機械設計 連載「教えてテルえもん!3次元ツール習得への道」
2026.09.14
第32回 2次元CADと3次元CADの違いについて
いわてデジタルエンジニア育成センター 小原 照記
おばら てるき:いわてデジタルエンジニア育成センター長。自動車内装部品の設計会社を退職後、岩手県北上市を活動の拠点に10年以上、3次元デジタル技術関連の人材育成、企業支援に努め、学生から求職者、企業まで幅広く指導し、3次元から始めるDX推進活動を続けている。同センター長のほか、3次元設計能力検定協会の理事も務める。
はじめに
CADソフトは2次元CADと3次元CADに大別される。2次元CADでは2次元設計が行える。3次元CADは3 次元設計と2 次元設計の両方を行うことができる。誤解されている人が多くいるかもしれないが、3 次元CADでも「スケッチ」機能を使うことで2 次元での設計検討が可能であり、3 次元モデルから2 次元図面を作成することもできる。ソフトによっては、2 次元CADで設計した線データを3次元CADに取り込めるものもある。
「CAD」と「設計」は別物だということを理解してほしい。「2 次元CAD」と「2 次元設計」は別なものであり、「設計」と「製図」も違う。CADはソフトであり、製図は2 次元の図面をつくることである。そして、設計は製品の機能を検討し、具現化していく作業である。
今回は、2 次元CADから3 次元CADへ移行する際の注意点や課題について、2 次元設計と3 次元設計、2 次元CADと3 次元CADの違いを比較しながら詳しく説明していく。
2次元設計と3次元設計の違い
2 次元設計とは、“点や線といった情報で設計を行うこと”である。紙に穴をあける文具「パンチャー」を例にすると、図1 のように、横から見た状態で基準点や基準線を設け、力点や作用点、支点などをつくりながらパンチャーのストローク(動き)などを検討していく。
そして、2 次元設計を進めていく場合、基準線をオフセットすることで形状の厚みを表現していき、部品と部品との取り合いを見ながら詳細な形状を2 次元の線情報で描いていく。最後に、個々の部品にばらした図面に対して、加工に必要な寸法やサイズ公差や幾何公差、仕上げ記号などを入れながら設計情報を出力していく。
2 次元設計の場合、「点」と「軸(線)」を基準に設計作業を行う。基本的な軸として、2次元設計では「X軸」と「Y軸」の2軸がある。これに対し、3 次元設計では「Z 軸」が追加され、X/Y/Zの3 軸となる。さらに軸が追加されるだけでなく、図2 に示すように3 次元設計には「面」という概念が加わる。3次元設計には基準面として、X軸とY軸でできる「XY平面」、X軸とZ軸でできる「XZ平面」、Y 軸とZ 軸でできる「YZ平面」の3 つの面があり、Z 軸を高さ方向とした場合、図面の三面図で考えると、XY平面が「平面(上面)図」、XZ平面が「正面図」、YZ平面が「右側面図」となる。3 次元設計をする場合には、点と軸のほかに、面を設計の基準としてうまく活用する必要がある。
図2 2 次元設計と3 次元設計における設計基準の違いと、3次元CAD(Fusion)で軸と平面を表示した画面例
3次元設計は、2次元設計のようにひとまず横から見た状態だけを検討するといったアプローチをとることができない。厚みと幅を入力して立体形状をつくる必要があるため、はじめの構想設計のタイミングだと、少々やりづらさを感じる場合がある。3 次元設計が本領を発揮するのは、詳細設計の段階である。3 次元設計のメリットを最大限に活かし、干渉チェックや体積、質量、重心などを正確かつ簡単に求めることができる。
2 次元設計と3 次元設計にはそれぞれ良し悪しがあり、両方使えることが重要である。例えば、カーナビゲーションシステムで目的地までのルートを確認するとき、地図を真上から見た2 次元の図の方が経路や現在位置を確認しやすいだろう。これに対して、複雑な交差点や曲がり角は3 次元で表示してくれた方がイメージしやすく、曲がり忘れなどのミスを防止してくれる。このように、人間の思考というのは、2 次元で考えた方がよい場合もあれば、3 次元で考えた方がよい場合もある。そういう意味で、2次元設計と3次元設計に対応できる3次元CADを使うメリットは大きいといえる。
2次元図面と3次元モデルの違い
アウトプットである2 次元図面と3 次元モデルの違いは、どこにあるのだろうか。表1 に比較を示す。
サイズ(寸法)に関しては平面の2次元図面の方が確認しやすいが、形状については立体の3 次元モデルの方が確認しやすい。提案力やプレゼン力では、形状に色を付けたり、背景を入れたりするなど魅力ある画像をつくることができる3 次元モデルの方が優れている。
データ互換性については、2 次元図面も3 次元モデルも中間ファイルがあり、データのやりとりができるが、3 次元モデルの場合は面のデータも含まれ情報量が多くなり、データの受け渡しがうまくいかないケースもある。
情報共有は、2 次元図面は紙やPDFで配布できて扱いやすいのに対して、3 次元モデルは専用のソフトやアプリケーションが必要となるケースが多くある。ただ、最近では無料のビューワやWebブラウザで形状を確認できるものも多く登場している。また、3次元モデルをVR(仮想現実)/AR(拡張現実)空間で表示、確認できるツールなどもある。