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型技術 連載「巻頭インタビュー」

2025.01.21

設計部門への金属AMの啓蒙を通じて高付加価値の金型の実現を支える

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三菱電機㈱ 産業メカトロニクス製作所
レーザシステム部 AM システム設計課長
木場亮吾氏

Interviewer
トヨタ自動車㈱ 素形材技術部
ダイキャスト技術室 主幹
舟橋 徹氏

 次世代のモノづくり技術として金属3D プリンタを用いた積層造形(AM)技術が存在感を高めている。そうした中、三菱電機は2022 年にワイヤ・レーザ金属3D プリンタ「AZ600」を発表。その開発で設計の取りまとめを務めたAM システム設計課長の木場亮吾氏に、開発の背景と経緯、そしてこれからの工作機械メーカーに求められる課題などについて話を聞いた。

舟橋

まずは木場様のご経歴について教えてください。

木場

1994 年に東北大学工学部機械工学科を卒業後、96 年に東北大学の大学院情報科学研究科を修了し、弊社名古屋製作所に入社しました。放電加工機やレーザー加工機の設計を行うメカトロ技術部へ配属となり、ワイヤ放電加工機の戦略機種などの設計を8 年ほど担当しました。その後、工作部へ異動して約2 年間、工程係長として生産計画の取りまとめなどを担当し、2009 年に主に中国向けに放電加工機の製造出荷を行っている中国・大連の工場へ移りました。名古屋で国内向けに立ち上げた戦略機種を中国向けにも出していくということで、技術課長として部品の現地調達を進めながら製造し、中国国内へ出荷するという業務を3年半ほど担当しました。12 年に日本へ戻ってからは放電加工機の設計課長を務め、17 年に新たに金属3Dプリンタの開発プロジェクトを立ち上げることになり、その設計の取りまとめを担当してきました。

舟橋

御社で金属3D プリンタの開発を始めるにあたってはどのような背景があったのですか。

木場

15 年頃から、金属3D プリンタが金型製作に適用できるようになったという情報が適用事例とともに学会誌などで報告され始めました。金型向けの放電加工機をつくるわれわれとしては、「金型製作が金属3D プリンタに置き換えられてしまうのではないか。このまま放電加工機をつくっていて大丈夫なのか」という思いが出てきて、製造部で調査部隊をつくって金属3D プリンタの実力の程を調べてみることになりました。その結果、サブμm オーダーで金型をつくる放電加工機が金属3D プリンタに取って代わられるのは当分先という結果が得られました。
それで、われわれとしては放電加工機の製造にまい進しようとなるはずだったのですが、調査の中で金属3D プリンタが今後どんどん伸びていくという可能性も見えた。しかも、その開発に必要な技術はすべて名古屋製作所に揃っている。であれば、今こそ弊社として金属3D プリンタ事業に乗り出すべきでは、という話になったのです。
照準をJIMTOF2018 に定めて1 年半ほどでプロトタイプをつくり上げ、その価値を世に問うことにしました。金属を溶かす熱源はレーザー、材料は粉末ではなくワイヤを使うことに決め、社内のレーザー加工機やワイヤ放電加工機、CNC 装置、研究所の各部署から技術者や設計者を集めてチームを編成しました。

舟橋

粉末ではなくワイヤを選んだのは、やはり御社にワイヤ放電加工の技術があったからですか。

木場

一概には言えないのですが、パウダーベッドが主流だった中で弊社は後発になるので、どうせなら従来とは異なる切り口で提案してパウダーベッドが抱える課題を解決できるようにしたいという思いもありました。JIMTOF2018 ではプロトタイプへのいろいろな要望や指摘をいただき、そこから改良設計して22年にDED(指向性エネルギー堆積)方式のワイヤ・レーザ金属3D プリンタ「AZ600」として発売にこぎつけました。
本当はJIMTOF2020 での製品発表を目標としたかったのですが、コロナ禍でリアル展示がなくなり、世の中の投資モチベーションも下がっていました。これはせっかくの新製品を出すタイミングではないと判断し、製品のブラッシュアップを図りながら満を持しての22 年の発売となりました。
ワイヤ・レーザ金属3D プリンタ「AZ600」(写真提供:三菱電機)

ワイヤ・レーザ金属3D プリンタ「AZ600」(写真提供:三菱電機)

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