機械設計 連載「B to B向け機械設計のポイント」
2026.07.10
第10回 設計開発リーダーの大切な役割、標準化と人材育成
技術力向上カウンセリングオフィス 布施 裕児
設計開発の人材育成
1.設計開発に必要な力量とは
(1)設計開発の付帯作業
ISO 9001では、業務に必要な力量を明確にすること、適切な教育、訓練、または経験に基づいて業務に従事する人々の力量が確保されていることを確実にすることが要求されている。言われていることはよくわかるが、設計開発業務において必要な能力、スキル、力量とは何なのかを明確にするのは簡単ではない。
設計開発を進めるための付帯作業であれば力量を明確に定義できる。CADが使えないと図面は描けない。実験装置を適切に使えないと実験できないし、評価するにしても評価方法を知らなかったり、評価装置が使えなかったりすると評価できない。したがって、付帯作業は正しく実施できることが力量になる。レベルは各職場で検討すればよいが、付帯作業に従事する者が正しく実施できなければ、正しく実施できるまで教育する必要がある。しかし、設計開発のエンジニアに求められる力量は何かとなると、そのような作業が確実にできることだけではない。作業ができるだけでは不十分である。
(2)最低限必要な固有技術/専門知識
力量と言われれば一番イメージがつきやすいのが固有技術専門知識である。しかし、全員が共有すべき必要な固有技術となれば、無責任なようだが、関係者で協議をして決めるしかない。機械設計の場合であれば、製品の構造や仕様、過去の不具合例などが挙げられる。仕事内容に応じた電気的、機械的な素養や部品や部材に関する知識も必要であろう。しかし、これらは知識であるので、必要に応じて勉強し直すことも可能であるし、開発にどう活かすかは本人の能力次第でもある。
(3)エンジニアにとって必要な力量とは
それでは必要な力量とは何であろうか。ISO9001の要求事項から考えれば、
・ 顧客関係者から要求事項を洗い出すコミュニケーション能力プレゼン能力
・品質要求事項の具体的な技術目標への展開力
・設計開発の計画力、専門知識 ・設計開発のレビュー能力
・設計開発の検証力
などとも言えそうである。
筆者が思うに、一般的な設計開発のエンジニアに必要な力量は何かといった議論は必要である。例えば、主任の力量として「課の方針に沿って固有の専門知識やスキルを活かし、メンバーの指導ができること」と議論の結果決めたとしよう。しかし、上記のような期待するレベル感程度にしか定義できない。個人の得意不得意もある。そのあたりをうまく適材適所で考えていくのもマネジメントの仕事とも言える。また、本人が志向するキャリアプラン、リーダーが期待するキャリアプランなどから、伸ばすべき能力も変わってくる。
あくまでも個別に必要な力量は決めたレベル感を参考にし、上長と相談のうえ、具体的に決定すべきと考えている。そのイメージを図1 に示す。つまり、その組織として必要な設計開発の付帯作業や最低限必要な固有技術や専門知識に関する力量は土台として定め、それ以外の能力は個別に上長と相談しながら決めていくのである。
2.人材育成
土台となる設計開発の付帯作業、固有技術専門知識は新たに配属された新人に実施すればよい。しかし、個人のエンジニアとして必要な能力開発はOJTが基本である。年初に部下の仕事に対する思いをよく聞き、リーダーが期待する仕事内容から年間の目標を立てると思うが、その際に将来も見据えてどういった能力を伸ばしていきたいか協議し、具体的な行動目標を決めフォローしていくのである。
まとめ
・設計開発の標準化はリーダーの仕事である。
・情報の整理には以下の5点が大切である。
①用語の統一を図る
②共通管理する項目を絞り込む。フォーマットは統一する
③分類は最小限にする
④コード化にはリストが必要
⑤仕組みをつくったら使ってもらい、改善していく
・設計開発の付帯作業の標準化はISO の要求事項を参考に整備するのがよい。
・仕事の属人化はマネジメントの問題。上司が担当者のレベルまでおりていくことが大切になる。
・設計開発でやらないことも明確にし、流用設計を確実に実施していく。
・設計開発のエンジニアにとって必要な力量は、全員に要求される設計開発の付帯作業や固有技術、専門知識といった土台の部分と、それ以外は個々の状況に応じて伸ばすべき能力がある。前者は異動した際に行うのがよいが、後者は年初にその年の目標を立てる際にどういった能力を伸ばしていきたいか協議し、具体的な行動目標を決め、フォローしていく。
次回は最終回である。リーダーが行うべき大切な役割、マネジメントで大切と思うことを述べて締めくくりたい。