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機械技術

2025.09.01

福田交易、 スピンドルの付加価値を高める 要素部品とユニット機器を提案

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 福田交易がスピンドルの機能を高める要素部品とユニットの提案を本格化している。同社はベアリングや工作機械向けスピンドル、シールなど、機械要素部品とユニット機器を取り扱う輸入専門商社。長年蓄積された技術知識を活かし、日本の工作機械やスピンドルのメーカー、工作機械ユーザーに品質とコストを両立させたモノづくりを提案する。メカニカルコンポーネンツ部シール技術課の外山雄大主任とモーションドライブ部スピンドル一課の浅野正係長に、高精度加工や生産性向上に役立つスピンドルの要素技術について聞いた。

過酷な環境にさらされる 回転体の寿命を向上

─ スピンドルに関するどんな提案ですか
メカニカルコンポーネンツ部シール技術 課の外山雄大主任

メカニカルコンポーネンツ部シール技術 課の外山雄大主任

外山:「FEY 薄形ラビリンスリング」の提案です。一般的には「ラビリンスシール」と呼ばれるものです。機械の回転軸とハウジングの間で封止(シール)するための部品です。ベアリングや歯車への異物侵入、および内部にあるグリース漏れを抑制します。スピンドルメーカーと工作機械メーカーで、開発・設計に携わる技術者の方にぜひ知っていただきたい、機械的接触がないメンテナンスフリーの製品です。
─採用する効果は
外山:たとえばスピンドルの長寿命化を期待できます。ベアリングなどの構成部品への異物侵入はスピンドルの主な不具合要因の1 つです。工作機械のスピンドルは、さまざまな材質の加工物の切りくずやクーラントにさらされながら高速回転します。長年使用していると経年劣化の影響により、加工中に生じた粉塵や飛沫となったクーラントがスピンドル内部に侵入してしまうリスクが高まります。ラビリンスリングを使用することにより、スピンドル内部のベアリング機構をはじめとする重要な部分を異物から保護します。また、内部からのグリース漏れも抑制し、信頼性の高い構造にすることが可能です。さらに、機械的接触がないため摩擦熱も発生しません。
─製造元は
外山: ドイツのFey Lamellenring(フェイ)が製造しています。同社は、ドイツのバイエルン地方南西部、アウグスブルクで、内燃機ピストンの密閉性を向上させる単層ラミナーピストンリングの製造を1946 年に開始しました。自動車やさまざま産業機械での使用条件を満たす機能を研究し、開発することで、知見を積み重ねてきたメーカーです。

コンパクト・省スペースで 設計者にやさしい

─ フェイの製品の特徴は
FEY薄型ラビリンスリング

FEY薄型ラビリンスリング

外山:メンテナンスフリーかつコンパクトなことです。最も薄い製品の必要取付け寸法は2.2mm です。典型的な環状シールやテーパシール構造に、FEY 薄形ラビリンスリングを追加することで、複合的な構造にでき、重要な部品への異物
侵入を抑制します。ダストリップ付きオイルシールに並べて、使用することもできます。既存のシール構造に無理なく追加できるので、大きな設計変更の必要がありません。
 内輪回転・外輪回転とも周速を考慮しての提案が可能です。高速回転機械や大型の機械にはリングの幅を広げて把持力を強化したタイプもあります。また、千葉の在庫管理センターには軸径200mm までのタイプを5mm 単位でラインナップしており即納に対応しています。さらに細い0.1mm 単位でのオーダーも可能です。
─ 使い方は
外山:キーホルダーのキーリングのようならせん構造なので、軸方向に広げて、らせん状にねじ込むように回しながら挿入します。取り外すときはリング端をドライバーのような身近にある工具でもち上げながら取り外せます。組立ての工程での煩わしさはありません。また、ご要望いただけましたら取付けの自動化も検討が可能です。
─ コンパクトで省スペースであること、組立てが簡単なのは魅力です
外山:当社は自社でスピンドルの製作やメンテナンスを行う拠点を保有しており、技術的な知見と経験をもち合わせています。今後も設備設計者の方に寄り添って、メンテナンス周期の延長など機械の信頼性向上に寄与する提案をしていきたいと考えています。

生産性向上と製造コストの最適化

─ 潤滑技術の提案も力を入れています
モーションドライブ 部スピンドル一課の浅野正係長

モーションドライブ 部スピンドル一課の浅野正係長

浅野:イタリア・ミラノのMWM Schmieranlagen(エム・ダブリュ・エム)が開発・製造する、オイルエアー潤滑装置とMQL 装置、オイルミストセンサなどを扱っています。工作機械のスピンドル寿命、メンテナンス頻度の削減、製造コストの最適化に関連します。こちらも工作機械ユーザーと工作機械メーカーの開発・設計者にぜひ知っていただきたい技術です。
─それぞれの製品のついて教えてください
浅野:オイルエアー潤滑装置は、主に工作機械や産業機械のスピンドルのベアリングに適切な微少量の潤滑油を供給するための装置です。構成要素部品として、オイルポンプ、オイルフィルタ、オイルエアー分配器で構成され、適量の潤滑油を常に同じ間隔で潤滑点に供給する装置です。MQL 装置は切削加工時に、工具の刃先にごく少量の切削油を供給する装置です。深穴加工や難削材でも、工具の長寿命化に寄与します。また、従来のクーラント供給の加工方法と比較して、多くの付帯設備を必要とせず、後工程の洗浄を省くことも可能です。省エネの観点やランニングコストの削減、生産設備ラインの短縮など製造現場で普及が進んでいます。
 オイルミストセンサは、ミスト装置から生成されたオイルミストを常時モニタリングし、ベアリングなど潤滑点の焼付きを未然に防ぐことに役立ちます。
 これらすべては直接的にも間接的にもスピンドルの性能やベアリングの寿命に関わる商品です。
オイルエアー潤滑装置

オイルエアー潤滑装置

─ エム・ダブリュ・エムについて教えてください
浅野:エム・ダブリュ・エムはオイル潤滑に関する装置・システムの専業メーカーです。主に工作機械分野でヨーロッパをはじめとした諸外国で多数の実績と経験があり、製品の性能や品質に強みをもっています。そのほかに鉄鋼や食品産業といった幅広い分野にも実績があり、2019 年から本格的に日本のモノづくりの現場へ提案をしています。
─潤滑に関する現状は
浅野:工作機械の性能の向上やツーリング機器の高機能化により、安定した加工品質の実現、加工の効率化が年々進んでいます。一方で工作機械やツーリング機器のみだけでは差が付きにくくもなってきました。そうしたときに重要なのが、細部の技術です。潤滑は機械加工全体でみると限定的な項目ですが、重要な技術です。意識して最適な技術や関連装置を導入していただくことによって、工作機械本体、スピンドルに好影響をもたらし、加工品質や効率性、製造コストのあらゆる面に成果が表れる技術です。
─エム・ダブリュ・エムの製品の特徴は
浅野:同社のオイルエアー潤滑装置はコントロールユニットが搭載されているため、外部機器からの制御なしでも使用することが可能です。徹底した品質管理のもと製造された定量エレメントを内蔵したオイルエアー分配器や3μm のオイルフィルタなどにより、安全かつ適量の潤滑油が供給できます。オイルポンプとオイルフィルタ、オイルエアー分配器から構成する必要最低限の仕様から、コントローラ、エアー圧力計、吐出確認用の光学式センサをオプションで追加した仕様など、お客様のご要望に応じた装置の供給が可能です。
 MQL 装置「LS シリーズ」は品質の高いミストを生成し、自社のオイルミストセンサと独自の機能を搭載した特許取得済みのユニットです。比例弁を使用しているため、一般的な製品で使用されているコントロールバルブによる脈動の影響を受けません。タッチパネル式ディスプレイを搭載しており、工作機械の制御装置を操作することなく、潤滑条件を簡単に変更することができます。
MQL装置「LS35」

MQL装置「LS35」

浅野:オイルミストセンサ「IFX-F」は、オイルミストの流れを検知するための光学式モニタリングデバイスです。あらかじめプリセットした流量に対してどの程度オイルミストが流れているかを定量的に知ることができます。本体に指をかざすことで反応するオプティカルキーを搭載しているため、プリセット値を設定する際に外部機器との接続は必要ありません。配管を流れるオイルミスト量を計測する際は、チューブを切断せずに後付けが可能です。
 オイル流量を見える化できるため予防保全に貢献でき、メンテナンス費用の削減にもつながります。
オイルミストセンサ「IFX-F08」

オイルミストセンサ「IFX-F08」

潤滑技術を意識することは 競争力が高いモノづくりにつながる

─ 潤滑技術に着目するとモノづくりの可能性が広がりそうです
浅野:潤滑不良によるベアリングや摺動面の損傷を予防することで、既存設備の信頼性向上や予期しない修理費用の削減に貢献できるだけではなく、現状のモノづくりのレベルは確実に高まります。ぜひ、潤滑に関連することに興味をもっていただきたいと思います。そのためのサポートは最大限にさせていただきます。

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