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型技術 連載「巻頭インタビュー」

2025.04.23

人材育成・実用化・共同開発を3本柱に企業間連携で金属AMを日本に広める

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群馬積層造形プラットフォーム 代表理事/
共和産業㈱ 代表取締役社長
鈴木宏子氏

Interviewer
㈱ソディック 工作機械事業本部
レーザー加工機事業部 開発部 部長 兼 加工技術課 課長
松本 格氏

宇宙航空分野へ期待

金属AM 技術はどのような分野で期待がもてるとお考えですか。

1 つは宇宙航空分野ですね。ロケット関係では金属3D プリンタが非常に興味をもたれていて、実際に導入していきたいという動きもありますので、これからだと思います。

米国ではたくさんのロケットが打ち上げられていますが、金属3D プリンタ製の部品が大量に使われていると言いますよね。

スペースX などはすごいですね。あれぐらい多くの数が打ち上げられたらビジネスになる。そういう意味では日本国内は現状ではまだまだ市場が厳しいですよね。

金型分野ではいかがでしょうか。金型での適用となるとコンフォーマル冷却がメインでしょうか。

おっしゃる通り、コンフォーマル冷却には金属AM 技術が必須だと考えています。ただ、金型のコストが上がってしまうのが現状では大きな問題点となっています。そのコストをどこかで回収しなければならないのですが、回収先というのはどうしてもエンドユーザーとなってしまう。金型を買う成形メーカーも、型代が上がるのに生産効率が上がって製品単価が下げられてしまうならやらない方がよいとなるかもしれない。そうした部分も含めてメリットとデメリットをトータルで検討することには難しさがあると思います。

コンフォーマル冷却で言えば、ダイカスト金型では豊田自動織機が金属AM 技術を用いた3 次元冷却回路の適用を発表しましたし、われわれも日本精機(名古屋市守山区)と共同でダイカスト金型向けの大型金属3D プリンタの共同研究を進めています。GAM でもダイカスト金型関係の取組みはありますか。

具体的な事例としてはまだありません。ただ、参加企業にダイカストメーカーも入っているので、ダイカスト関連でも金属3D プリンタの活用に対する興味は高まっていると思います。

日本にも金属AM 市場の構築を

金属AM 技術において日本は非常に遅れているという話が冒頭にありました。国内で金属AM 技術を推進するためには何が必要とお考えでしょうか。

一番は国内でも金属AM の市場ができないと金属AM の必要性を感じないというところがあると思います。金属3D プリンタでどれだけ安くつくれると提案しても「従来の量産プロセスを経ていないからダメ」と門前払いされることもある。しかし、もしも海外からすごい勢いで金属3D プリンタの製品が入ってきたら業界によっては大きな影響を受けるかもしれません。日本のモノづくり市場をどう見るかによっても変わってくるかと思いますが、このグローバル化の時代に海外の技術トレンドと異なる状態で勝てるのかというと厳しいものがあると思います。まして国内では人口がシュリンクしているのですから、逆にそういうデジタル技術を積極的に取り入れていかないといけないのではないでしょうか。

私は、日本の企業は金属AM の市場があるのにそこから意図的に目を背けて、見て見ぬふりをしている現状もあるのではないかとも感じます。そういう意味では、鈴木様が米国で金属3D プリンタの見積もりを求められてショックを受けたという事実を多くの人が体験すべきだと思いました。

「日本のモノづくりはナンバーワン」といった言われ方がよくされていて、確かに生産技術や改善力ではそうだと感じるところもあるのですが、われわれの得意分野とは異なる分野で異なるやり方が生まれていて知らぬ間にそのやり方がぐんぐんと成長していっているというのが今の時代なのかなと思います。

すごく良いご指摘です。では最後に金属AMに関心がある方へのメッセージをお願いします。

当社も含めて、GAM としてぜひ一緒にいろいろなプロジェクトに取り組めたらと考えています。企業が連携することで1 社ではできないことができるようになる。そういった企業間のネットワークを金属3D プリンタという1 つの技術を中心に構築できたらいいなと思います。GAM の団体名には「群馬」という県名が入っていますが、われわれとしては県外県内を問わずさまざまな企業とつながれればうれしいです。ぜひ参加していただければと思います。

当社としてもGAM の取組みは非常に興味深いと感じています。本日はありがとうございました。
鈴木宏子(すずき ひろこ)
1982 年 米国デンバー大学 卒業
同 年  米国ロサンゼルスにて監査法人Ernst&Whinney 社(栄
光会計事務所)入社
1985 年 帰国後、共和産業㈱ 入社
1994 年 同社 取締役財務部長
1995 年 同社 取締役副社長
2001 年 同社 代表取締役社長
2017 年 日刊工業新聞社 優秀経営者顕彰 女性経営者賞 受賞
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