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型技術 連載「外国人材から一目置かれるコミュ力養成講座」

2025.04.11

第9回 メールや資料で言いたいことを確実に伝える方法

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ロジカル・エンジニアリング 小田 淳

おだ あつし:代表。元ソニーのプロジェクタなどの機構設計者。退職後は自社オリジナル製品化の支援と、中国駐在経験から中国モノづくりを支援する。「日経ものづくり」へコラム執筆、『中国工場トラブル回避術』(日経BP)を出版。研修、執筆、コンサルタントを行う。

U R L:https://roji.global
E-mail:atsushi.oda@roji.global
 前回の連載では、外国人との打合せにおいて確実に情報を伝える方法を解説した。今回は、メールや資料で確実に情報を伝える方法をお伝えする。

子供に話すように書く

 まず、子供に話すように文章を書くことが基本である(図1)。文章にすることで、「ピンとこない」のような口語、「何とかして」のような曖昧語、「なる早」のような略語がなくなる。そのうえ、「子供に話すように」を意識すると、「互い違い」のような外国人には難しい言葉、「コンセンサス」のような英語、「ハードルが高い」のような慣用句がなくなる。つまり、子供に話すように文章を書くことで、外国人の苦手とする言葉のほとんどをなくすことができるのだ。
図1 子供に話すように、箇条書きで書いたメール本文

図1 子供に話すように、箇条書きで書いたメール本文

箇条書きにする

 日本人同士であっても、改行や句点(「。」)なしの文章が5 行も6 行も続いたら読みにくい。英語の苦手な日本人が、Web 上に書かれた長い英文を読むのと同じである。基本は1 内容1 文章にし、2~3 行で改行する。いくつかの文節や項目がある場合は、数字や点を用いて箇条書きにするのがよい。まずは、件名にのっとった1 つの内容のメール本文を書くことだ。これは、日本人同士のメールでも同じである。

副詞は使わない

 「なるべく」、「ときどき」、「極力」、「はっきり」、「しばらく」などの副詞は使用しない。副詞は文章の内容を曖昧にするため、あうんの呼吸が通じない外国人は、何をすればよいのかわからない。以下に例文を挙げる。

 「サンプルは、なるべく早めに送ってください」
 「この部品は、極力そりをなくしてください」
 「塗装後、しばらく乾燥させてから試験をしてください」

 例えば一番上の文章では、2~3 日後にサンプルが送られてこないと、「なるべく早めにってメールしたのに」と不満を漏らすことになるのだ。

 それぞれの文章は、次のようにするとよい。

 「サンプルは、3 月6 日までに送ってください」
 「この部品のそりは2 mm 以下にしてください(測定方法のイラストを添付するとより良い)」
 「塗装後、60 ℃以上で1 時間乾燥してから試験をしてください」

過度の謙譲・尊敬・ていねい表現は使わない

日本人同士のメールにおいては、次のような表現をよく用いる。
  「~して頂けるよう、よろしくお願い申し上げます」
  「ありがたく存じます」
  「~していただければ幸いです」

 これらの表現で文章を書いても問題は起こらないが、特に中国人に対しては意味をなさない。つまり、書かないのに等しいのだ。中国人との会議において、日本人がこのような言葉を使っても、中国人の日本語通訳は中国語に訳さないことが多々ある。日本人は、これらの言葉を過剰に用いているのだ。

Excel を活用したコニュニケーション

 筆者は次の2 通りの場合に、メールにExcel を添付して効率の良いやり取りを行う。

 1 つ目は、メールの中に3 つ以上の質問などの項目がある場合だ。メール本文に概要を書き、詳細の質問は添付したExcel を参照してもらう。Excel には一問一答形式の表をつくり、回答を記入してもらうセルを黄色くする。日本語の苦手な外国人は、メールの文章が長いとその中にいくつの質問が入っているかわからなくなる。その結果、メールの返信には3 つの質問に対して2 つの回答しかない場合がある。よって、Excel を用いた表にすることにより、その質問の個数を明確にして、必要な個数の回答を確実にもらうのだ(図2)。
図2 一問一答形式の表

図2 一問一答形式の表

 2 つ目は、相手の外国人と何回かのメールのやり取りが必要な場合だ。お互いに情報や意見を交わして、ある決め事をつくる場合やトラブルの原因究明をする場合などである。何回もメールのやり取りをすると、どこかで誤解が生じて話が合わなくなってしまった場合に、その修復が難しい。よって、Excel で「質問1」、「回答1」、「質問2」、「回答2」…のような表をつくり、メールに添付する。そして、次に回答がほしい箇所のセルを黄色くしておく。このようにすれば、やり取りの経緯がわかり、過去のメールを見返す必要もない(図3)。
図3 やり取りが続く場合の表

図3 やり取りが続く場合の表

メールは送りっぱなしにしない

 メールの送りっぱなしは禁物である。中国人は仕事でWeChat を多用しているため、そもそもメールをほとんど見ない人もいるほどだ。よって、中国人と仕事をする場合は、日本人もWeChat の活用が欠かせない。メールを送ったとしても、WeChat でメールを見てもらうよう促すとよい。メールとWeChat の併用である。

 WeChat を活用したうえに、筆者は電話の併用を心がけていた。メールを送った後に電話をして、メール本文や添付書類を見てもらいながら、伝えたいことを正確に言葉で伝えるのだ。また、すぐ見てもらいたいメールがあっても、いつになってもなかなか見てもらえないときがある。メール本文で伝えたいことを確実に伝え、WeChat もしくは電話でその対応を促すのである。

メールの添付資料の文章

 メール本文の内容をより正確に伝えるには、PowerPoint などを添付してその内容を補うとよい。 

 PowerPoint などを用いて、写真やイラスト、図、数値(データ)を多用する。「そりを2 mm 以下」、「部品下側の穴」、「2 mm 大の傷」などと文章だけで書いても正確に伝わらない。究極的には、日本語がまったくわからなくても大切なポイントを伝えられるような添付資料であるのがよい。

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