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型技術 連載「巻頭インタビュー」

2025.01.21

設計部門への金属AMの啓蒙を通じて高付加価値の金型の実現を支える

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三菱電機㈱ 産業メカトロニクス製作所
レーザシステム部 AM システム設計課長
木場亮吾氏

Interviewer
トヨタ自動車㈱ 素形材技術部
ダイキャスト技術室 主幹
舟橋 徹氏

「機械をつくって終わり」ではダメ

舟橋

御社FA 事業の全体的な部分もお聞かせください。現在「Automating the World」というスローガンを掲げていますが、その思いや背景を教えてください。

木場

全社でいうと「Changes for the Better」というコーポレートステートメントが2001 年から20年以上ありますが、弊社では今ブランディングに注力していて、特にグローバルに事業も工場も展開しているFA としても独自のものをもとうということで、22 年11 月に発表しました。製造業としてハードの部分でもソフトの部分でもお客様に真に寄り添えるパートナーとして、これまで共に現場で築き上げてきたノウハウを継承しながら、最先端の自動化技術によって、より豊かな社会の実現に貢献していくという思いを込めています。ただ、ブランディングは全社、FA でそれぞれありますが、三菱電機の工作機械自体がある意味ブランドとして評価していただけているという自負はあります。

舟橋

ブランディングは非常に重要ですね。御社の工作機械のブランド価値というのはどう捉えていますか。

木場

われわれの機械を使っているお客様に確実に儲けていただくというところに尽きると思います。産業機械なので、買っていただいた機械がしっかりと働いてお客様に利益を生み出さないといけない。そのことをずっと大事に考えてモノづくりをやってきました。例えば放電加工機で言えば、まずは止まらずに動くという品質があります。それから安定して常に同じものができるという品質もありますし、面粗さや形状精度などの品質もあります。それらが他社の機械よりもワンランク上の精度で仕上がるいうところも重要です。
その一方で、お客様がその機械をどう使えば儲かるかというところをお客様自身が十分に把握できていないケースもあって、そこをどう支援していけるかというところもとても大事だと思っています。つまり、「単に工作機械というものをつくって終わり」ということではダメなんですね。この機械の最も儲かる使い方を一緒に考えていく、もっと言えばメーカー側が提案できるようになるという、いわば「コト売り」がますます重要になってくると思います。

舟橋

そこが目指すべき姿というわけですね。

木場

そうですね。そして、そうしたことが1 つのビジネスになればなお良いですね。コンサルティングという形だったり、お客様の最適な使い方をシミュレートするシミュレーターを開発してそれを商品にしたりするなど方法はいくつか考えられると思いますが、お客様がハッピーでわれわれもハッピーといった仕組みに落とし込むところが、これからの苦労になってくるのだろうと感じています。
一方で、AZ600 について言えば、今は多少は標準仕様外の対応をしてでもとにかくたくさん市場に出して多くの意見を吸い上げるフェーズだと思っていて、放電加工機などの弊社製品とは違うと思っています。この2 年間、私はできるだけたくさんお客様向け特殊仕様で受注するようにしました。それぞれ専用の設計となりますが「これはきっと次の汎用化につながる技術となるに違いない」と、お客様からの要望を私の判断でとにかく受けました。「光学系を変更して、もっと微細な加工ができる機械にならないか」、「やりましょう」とか、「特性の異なる2 種類のワイヤを使い分けたい」、「やりましょう」とか。たくさんの専用設計を並行して進める部下たちは大変だったと思います(笑)。

舟橋

開発物はどう普及させるかが課題で、ニーズに合わせて使ってもらって実績をつくることが重要ですよね。これを繰り返すことにより、世の中に少しずつ技術が浸透していきます。

金型の高付加価値化を目指して

舟橋

今後日本の金型産業が残っていくには、金型の付加価値を高めていくことが重要です。そのためにも設計者が「金属3D プリンタならこんなことができる」ということを理解する必要があります。そうしないと価値向上の新たなアイデアを創出できないですよね。

木場

本当にその通りです。弊社の金属3D プリンタで言えば、DED 方式であるAZ600 の得意なところは異種金属が造形できること。高付加価値な金型をつくるためにAZ600 を活用する方法としては、硬い金属を使って耐摩耗性を上げるという切り口や、熱伝導率の良い金属を金型内部の適所に配置して冷却効率を考慮した熱のバイパスをつくって冷却性を高めるという切り口などがあると思います。こういった全体最適の手法は日本のモノづくりが得意としてきた領域だと思っています。
私には「日本のモノづくりをもう一度強くしたい」という強い思いがあって、こうした手法を金型製作の現場で採用いただいて、高付加価値な金型の実現に貢献できればありがたいです。

舟橋

日本のモノづくりを強くするために何をやっていけばいいのか、工作機械メーカーや金型メーカーをはじめ、業界の関連企業の皆さんが集まって議論が進めばと思います。本日はありがとうございました。
木場亮吾(こば りょうご)
1994 年 東北大学 工学部 機械工学科 卒業
1996 年 東北大学大学院 情報科学研究科 修了
同 年 三菱電機㈱入社 名古屋製作所メカトロ技術部に配属。ワイヤ放電加工機の開発・設計業務に従事
2004 年 メカトロ工作部にて、放電加工機の生産計画を取りまとめ
2009 年  三菱電機大連機器有限公司に出向。放電加工機の技術全般を取りまとめ
2012 年 名古屋製作所に帰任。放電加工機の開発を取りまとめ
2017 年 金属AM 加工機開発を新規立上げ。2022 年製品化完了
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