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展示会

2025.08.13

<展示会レポート>「2025中国国際金型技術と設備展示会」が中国で開催

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躍進する中国メーカー

 ドイツの技術、中国製造のPRIMINER(普锐米勒中国)は3 軸のMC1 台、5 軸MC(図5)を3 台と4 機種を出展。2014 年に中国市場に進出。牧野フライス製作所に対抗してつくったのが「GT」、「VS」の各シリーズで中国ローカルでの競合は意識しておらず、日系の5 軸をつくっているメーカーが競合とのこと。特徴として部品加工のユーザーが多く、新エネルギー車、航空機部品が得意。ちなみにシャオミ(小米)のギガキャストは同社の機械で製作している。中国のマーケットとヨーロッパのマーケットを理解しているので中国での販売戦略に関しては楽観視している。
図5  5 軸MC のGT18-5Xで孫悟空の形状を加工する実演を行った

図5  5 軸MC のGT18-5Xで孫悟空の形状を加工する実演を行った

 また、中国からアジアへと市場が育って行くため今後は高精度の需要が多くなってくる。蘇州のYKK やタイ、ベトナムの日系企業に最近売れたばかりとのこと。25 年度の販売台数は昨年比50 %増の1000 台を目標にしている。60~70 %が3 軸で価格は日系と比べて30 %は安い。「もともとドイツのメーカーなので高品質であり、中国で生産することによってサービスも迅速にできる」と陈飞趺中国区総経理(図6)は品質や供給面の優位性をアピールする。
図6  PRIMINER(普锐米勒中国)の陈飞趺中国区総経理

図6  PRIMINER(普锐米勒中国)の陈飞趺中国区総経理

 江西省修水県金型デジタル産業パーク(図7)は最新の金型工業団地。金型に関する中国独自の「産業チェーン」というビジネスモデルをつくり上げている。金型関連のサプライチェーンをここに集結させ、巨大製造基地として稼働している。
図7  江西省修水県金型デジタル産業パークの全体模型

図7  江西省修水県金型デジタル産業パークの全体模型

 この施設を統括管理する自動車関連の大手金型企業、东莞市中泰摸具有限公司の刘素文副总经理(図8)は「この産業園では最先端技術、高品質、短納期、低コストの金型スマート製造拠点の構築を目指しています。土地面積133 万㎡ 、金型企業31 社、関連企業78 社の金型関連企業が入居しており、多種多彩な共有設備を数百台規模で保有しており、機械だけでなく人材教育をはじめ金型に関するあらゆる教育を受けることができます。入居費用もかからず人が来てくれれば食べ物も住むところも働くところもあります。日本からもぜひ」と熱心に勧誘する。こうした背景に山奥で人が集まらないことによる危機感がある。
図8  施設を統括管理する东莞市中泰摸具の刘素文副总经理

図8  施設を統括管理する东莞市中泰摸具の刘素文副总经理

 2010 年設立の深圳市安盛模具有限公司(asm)は設立当時は社員は10 名だった。現在では180 人の社員を要する。自動車関連の金型を得意とし、ランボルギーニやマクラーレンなどのスポーツカーのリア、フロントランプなどの金型や電気まわりの成形、冷却金型などを手掛けている。今までは輸出が60 %となっており、「トランプ関税が発せられたときはすぐにアメリカは引き上げたため影響はなかった」と刘益环总经理は最近の関税の影響について説明する。今後はヨーロッパ、中国国内を取り込む。第一四半期(1月から4 月)は好調であったが、「全世界的に一気に新エネルギー車に投資していたため今後は一服感がある」と予測する。同じパイを食い合うように、生き残りをかけて金型市場、特にEV 市場は今後ますます競争が激しくなっていくと思われる。中国企業も疲れてきており、安定的な受注が広がることが望ましい」と期待する。

 「完成品、部品加工、金型までつくって売らないと中国はやっていけないよ」と話すのは2012 年設立の苏州云鼎精密模具有限公司の営業担当吴华青氏。小型家庭用電化製品(図9)や自動車関連パーツなどが得意な会社だ。今は自動車関連は忙しく、仕事を分け合っているが、今後取り巻く環境は厳しくなっていくと思われ、仕事の取り合いもあると言う。「目の前にある仕事をこなしていくしかない」(同)と生き残りをかけての必死さが伝わってくる。
図9  苏州云鼎精密模具は小型家庭用電化製品の完成品、部品加工、金型まで手掛ける

図9  苏州云鼎精密模具は小型家庭用電化製品の完成品、部品加工、金型まで手掛ける

日本金型工業会が初参加

 中国金型工業会による報告会が6 月3 日に開催された。国際活動報告のゲストとして日本、韓国、スペインが参加した。日本金型工業会の山中雅仁会長は日本の金型事情と国際色豊かなユーザーの事例を紹介(図10)。韓国金型工業会の辛容文会長は韓国金型産業の現状と未来発展の戦略を発表。スペインのカタロニア自治区貿易投資局上海事務所代表の張淑敏氏はトランプ関税の影響もあり、欧州への投資を呼びかけていた。
図10  金型国際報告のゲストとして発表する日本金型工業会の山中会長

図10  金型国際報告のゲストとして発表する日本金型工業会の山中会長

 日本の金型工業会として、同展示会に出席するのは初めてのことであり、「今後、日本の工業会として国際的な場に積極的に参加していきたい」と山中会長は語る。

 また、こちらも初となる日本企業と中国企業のビジネスマッチングが同展示会で開催された。中国側からは世界500 強にランクインする企業をはじめ、5G 設備、自動車、航空、半導体、医療、家電など幅広い企業が参加。日本からは平岡工業、ISK、長浦製作所、東芝ライフスタイル(中国拠点)が参加した(図11)。展示会終了後のさらなるマッチング先の紹介など引き続きDMC 日本事務所にてサポートしていく方針だ。全体的に昨年と比べると経済状況は回復傾向にある中国市場。トランプ関税については国内消費がメインなので当初はモチベーションの低下こそあったものの、今ではマインド的な冷え込みはない。米国との関係が良くないから内需が伸びている感がある。
図11  MC では初となる日中マッチング会

図11  MC では初となる日中マッチング会

 ここ数年の中国の展示会ではローカル企業の勢いに圧倒される場面が増えている。「中国製造2025」は想定以上にうまくいったと言わざるを得ない。単に量をつくるのではなく、ハイレベルな製品をつくる産業への転換が進んでいる。コピー問題はまだ多くあるが本物を凌駕する製品も出てきている。失敗しながらも突き進んでいく中国企業の積極性に日本はついていけないのが実態だ。日本が中国に学ぶという発想の転換が必要だろう。前例踏襲の施策を見直し、世界に向けて発信し、競争社会を生き抜いていく覚悟が必要だ。

 「金型は製造業の基幹産業」であり、国のサポートが必要になってくるのは言うまでもない。技術だけではもう太刀打ちできないところまで来ている。例えば、顧客と共同で製品や設備の仕様を個別に詰めていく。半導体製造装置のメンテナンス、教育、省エネの提案。オーダーメイド・仕様変更への対応や予知保全、工作機械を使った製造アウトソーシング、サステナビリティ対応など、日本はモノづくりのプロセス全般に付加価値をつけていくことで活路を見出していかざるを得ないだろう。もっとスピード感をもって積極的にチャレンジする必要がある。

インタビュー

 中国金型工業協会は約1,500 社の会員を有し、国家資産委員会に管理されて民生部に登録された中国金型業界唯一の全国的な業界組織。同展示会の見どころや中国の金型業界の動向と今後の課題について秦珂秘書長(図12)に聞いた。
図12 秦秘書長

図12 秦秘書長

─中国金型業界の状況を教えてください
 中国の金型産業は「ハイテク、高能率・高品質」を実現するべく、国家戦略や経済社会のニーズに応じた形でデジタル製造と高品質製造を融合させて産業を発展させています。中国金型工業協会の発表によると、2024 年中国の金型生産額は3,633 億元※(約7 兆2660 億円)で、金型輸出額は87 億ドル(約1 兆2615 億円)前年比4.8 %以上の成長を記録。輸入額は10 億ドル(約1450 億円)と昨年比ほぼ横ばい。中国の自給自足能力が一層強化されています。(※ 1 元=20 円で換算、1 ドル=145 円にて換算)

─今回のDMC の見どころは?
 製造コストの削減、生産性の向上、高品質、高能率の最適化のソリューション提供を目指しています。DMC において工作機械、加工、材料、金型に関連するすべての産業のニーズに応えて、交流を促進しています。

─今後の課題は?
 中国の金型関連企業が国際市場での地位を獲得したのは、金型設備の継続的な投資とデジタル化、自動化への対応によるものです。「三高」つまり、高水準、高品質、高効率の要求に対応し、国際市場の変化に対応する技術力を持っています。現在は「自動化の提案」「コストダウン」「人件費の高騰」この3 つがキーワードになっています。

 最後に来年はISTIMA(世界金型大会)がDMCと同時期に上海であります。国際的に金型産業を盛り上げていきたい。多くの国に参加してもらいたいと思っています。
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