型技術 連載「モノづくりの未来を照らす高専突撃レポート」
2024.10.31
第1回 私と高専との出会い
フリーアナウンサー 藤田 真奈
ふじた まな:大阪府出身。元とちぎテレビアナウンサー。関西学院大学卒業後、金融業界の企業に就職。その後転職してアナウンサーに。とちテレニュース9(とちぎテレビ)、アクセント!(栃木放送)、BerryGood Jazz(Radio Berry)、軽井沢ラジオ大学モノづくり学部(FM軽井沢)などに出演中。
E-mail:manafujita.mc@gmail.com
Instagram:mana.fujita
まずは私の自己紹介
読者の皆さま、はじめまして。藤田真奈と申します。このたび『型技術』誌で連載をさせていただくことになり、大変うれしく思っております。
私はこれまで13 年間、長野県と栃木県のテレビ局でアナウンサーとして活動していました。「アナウンサー」と聞くと、ニュースを読んだり街中からレポートをしたり、はたまたおいしいものを食べたり……そんな姿を想像される方も多いと思いますが、それはほんの一部分。もちろん前述したようなお仕事も数多くさせていただきましたが、特に地方局ではそれ以外の業務もたくさんあります。
例えば、現場に出かけて取材し、そこでうかがった内容をまとめてニュース原稿を書いたり、何か目新しい情報を見つけては紹介コーナーを企画したりもしていました(図1)。また、週末など催しが重なるときには取材クルーが足りなくなってしまうので、1 人でカメラをもって出かけることもありました。小さなカメラをもたせてもらえるときは良いのですが、担ぐタイプの大きなカメラと三脚をもって移動するのは結構体力を使いましたね。
図1 高校野球取材での優勝インタビュー風景(写真提供:藤田真奈)
そのほか取材では、真冬の軽井沢で吹雪の中行ったイルミネーションロケや、標高2,500 m の浅間山に片道6 時間かけて登頂する登山ロケ。さらには早朝2時から漁船に乗せていただき、ホタルイカの定置網を漁師さんと一緒に引かせていただいたこともありました。船酔いしてしまったスタッフさんもいたので、その間は私がカメラを回していたり―。アナウンサーは体力勝負です(笑)。
取材や撮影だけではなく、もちろん編集もしていました。撮ってきた映像の中からどこを使って、どの映像と組み合わせるか、文字は何色にしてどの場所に入れるか、文字を出すタイミングやBGM、効果音はどうするのか。テレビ放送にしてほんの一瞬、1 秒とか0 コンマ何秒、何フレームという世界ではありますが、そこにこだわりをもってつくっていました。放送されてしまえば一瞬なので気づく人はほとんどいないと思いますけど(笑)。
でも、そうやって頭を使って時間をかけて生み出したものって思い入れが強くなるんですよね。なので、取材させていただいた方のことはいつの間にか大好きになっていました! そうやって好きな人がどんどん増えていくからその地域が好きになるんだと思います。私は大阪出身ですが、長野には7 年、栃木には6 年となかなか長くお世話になっているのも、こうした皆さんとの出会いのおかげだと思っています。
そんな私がなぜ今高専の連載を?
2021 年3 月にテレビ局を退社し、フリーアナウンサーになったのですが、その際初めてお声がけいただいたのが「経営者にお話をうかがう」という対談番組でした。企業の選定を任せていただいていたこともあり、さまざまな会社について調べる中で、私自身が特に興味をもったのがモノづくり企業でした。というのも、初めは「全然知らない世界だなぁ」と思っていたのですが、いざお話をうかがってみると実はものすごくお世話になっていることが多いと気づきました。そこから「もっとこの業界のことを知りたい」と思うようになり、製造業の企業を選んでインタビューをお願いするようになりました。
そんな中でよく耳にしたのが高等専門学校、いわゆる「高専」というキーワードでした。恥ずかしながら当時の私は高専という教育機関をよく知らなかったのですが、たびたび耳にするので「ちょっと調べてみよう!」と思って調べ始めたら「素晴らしい教育システムに志の高い学生さんたちが集っている!」と驚きの連続で……。調べれば調べるほど「モノづくり業界の救世主」だと思えてきたんです。
ご縁あって2023 年1 月から、高専にスポットを当てたラジオ番組に携わらせていただいているのですが(図2)、実際に高専で学んでいる学生さんや教授にお話をうかがうと、その志と質の高さは想像をはるかに超えるものでした。皆さん「モノづくりが大好きで高専に進学している」という思いが根底にあるので、学生さんは自主的に学び、その環境を楽しんでいると感じます。先生方は、学生さんたちが楽しんで学びを深められるようサポートしているといった印象です。
図2 番組をお届けしているラジオスタジオにて(写真提供:藤田真奈)
さらに驚いたのは、どの高専も地域の住民や企業とつながりながら、「困りごとの解決」を目的としたモノづくりを実践していることです。実際に地域の方たちと学生さんたちが対話をし、何度も試作を繰り返しながら実装までこぎつける。そんな取組みが各地で行われていました。困りごとを解決すればきっと喜んでもらえる。私自身、モノづくりの楽しさの一つは「人に喜んでもらえること」だと思っていたので、学生のうちからその楽しさを実感できる教育システムは本当に素晴らしいと感じました。
このように番組を通して高専について学びを深める中で、印象深いエピソードに出会いました。それは、ある学生さんの体験談なのですが、中学時代、高専に進学したいと担任の先生に相談したところ「高専は専門性は磨けるけど、頭が固く柔軟性がない印象があるので勧めない」と言われた、というものでした。その学生さんはオープンキャンパスなどを通して「そうではない!」と感じ、先生の印象を覆したくて入学したということでしたが、そんな中学生がどれだけいるでしょうか。もしかしたら高専の実情ってまだまだ知られていないことも多いのかもしれないと感じ、真実を伝える必要性を感じたんです。
「高専」は“十校十色”
国立高専と分類される学校は北海道から沖縄まで全国に51 校ありますが、どのような教育プログラムで生徒たちの学びを育んでいくかというのは、実は各高専にゆだねられているところが大きいそうです。ロボコンやデザコンのようなコンテストに力を入れている学校もあれば、メタバースの専門家など、今後必要になるであろう人材の育成をいち早く行っている学校もあります。そのほか、モノづくりに必要な感性を養うための独自のプログラムを展開している学校など、挙げ始めたらきりがない…。
そうした各高専独自の教育プログラムというのは、ときに企業における課題解決のヒントになることもあると思うんです。この連載では、そうした国立高専の日常や現場の生の声をお伝えしていけたらと思っています。
まだまだモノづくりについても高専についても勉強中ですが、今後の取材活動などを通して楽しく学びながら成長していければと思っています。これからどうぞよろしくお願いいたします。
【告知】藤田真奈さんが11月10日(日)、JIMTOF2024の特設ステージで公開収録を行います!