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機械設計 連載「若手技術者戦力化のワンポイント」

2026.03.18

第24回 若手技術者が技術業務の進捗報告をしない

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FRP Consultant 吉田 州一郎

若手技術者に自らの状況を理解させることがスタートライン

 すでに述べた通り、若手技術者は研究室生活での教育の影響もあり、業務コミュニケーションに難がある。これを改善するには、若手技術者本人に自らの状況を理解させることから始める
必要がある。筆者も直接的、または間接的にさまざまな若手技術者が業務コミュニケーション改善に至る経緯を見聞きしてきたが、以下に示す主に3 点がポイントと考える。

 ・技術者という専門家としてのプライド
 ・人の話を理解して聴くというヒアリング能力
 ・人の話を聴ける心の余裕

 プライドが高い、ヒアリング能力が低い(傾聴しようとしない)、心の余裕がない、といういずれかの状態にある若手技術者ほど業務コミュニケーション力の改善まで時間がかかる。逆もまたしかりである。これについては個人差が非常に大きいが、リーダーや管理職は少しずつでも若手技術者が業務コミュニケーションをできるよう粛々と進めることが求められる。

 では、リーダーや管理職は具体的に何に取り組むべきだろうか。

朝の5分、10分の報告ミーティングを強制的に継続する

 結論から述べると、「朝一の5 分から10 分、昨日自らが行ったこと、今日行う予定のことをリーダーや管理職に口頭で報告する」ことが効果的だ。打合せを行うにあたり椅子に座る必要はなく、ましてや会議室を使う必要もない(図2)。なぜならば、若手技術者の業務コミュニケーション力を改善するには、“強制”と“継続”が極めて重要であることによる。
図2  座らない朝の短時間ミーティングの“強制”と“継続”が若手技術者の業務コミュニケーション改善には不可欠

図2  座らない朝の短時間ミーティングの“強制”と“継続”が若手技術者の業務コミュニケーション改善には不可欠

  ・今日は時間がない
  ・今日は出張で不在

 といった理由で、一度でも延期をすると一度が二度になり、それが三度になって消滅する。ここにはいっさいの妥協を求めてはいけない。そして、この姿勢は若手技術者だけでなく、より多忙なリーダーや管理職も例外ではない。できない理由を探すのではなく、どうしたらできるか、つまり継続できるかにリーダーや管理職は執着してほしい。これは強制ともいえるだろう。そのくらいの気持ちがないと、若手技術者はついてこない。教育で刷り込まれた考えを活かしながらも、適切な方向に向かせるにはこのくらいの覚悟が必要だ。

口頭での報告が難しい場合は箇条書きを活用

 口頭での報告には高いレベルの論理的思考力が求められる。相手がわかりやすいよう論点を整理することは難しい。技術報告書の作成を通じ、技術者の普遍的スキルの一つである論理的思考力を高めることは、結果的に口頭での報告の精度と質を高めることに直結する。

 しかしながら、業務コミュニケーションの改善を目的に朝の報告ミーティングを行おうとした際、若手技術者が口頭報告に耐えられる論理的思考力を有しているとは限らない。口頭での報告ができないと話しが行ったり来たりして、5 分、10 分では求められる報告が終わらないだろう。そして、「口頭だと若手技術者が何をいっているのかわからない」という印象をリーダーや管理職に与えてしまい、強制と継続が生命線の短時間報告ミーティングは消滅する。このようにならないためには、別の対策が必要となる。それが、「事前に報告すべき内容を箇条書きにさせ、それを上司に見せながら報告させる」ことだ(図3)。
図3  報告内容を事前に箇条書きにすることで、口頭報告の論点がずれにくくなる

図3  報告内容を事前に箇条書きにすることで、口頭報告の論点がずれにくくなる

 箇条書きにするのは手書きでも、PCで記載したものを印刷したものでも問題ない。大切なのはそれを活字にし、そして活字を共通の媒体として若手技術者は報告をし、上司は報告を受ける、という形をつくることにある。効率を求める若手技術者は活字で報告内容を事前に準備することに拒否感を示すケースもあるが、せっかくの朝の貴重な時間をそれこそ非効率なミーティングにしては本末転倒だ。もしリーダーや管理職が必要と判断すれば、ここは業務命令としてやらせる、つまり強制する気持ちで取り組んでほしい。

口頭報告で必ず網羅させたいのは2つ

 若手技術者に報告ミーティングで口頭報告させるべき内容は次の2点だ。

  ・課題/問題
  ・時間軸

 “課題/問題”は、備品や原材料が足りないという話から、生じている現象がわからない、想定と異なることが起こっている、協力してほしいほかの技術者がつかまらないなど、技術業務を推進するにあたり何かしらの障害になっている、または障害になりそうな内容を指す。若手技術者が一人で抱え込みがちな内容であるため、リーダーや管理職は本点が口頭報告の裏にないか注意深く観察してほしい。

 “時間軸”については、報告した前日の段階での若手技術者の技術業務進捗が、技術業務推進計画に対して遅れがあるか否か、当日行おうとしている実験や試験の技術業務予定に無理や無駄がないかを、時間軸の観点で確認することを意味する。時間に関する感覚が希薄になりがちな若手技術者を、しかるべき計画の軌道に乗せるにあたって重要なフォローといえる。

若手技術者に期待される育成効果

 すでに述べた通り、口頭で要点を押さえて報告するには高いレベルの論理的思考力が必要である。この力を伸ばすには技術報告書作成が最も効果的だが、当該報告書は作成するに値するような実験や試験を行うことが必要条件となる。企業に入社してまだそのようなチャンスのない若手技術者もいるだろう。このような状況の若手技術者にとって、口頭でかつ限られた時間で要点を適切に伝えるというのは、論理的思考力鍛錬に一定の効果があると期待できる。特に事前の箇条書きなど、“書く”という行動を加えることで論理的思考力向上効率が上がるだろう。

 同時に自分の考えを発信するという、内に秘めるのではなく外に出していくことを繰り返すことで、業務コミュニケーションの基本である“話しかける”ということのハードルを下げることにもつながる。

 言い換えれば、わかりやすく第三者に情報を伝えることに対する勇気を獲得することが、最大の育成効果といえるだろう。

まとめ

 業務コミュニケーション力は技術者に限らず、社会人全体の必要最低限のベーススキルの一つといえる。特に技術者は教育的な背景もあって、当該コミュニケーションが苦手な傾向にあることを若手技術者に理解させることはもちろん、リーダーや管理職自身も得意でないことが多いという自覚が必要だろう。業務コミュニケーションを改善させるには強制的な継続が不可欠であり、それゆえ、短時間かつ目的を明確化した座らない朝のミーティングで若手技術者の進捗報告を行わせ、その結果として“会話をすることを自然にする”ことが肝要だ。

 効果が出るにはある程度の時間がかかるが、若手技術者からの技術業務の進捗報告がないという課題の解決に向け、リーダーや管理職自身も覚悟を持って取り組んでいただきたい技術者育成のアプローチの一つである。
参考文献
1 )吉田州一郎:第8 回 技術報告書の2 ページ目以降を構成する「内容」とは、機械設計、Vol. 66、No.12(2022)
2 )吉田州一郎:第2 回 普遍的スキルの鍛錬を阻害する技術者の癖、機械設計、Vol. 66、No.6(2022)
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