顧客対応や間接業務でAI活用進む
近年、生成AIの普及が急速に進み、企業でも業務効率化などを狙って活用が進みつつある。AI活用の現状を尋ねたところ、「一部の業務で試験的に活用している」が39.9%で最多となり、少なくない企業が導入効果を検証する段階にあるとわかった(図9)。「すでに業務で本格的に活用している」も11.0%存在し、試験運用と合わせると半数以上がAI活用に着手している。一方、「現時点では導入予定はない」が20.8%と、導入に慎重な企業も一定の割合で見られる。
このうち、「すでに業務で本格的に活用している」、または「一部の業務で試験的に活用している」と回答した企業に、どのような業務分野でAIを活用しているか尋ねた質問では、「営業・顧客対応」(53.4%)と「間接業務」(52.3%)が突出していた(複数回答、図10)。文章作成や情報検索、資料作成など生成AIとの親和性が高い業務で活用が先行していることがうかがえる。一方で、「設計業務」(29.5%)、「見積・受注管理」(28.4%)、「製造・加工工程」、「生産管理・工程管理」(ともに27.3%)の回答も一定割合であり、金型製作の中核業務への展開も始まりつつあるようだ。
AIに今後期待していることや導入・活用にあたっての課題を自由回答で求めたところ、「金型設計のフォローや図面のばらし、寸法記載などAIでできるようになればいい」(和歌山県のプレス金型メーカー)、「成形で問題が起きそうなことが金型設計段階で明示され、自動的に修正がかかるようにしてもらう」(広島県の鋳造加工メーカー)、「設計上で迷ったときの計算判断や、加工条件の引き出しなど」(東京都のプレス金型メーカー)、「AI×3D設計での自動検図に取り組みたい」(岐阜県のプレス加工メーカー)など、設計業務の自動化・効率化に関するコメントが特に多かった。
また、「見積業務をAIに任せられないか」(福岡県のプレス金型メーカー)など見積業務の自動化や、「過去の知見の整理」(愛知県のプレス金型メーカー)などノウハウの見える化のコメントも一定数見られた。一方で、「課題はアイデアや技術の漏洩」(兵庫県のプラスチック金型メーカー)のコメントに代表されるように、セキュリティに懸念を示す回答も散見された。
「結局は価格競争」という現実
2026年1月に下請法の改正法「中小受託取引適正化法(取適法)」が施行され、金型業界を取り巻く取引環境も変化し始めている。金型関連企業が現在の取引環境の中でどのような負担や課題を感じているのかを尋ねたところ、最も多かった回答は「価格の抑制・値下げ要請」で64.7%に達し、ほかの項目を大きく上回った(複数回答、図11)。原材料費や人件費の上昇が続く中でも価格引き下げ圧力が依然として強いことがうかがえる。以下、「短納期の要請」が38.2%、「金型図面データ提供の要請」が23.7%、「契約内容の不明確さ・口約束の多さ」が21.4%と続き、図面データ提供や契約の不透明さといった従来からの商慣行も一定の割合で課題とされていることがわかった。
取適法では、金型の無償保管や不当な取引拒否などへの対応が強化され、長年課題とされてきた取引慣行の見直しが期待されている。法律改正後、実際に現場で取引環境の改善を感じているかを尋ねたところ、「ある程度感じている」が50.9%で最多となり、「とても感じている」(8.1%)と合わせると59.0%が改善を実感している結果となった(図12)。一方で、「あまり感じていない」(13.3%)と「ほぼ感じていない」(8.7%)の合計が2割超となっており、改善効果に対する評価は一様ではない。ただ、過半数の企業が何らかの改善を感じていることから、制度が一定の成果を上げ始めていることがうかがえる。
また、取引先が価格転嫁をどの程度認めているかについて尋ねた質問では「ある程度認めている」が47.4%で最も多く、「大いに認めている」(5.8%)を合わせると半数を超える企業で価格転嫁が認められている現状が示された(図13)。ただ、取引環境における課題、改善が必要な点などについて自由回答を求めた設問の結果を見ると、価格転嫁に関するこうした回答結果の背景にある実情が明らかになった。
回答の中で特に多かったのが、「価格転嫁は認めてもらえるが、結局は価格競争」(三重県のダイカスト金型メーカー)に代表される意見で、同様の回答として「価格転嫁は認められてはいるが、結局は競争なので安いところが勝つ」(愛知県のダイカスト金型メーカー)、「金型産業は競争見積発注が基本」(大阪府のプレス金型メーカー)などがあった。
こうした声に関連して非常に多く挙げられたのが相見積もりの慣習に対する声で、「相見積もりである限り、価格転嫁がなかなか進まない(転嫁したとて通らない)」(富山県のプラスチック金型メーカー)、「相見積もりの1社となってしまうと、原材料などの値上げを見積もりに上乗せすると受注ができない」(神奈川県のダイカスト金型メーカー)などの意見が目立った。
相見積もりの慣習についてはさらに踏み込んだ意見も散見され、「見積もりをとれるだけとる会社もあるが、見積もりするのにもコストが発生している。見積費用を請求できるような取引環境にしていきたい」(滋賀県のプレス金型メーカー)、「見積もり(相見積もり)が煩雑。多くの時間をとられる。法律で見積もりの有償化ができないか」(岐阜県の鋳造金型メーカー)、「図面やデータ提供を条件とした相見積もりの廃止」(愛知県のダイカスト金型メーカー)などが挙がった。
最後の設問として、自社の経営上の課題について尋ねた。最も多かった回答は「売上利益の拡大」で76.9%に達し、収益力向上が最大の経営テーマとなっていることが明らかとなった(複数回答、図14)。次いで「人材確保」が68.8%、「新規顧客開拓」が54.9%と続き、多くの企業が人材不足と受注確保の両面を課題と捉えていることがわかる。一方で、「事業承継」は28.3%、「海外展開」は12.7%にとどまり、まずは既存事業の収益改善や人材問題への対応を優先したいと考える企業が多いようだ。「売上利益の拡大」、「人材確保」、「新規顧客開拓」という3つの課題は相互に関連しており、金型業界が現在直面する構造的な課題を象徴する結果と言える。