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型技術 連載「外国人材から一目置かれるコミュ力養成講座」

2025.02.27

第7回 外国人との会話で、言いたいことを確実に伝える方法

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ロジカル・エンジニアリング 小田 淳

おだ あつし:代表。元ソニーのプロジェクタなどの機構設計者。退職後は自社オリジナル製品化の支援と、中国駐在経験から中国モノづくりを支援する。「日経ものづくり」へコラム執筆、『中国工場トラブル回避術』(日経BP)を出版。研修、執筆、コンサルタントを行う。

U R L:https://roji.global
E-mail:atsushi.oda@roji.global
 連載の第6 回で、外国人にとって理解しにくい言葉をお伝えした。しかし、それらの言葉を使わずに会話を進めることは、実際とても難しい。今回は、われわれ日本人が現実的にどのような意識をもって会話をすればよいかを解説する。

子供に話すように話す

 自分の子供や知り合いの子供に話すときに、自分はどのような話し方をしているか考えてみてほしい。「学校までの交通手段は何ですか?」とは聞かない。「学校へはどうやって行くの?」と聞くだろう。子供には「交通手段」という言葉が難しいため、「どうやって行く」という言葉を自然と使う。このように「子供に話すように」という意識をもつと、自然と簡単な言葉になる(図1)。
図1 子供に話すように外国人に話すと伝わりやすい(イラスト:奥崎たびと)

図1 子供に話すように外国人に話すと伝わりやすい(イラスト:奥崎たびと)

 一般的に、日本語検定1 級(最上級)をもつ外国人の語彙力は1 万語と言われている。また、小学校6年生の語彙力は1 万~ 1 万5,000 語と言われ、ほぼ同じなのだ。よって、「子供に話すように」という意識をもって会話をするのは理にかなっている。

文章を書くように話す

 メールなどの文章を書くときに、「お尻は決まっているので、なる早でお願いします」とは書かない。「期限は決まっているので、◯月◯日までにお願いします」と書く。「お尻」、「なる早」は口語であり、外国人には理解しにくい。また、この例文の場合は、「なるべく早く」と言い換えても適切ではない。「なるべく」がいつのことかわからないからだ。「◯月◯日まで」と、具体的に言うのがよい。「あうんの呼吸」は外国人には通用しない。日本人は副詞を用いて会話するのが好きである。「しばらく保管」「少し待つ」などだ。理解にあうんの呼吸が必要な副詞は使わないに限る。

2 つ以上の内容を併せて話さない

 例えば「荷物が届いたら、部品を3 個取り出して、倉庫に保管してください」という文は、3 つの依頼が1 つの文にまとまっている。3 つの依頼とは以下である。

 ・荷物が届いたら受け取ってください。
 ・その中から3 個部品を取り出してください。
 ・倉庫に保管してください。

 これらを1 つの文で表現してしまうと、もし「3 個取り出して」を外国人が聞き取れなかったとすると、焦ってしまってその後に続く言葉が聞き取れなくなってしまう。仮に後に続く言葉が聞き取れたとしても、「荷物が届いたら、倉庫に保管してください」とだけしか理解していないため、「部品を3 個取り出して」は実施してもらえないことになる。外国人と接する日本人が「確かに○○と言ったはずなのに」と言うのは、ここに原因がある。

 このような誤解を防ぐために、「1 文1 内容」で話すのがよい。上述の3 つの文を1 文ずつ話すのだ。1文ずつ話すごとに相手の様子をうかがえば、理解しているかはおおよそ判断がつく。理解していなさそうだったら、もう一度繰り返して話せばよい。

誘導的な質問をしない

 外国人への質問で、「スイッチを右に回しましたよね?」と言ったとする。外国人が「右に」を聞き取れなかったとしたら「スイッチを回しましたよね?」だけの質問と理解される。スイッチを回してさえいれば「はい」と答える。すると質問した日本人は、「確かに『はい(=右に回した)』と言ったはず」と誤解してしまうのだ。

 質問の文章に「右に」という答えの部分がすでに入っていることが誤解される原因だ。外国人には、答えを誘導する質問の仕方をしてはならない。この場合は「スイッチはどちらに回しましたか?」、もしくは「スイッチを右と左どちらに回しましたか?」と質問するのがよい。最もよくあるのは、「わかりましたか?」の確認の言葉である。ほとんどは「はい」と返答してくる。これは誘導的な質問だからだ。このような場合は「○○さんが理解してくれていることを確認したいので、私のお願い作業を言ってください」と言うのがよい。

 英語の上手でない日本人が欧米人と英語で会話をすると、「OK」と「Yes」を連発する。英語の文章の理解できたところだけで返事をするからである。

電話や会話だけで要件を伝えない

 日本語が上手な外国人といっても、日本人が口語で話すと2 割は理解できないと考えてよい。日本人がいくら気をつけて話しても、10 割を理解してもらうのは難しい。よって、仕事上の話は必ず文章にするのがよい。

 電話や会話で要件を伝えても、後から確認のメールを出すことが大切だ。筆者が外国人と電話で話す内容は、「荷物は届きましたか?」や「明日、訪問するのでよろしくお願いします」程度である。電話で仕事の話をするときは、あらかじめ要件を書いたメールを送り、その内容を一緒に見ながら話すようにしている。仕事上の要件は、必ず文章にするべきである。打合せでコピーを配り、コピーには書いていない口頭だけで伝えた内容は、外国人がメモを取っていても、打合せ後に口頭の内容を追記して再配布するのがよい。口頭の内容は確実に伝わっていたとは限らないからだ。

下手な外国語で仕事の話をしない

 中国に何回も出張に行って中国語がある程度できる気になったとしても、仕事で中国語は使うべきではない。特に中国語の「四声(4 つの抑揚)」は日本語にはないため、習得は難しい。四声を間違えて発音してしまうと、違う意味として理解されかねない。中国人は一生懸命に中国語で話す日本人を笑顔で見守り、「OK、OK」と言うかもしれないが、理解していない場合がほとんどだ(図2)。日本語通訳を介するか、文字や図にして伝えるのがよい。
図2 日本人が話す中国語は、通じていない場合が多い(イラスト:奥崎たびと)

図2 日本人が話す中国語は、通じていない場合が多い(イラスト:奥崎たびと)

 例題として、次の例文を理解しやすい日本語に直してみよう。
 「この前送ってもらったやつだけど、あれ数あってますぅ? 追加で3個なる早で送ってくれませんか?部品の修正は二の次にして、試作日程はキープでお願いします」

 解答例を以下に挙げる。

 「11 月23 日に送ってもらったカバーの試作品の個数が、7 個で足りませんでした。明日、追加で3 個送ってください。試作の日程は変更しません。部品を発送した後に、部品の修正をしてください」

 基本的に、議事録がすべてと考えるべきである、口頭で伝えた内容は「なかったこと」と理解しなければならない。

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