 連載「B to B向け機械設計のポイント」

2026.02.13

第4回 基本設計/基礎開発の段階で大切なポイント

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技術力向上カウンセリングオフィス 布施 裕児

設計開発の段階での量産性(QCD)の検討について 

 QCDの設計検証の流れを図2 に示す。基本設計/基礎開発では目標を明確にすること、また、目標を設定した諸条件を明確にしておくことが大切である。デザインレビュー後の本格的な量産検証は、しかるべき部署と行っていくが、その際に本質的な問題なのか、試作であるがための一時的な問題であるのかを判断するうえでも、目標を設定した諸条件を明確にしておくことは大切である。
図2 QCDの基本設計から量産検証の流れ

図2 QCDの基本設計から量産検証の流れ

1.品質/機能(Q)の検討で大切なこと

(1)過去の品質クレーム対策
 過去の品質クレーム対策がフェイルセーフ、フールプルーフの考え方を基本として対策が施されているかを検討する必要がある。その場合、過去の品質クレームは原因追究がしっかりなされていることが前提になる。筆者が考える不具合の原因追究の方法はデザインレビューの回で改めて紹介する予定である。
(2)想定される重大クレーム対策 
 設計開発の内容に応じてリスク評価をどうするか考える必要がある。本質的な機能に影響しない設計変更であれば、変更図面の検図で済ませられるが、いわゆる新商品であれば設計開発の段階からリスク評価を行うことがやはり大切になる。 

 故障モード影響解析(FMEA)が品質のリスク評価で広く推奨されている。しかし、特にリスク評価が大切になる新商品の場合には、基本設計/基礎開発の段階で仕様が十分確定していない中で、設計開発内部で実施しても、不確定項目が多すぎて想定に想定が加わる形にならざるを得ない。個人的には、基礎開発の段階では時間がかかるFMEAのようなボトムアップ方式よりも、重大クレームを設定し理論展開していく故障の木解析(FTA)の手法を推奨したい。想定を重ねた評価結果としてリスク優先指数が変わってくるFMEAよりも、重大クレームを直接設定し演繹的な展開が可能なので、設計開発部門内でも有効な議論ができるのがその理由である。重大クレームは安全面や信頼性、商品として機能しなくなるような事例を設定するのがよい。

 原因まで落とし込むには理論展開が大切であるが、表1 に示したようにFTAは漏れが発生しやすいと考えている。製品を据え付けて使用するような場合にはFTA の考え方で問題ないであろうが、さまざまな環境下で使用されたり、移動が伴ったりするような製品の場合はロジックツリーの方が広く考えられ効果的である。
表1 ロジックツリーとFTAの比較

表1 ロジックツリーとFTAの比較

2.コスト(C)の検討で大切なこと

(1)コスト目標 
 そもそも、検討の前に設計開発者が目標コストを設定する際は、最低限の経理的な知識は必要になる。目標コストは開発目標に入れるべき項目であるが損益分岐点の考えが必要になる。想定する販売価格は営業なりに決めてもらう必要があるが、値段だけでなく、数量やスケジュールを含めた販売計画も示してもらうことが大切である。そもそも数量やスケジュール感がないと工程設計もできないし、当然コストも想定できない。

 しかし、詳細な販売計画も、基本設計/基礎開発の段階では当然精度は低い。販売計画が出てこない場合もあり得る。担当部署と協議し、コスト目標を立てた前提は明確にしておくことが、本格的な設計検証で大切になってくる。
(2)コスト検討 
 コスト検討では商品設計と工程設計は不可分である。つくり方を十分考慮したうえで商品設計を行う必要がある。視野を広く保ち、そもそも何のためにやっているのか?無駄はないか?削減できる部品はないか?一緒にできないか?スペックを見直せないか?VE/VA 提案で使い方を変更してもらうことはできないか?組立工数をいかに少なくできるか?など定石と呼べるような視点を持って製品を見直し、コスト対策を検討していくことになる。 

 部品の共通化(流用設計)も大切である。しかし、実際には似て非なる共通部品が発生したり、物によっては、国によって調達できないものが発生したりするので注意が必要である。似て非なる物を防ぐには、設計は一元管理すること、国により購入できない材料がある場合には互換性がある材料を明確にしておくことなどが大切になる。 

 工程設計は製造の管轄であれば、基本設計/基礎開発の段階から製造と一緒に考えた方が効率的なのでは?と思われた方もいるかと思う。人も時間も限られているのは製造も設計も同じである。筆者はそれができれば否定するものではない。
(3)コスト検証 
 実際に基本設計/基礎開発の結果として試作品の図面が完成する。よって、この図面をベースにコストを見積もることになる。実際に生産することになる部署にしっかり見積もってもらえればよいが、仕様が変わる可能性が大きいデザインレビュー後の状態でお願いするのは一般的に難しいと思われる。外注に製作を依頼する場合は見積もりを取ることはできるが、サンプル価格と量産価格ではやはり異なる。 

 設計開発者が製造や購買部などから基本的な材料費や人件費などの諸費用に想定される組立工程や検査工程の生産性を考慮して見積もることがやはり必要である。組立工程の生産性などは想定する部分が多くなるため、見積もり条件、コスト試算条件は明確にしておくことが大切になる。

3.納期(D)の検討で大切なこと

 材料の調達に時間がかかるものはないか、組立工程の生産性はどうかが検討ポイントとなる。実際に、既存品の納期と比べて同等なのか、短縮できるのか、納期が少しかかるのであればどのくらいなのかを具体的に説明できることが大切になる。

まとめ

・ 基本設計/基礎開発の段階では、設計開発の部署がPDCAを極力早く回し、開発期間を短くすることが大切である。しかし、顧客の要望を洗い出したり、開発のコンセプトを決め、顧客の要望の優先順位を決めたりするにあたっては他部署の協力は必要不可欠であり、開発した商品の引き渡し先と協力して完成度を上げることが大切になる。

・ 基本設計/基礎開発では量産性(品質/コスト/納期)の検討が大切である。

・ 品質は過去のクレーム対応や想定される重大クレーム案件を特定し、対策を検討していくこと。そもそも商品として機能しなくなるような当たり前品質から影響度を考慮して決めるとよい。

・ コストは、コスト目標を明確にすること。その場合、数量と量産スケジュールなどを考慮して目標を立てることになる。いわゆる、コストダウンの定石の視点から対応を考えること。部品の共通化を考えることも大切である。

・ 納期は調達に時間がかかる材料はないか?組立工程の生産性がどうか?といったところがポイントになる。

                                  ☆ 

 次回は設計開発者として最低限必要と思われる知財スキル、他社の特許の侵害判定の方法について解説する。
参照文献
1 )久米均:設計開発の品質マネジメント、日科技連出版社(1999)、pp.57-82
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