機械設計 連載「教えてテルえもん!3次元ツール習得への道」
2025.08.06
第15回 3次元CAD操作習得に向けた人材育成について
いわてデジタルエンジニア育成センター 小原 照記
おばら てるき:いわてデジタルエンジニア育成センター長。自動車内装部品の設計会社を退職後、岩手県北上市を活動の拠点に10年以上、3次元デジタル技術関連の人材育成、企業支援に努め、学生から求職者、企業まで幅広く指導し、3次元から始めるDX推進活動を続けている。同センター長のほか、3次元設計能力検定協会の理事も務める。
はじめに
3 次元CADを活用できる人材を育成する場合、まずは「目的とゴール」を明確にすることが大切である。自社で3次元CADを活用し、何をどうしたいのかの目的意識を社内で統一させる。3 次元CAD導入の目的は、干渉/組立て不具合といった設計ミスや試作回数の低減によるコスト削減、時間短縮、あるいは新製品開発や新規設計案件の受注など、企業によってさまざまである。だからこそ、“組織のありたい姿”を描き、直面している課題解決に努めるとともに、“その先”を見据えた人材の育成を心掛ける必要がある。
今回は、3 次元CADの実際の操作方法を習得・育成していくためのコツについて、つまずいてしまうポイントも交えながら紹介する。
3次元CADのカスタマイズと習得に向けた教育
一般的な機械設計用の3次元CADは、多くの機能が搭載されている。汎用的に使用できるようになっているため、板金設計、金型設計、配管など、さまざまな用途で使う機能/コマンドが搭載されているが、これらすべてを使いこなす必要はない。自身の業種や業務に合った使い方をすればよいのである。
2 次元CADに比べ、3 次元CADは立体化する機能が追加されていることから機能が多すぎて悩んでしまう。そのような場合には、よく使うコマンドはショートカットキーやツールバーを設定したり、使わない機能はアイコンを非表示にしたりするなどのカスタマイズをすることでコマンドを探しやすくするとよい(図1)。
図1 3 次元CAD「Autodesk Inventor」のメニューをカスタマイズした例
例えば、普段、旋盤加工部品関係を取り扱っているのであれば、回転、押し出し、フィレット、面取り、穴コマンドといった主要機能さえ覚えれば、ひとまず3次元CADで業務が進められるはずである。
しかし、独学や集合セミナーを受けて学ぶ場合、自分がどの機能を学び、覚えたらよいのかを最初から区別することは難しい。選択肢として、個別のトレーニングを依頼するのも1 つの習得するための近道である。自社、自分がやりたいことを説明し、それを最短でできるようになるためのカリキュラム作成を講師に依頼する。ただし、最短で学ぶことが必ずしも良いことではない場合もある。汎用的な使い方を学んでいないため、応用的な使い方ができないことがある。旋盤加工用の部品はモデリングできても、フライス加工用の部品はうまくモデリングできないなどの弊害が出てくる場合がある。
そのため、筆者が依頼を受けて個別に3 次元CADのトレーニングを行う際は、依頼者にとって必要な機能を使用用途から抽出し、それらを確実に使えるよう操作方法などを教えるとともに、3次元CADの基礎として知っておいた方がよい機能についても併せて教えるようにしている。
また、3 次元CADの活用効果は設計業務の効率化だけにとどまらず、全社における3 次元データ活用/データ連携を推し進めることで、その価値を最大化することができる。そうした将来的な活用の方向性やメリットも伝え、関連した機能を含めて紹介し、長期的なトレーニングプランを提案している。初級、中級、上級、実践といったレベルに応じてステップアップできる内容を用意している。
例えば、エクセルの基本操作、表をつくることは覚えて、業務は最低限行えるとしても、実は関係式やマクロなどを使うと、数時間かかっていた作業が数分で終わることもある。
筆者としては、基礎を習得するのは集合セミナーを受講し、さらなるスキルアップを図るために個別のオーダーメイドのトレーニングを依頼するのがお勧めである。3 次元CADによっては、無料のチュートリアル(図2)やヘルプページがあったり、動画で学ぶことができるようになっていたり、書籍が販売されていたりなど、独学で習得するための手段もあるが、一度は外部のセミナーやトレーニングを受けてみるとよい。独学では気付かなかった便利な使い方や機能を知る機会にもなり、さらなるスキルアップが図れる。
図2 3 次元CAD「SOLIDWORKS」のチュートリアル画面例