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型技術 連載「巻頭インタビュー」

2024.10.10

精密金型の技術を活かし世界が認める超微細の医療機器部品の量産を実現―藤井精工

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藤井精工㈱
技術部 部長 医療事業部長 兼 責任技術者
蔵前法文氏

Interviewer
㈱ソディック 工作機械事業本部
レーザー加工機事業部 加工技術部 副部長
松本 格氏

松本

「型づくりは人づくり」という言葉もありますよね。

蔵前

本当にその通りだと思います。あとはもちろん待遇面も大事ですね。当社の医療事業部は女性がメインの職場ですが、「働きやすい」と言ってまず辞めません。一番大きいのは、子供の行事や病気、親御さんの介護などがあれば自由に仕事を休んでよいとしたことでしょう。当日欠勤でも構いません。また、休んだことに対して誰からも何も文句を言われない環境が必要と考え、現場には「お互いさまだ」と常に言い聞かせています。そのぶん、人は少し多めに採用しています。口コミで自分の身内をどんどん連れてきてくれるので、多くの女性が働くようになってくれました。

松本

そんな良い条件はなかなかないですね。そういった体制をつくるのも上長の仕事なのですね。

蔵前

ほとんどはパート社員ですが、私は「ここで一生懸命学んだら技術者になれる」と伝えています。実際、彼女らのプロフェッショナル精神はすごい。医療事業部では彼女らが自主的に考えて、全数検査を3 回行ってから出荷するようになりました。「自分の子供や親がそれを使ってもし命を落としたら怖いから、徹底的にやりたい」と相談を受けたのです。
納期でひやりとすることもありますが、そのおかげで、ここ5 年間で世界に出荷した200 万~300 万個の医療部品に不良は1 個も出ていません。海外の医療メーカーから「世界のサプライヤーの中で御社の検査工程はナンバーワンだ」と褒められます。ここまで安心して仕事を任せられる会社は初めてだと。私も彼女たちを非常に誇りに思っています。こういった統制力も技術なんだと深く実感しているところです。

松本

なるほど、御社が強みとする技術は加工技術だけに収まらないのですね。

日本の高い技術をもっと世界の市場へ発信すべき

蔵前

これからの中小企業は日本の中小企業ではなく、世界の中小企業になることを目指さないといけません。国内の大手企業から仕事をもらってくるだけではなく、自分の技術を自分たちで世界の市場へ発信して世界から直接仕事をもらう。「技術を売る」ということが大事だと思います。われわれができたのですから、ほかの企業ができないはずはありません。なぜなら当社と同じぐらいの技術をもった企業はこの北九州地域でもたくさんあるからです。
実際、日本のモノづくりの価値は世界的に見ても本当にすごい。製品を10 個つくって10 個良いモノをつくり続けられるのは日本だけです。国によっては「9 個が良品ならいいじゃないか」と平気で粗悪なモノを送ってくるところもある。世界から日本が必要とされているのはそういうところです。
世界には日本の技術を求めている人たちが大勢いる。過剰品質と言う人もいるかもしれませんが、最後に勝つのはそういった日本のモノづくり。今はその自信を失っている。もっと誇りをもつべきだと思います。

松本

なかなか大変なところもあると思いますが、世界と直接つながれるきっかけを自らつくっていくしかありませんね。

蔵前

われわれも今は中小企業ですが、中堅企業と呼ばれるところまでもっていきたいと思っています。私の次の目標としては、5 年後には当社としての売上げを20 億から50 億にもっていけるようにしたい。その量産計画を立てています。これまでFDA(米国食品医薬品局)に仕事の種まきをしてきました。医療分野での量産には4~5 年かかりますが、今年から花開くものがたくさんあります。来年頃から藤井精工としては一番おもしろい勝負の年になると思っています。

松本

それを聞いて私も非常に楽しみです。本日はありがとうございました。
蔵前法文氏 略歴
2001 年 九州工業大学 情報工学部 機械システム工学科 卒業
同年 藤井精工㈱ 入社
2012 年 技術部 設計係 係長
2015 年 技術部 開発課 課長
2017 年 技術営業部 部長
2019 年 医療事業部 事業部長
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