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型技術 連載「巻頭インタビュー」

2025.04.23

人材育成・実用化・共同開発を3本柱に企業間連携で金属AMを日本に広める

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群馬積層造形プラットフォーム 代表理事/
共和産業㈱ 代表取締役社長
鈴木宏子氏

Interviewer
㈱ソディック 工作機械事業本部
レーザー加工機事業部 開発部 部長 兼 加工技術課 課長
松本 格氏

 金属積層造形(AM)技術への関心が高まる中、群馬県内の有志企業が金属AM 技術の開発・普及を目指し、2021 年に群馬積層造形プラットフォーム(GAM)を設立。次世代の新たなモノづくり技術の構築を推し進めている。GAM の代表理事を務める共和産業の鈴木宏子代表取締役社長に、GAM の取組みや日本の金属AM の現状と課題について話を聞いた。

松本

私も金属3D プリンタに携わっていたことがあり、群馬積層造形プラットフォーム(以下、GAM)はともに国内の金属積層造形(AM)事業の拡大を目指す仲間と捉えていて、ぜひ対談したいと思っていました。鈴木様はGAM の代表理事であるとともに、共和産業(群馬県高崎市)の代表取締役社長を務めておられます。御社とGAM のつながりについてお教えください。

鈴木

当社は創業1946 年で、もともと自動車部品の量産メーカーとしてスタートしましたが、1990 年代から試作開発や小ロット生産へと大きく事業転換を行いました。現在主に手がけているのは、F1 やインディカーなどレーシング向けを含む自動車のエンジン部品の試作開発や、アフターマーケット向け製品の小ロット生産などです。開発ステージによっては1 個ものというのもあり、マシニングセンタでインゴットを総削りしてつくるなど、従来行ってきた量産とはまったく違うモノづくりへの転換を行ってきたわけです。
当社は2015 年に米国のシリコンバレーに事務所をつくり、海外進出を果たしました。さらに同じ年にデトロイトで展示会に出展して感触が良かったので、翌年の16 年にデトロイトに現地法人を開設し、試作の仕事を始めました。そこで引き合いがあった現地企業から試作の見積もりを求められたのですが、金型でつくる場合と総削りでつくる場合のほかに、「金属3Dプリンタを使った場合の見積もりも出してください」と当たり前のように言われたのです。われわれには金属3D プリンタの経験がなく、国内の試作の営業の現場でも少なくともエンジン関連では金属3D プリンタによる製造の要求を受けたことはありませんでした。それで金属3D プリンタで対応できるところを国内で探したのですが見つからず、米国の競合メーカーはすべて見積もりを出しているのに、結局当社は見積もりを出せませんでした。私は「米国に比べて日本はなんて遅れているんだ。これに対応できないと米国では生き残れない」と相当なショックを受けましたね。

2016 年だと、国内では金属3D プリンタを扱う企業がまだ出そろっていない頃ですね。米国では金属3D プリンタの見積もりをとるのは当たり前という感じなのですか。

米国の試作メーカーでは基本的に金属3D プリンタが使われていますし、金属3D プリンタによる製造だけを行う企業も結構ありました。だから、そういうところから見積もりをとるのは日常レベル。設計段階での新しい形状の検討など、さまざまな段階で金属3D プリンタを使っているという噂は聞いていたのですが、実際にビジネスで活用されていることを実感しました。
帰国後に金属3D プリンタを買おうかとも思ったのですが、買っても使い方がわからない。どうしようかと悩んでいたときに、海外進出の際に大変お世話になったジェトロ群馬から、「日本ミシュランタイヤが群馬県太田市に研究開発センターをもち、ミシュラングループでは長年、タイヤ金型に金属3D プリンタを適用する研究開発を行っている」と教えていただき、連携できるならぜひお願いしたいと考えたのです。

そこがGAM 設立へのスタート地点だったというわけですね。日本ミシュランタイヤはその時点で金属3D プリンタを入れていたのですか。

日本ミシュランタイヤは2019 年頃から金属3D プリンタのノウハウを用いて太田市の拠点で何かできないか模索していたそうです。一方で、自動車のEV 化に伴って新しい技術の必要性や事業転換を考える企業が当社を含め県内に多くありました。そういったニーズと、デジタル化に代表される新しいモノづくりの象徴的な存在としての金属3D プリンタが合致したという感じです。それでジェトロ群馬が県内のいろいろな企業へお声がけをしてくださって、企業間で連携して金属AM 技術を推進していきましょうという話がまとまったというわけです。それが2020 年のことです。ですから、日本ミシュランタイヤとジェトロ群馬がいなければGAM の設立といった発想には至らなかったと思います。そうした経緯を経て、2021年7 月に当社や日本ミシュランタイヤを含む県内8社でGAM を設立しました。
2021 年6 月に群馬県庁で行われたGAM 設立発表会の様子(右から3 人目が鈴木宏子代表理事)(写真提供:GAM)

2021 年6 月に群馬県庁で行われたGAM 設立発表会の様子(右から3 人目が鈴木宏子代表理事)(写真提供:GAM)

現在は何社が参加しているのですか。

今は25 社・団体が参加しています。2022 年6月にはフランスの国立産業技術センター「CETIM(セティム)」の参加がありました。日本にも各県に産業技術センターなどがありますが、フランスでは行政区の割り振りではなくて業種ごとに産業技術センターが分かれています。その中でCETIM は金属AM を含む機械加工を統括する産業技術センターです。もちろん仏ミシュランの日本法人である日本ミシュランタイヤのお力添えがあったからなのですが、高い金属AM技術をもつCETIM が参加し、共同開発プロジェクトを進めることなどを通じて技術的なさまざまなヒントを得ることができ、金属AM のノウハウの幅が大きく広がったと感じています。

すごいですね。われわれとしても非常に興味があります。ぜひ教えてもらいたい。
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