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プレス技術 連載「我が社の現場DXはじめの一歩」

2025.02.28

第1回 素人でも簡単に使えるツールを発見!

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企画・文=ものづくりライター 新開 潤子(オフィス・キートス)
協力=SUS 株式会社

しんかい じゅんこ:ものづくりライター/オフィス・キートス代表
URL:https://office-kiitos.biz/
取材協力:SUS 株式会社 https://www.sus.co.jp/

中小企業の現場DX を阻む大きな壁とは?

 人手不足や採用難を始めとして、製造業を取り巻く環境が大きく変化しつつある今、工場のデジタル化・自動化(=デジタルトランスフォーメーション、以下DX)による現場の効率化は、企業の規模にかかわらず喫緊の課題となっている。そのニーズに応えて最近は各社からさまざまなDX やIoT のソリューションが提供されるようになり、中小企業にとっても導入の敷居は下がってきた。それに伴い、多くの企業で「IT で業務の効率化を」と声高に叫ばれていることだろう。しかし、意気込んでDX の道を模索してはみたものの、実際には壁に直面して先に進まないケースも多いのではないだろうか。
中小企業のDX を阻む壁
①人材不足
DX プロジェクトの企画・実行ができる人材や制御設計、電気配線などの実務ができる人材がいない
②投資コスト
システムやソフトウエア、ハードウエアの導入にかかる初期投資の負担が大きい
③組織文化と抵抗勢力
「既存システムとの併用が難しい」「今のやり方を変えたくない」など、社内から抵抗が起こる
 結局のところ、社内にデジタルやIT、システムなどに取り組める人材がいないと外部に頼らざるを得なくなるため、設備投資が大がかり、かつ高額になりやすい。すると従来の仕事の仕方を「良し」とする従業員の抵抗を引き起こしやすく、結果としてDX プロジェクトが停滞するという悪循環が起こっているのではないか、と推察される。

壁を乗り越えるのにおすすめなのは社内人材による「スモールDX」

 とはいえ、DX への取組みが喫緊の課題であることは間違いない。では人的、金銭的なリソースが限られた中小企業がDX の取組みを始めたい場合には、どこから手をつければいいのだろうか。私は、中小製造業が効率的・効果的にDX の取組みをスタートするには、次の2 点がポイントになると考えている。
中小企業がDX に取り組む際のポイント
①社内人材でも扱える仕組みを選んで導入する
②身近な業務からスモールDX を始め、自社でできることを実践する
 社内人材で、社内でできることから始めるスモールDX なら、外部業者への依存を減らし、コストを抑えながら、会社全体、工場全体のデジタルリテラシーを向上させていくことができる。これで小さな成功体験を積み重ねていけば、将来的な大規模なDX プロジェクトも実現に近づけられるのではないだろうか。

 とはいえ、そんな都合のいいDX ツールは多くはない。DX の取組みが進む企業と乗り遅れた企業の差はますます開くばかりだろうな……というようなことを長く考えていた。

国際ロボット展で「都合のいいツール」を発見

 さて、自己紹介が遅れたが、私は日々ものづくりと経営の現場を駆け回り、製造業の技術を言語化して伝える「ものづくりライター」と、町工場の営業改革を推進する「営業コンサルタント」という2 足のわらじを履いて活動している。

 ライターとしてはものづくり企業の経営者や技術者、工場、展示会などを対象に取材・執筆を行っており、コンサルタントとしては主に町工場を対象に経営・営業の課題を解決するためにセミナーやワークショップ、実務などを担当している。そして2 分野の業務に垣根はないので、特に展示会取材では、常にクライアントの課題に対するソリューションを探しながら会場を歩いているのである。

 そんな中、2023 年11 月に東京ビッグサイトで開催された展示会「国際ロボット展2023」で、DX の「はじめの一歩」に有用と思われるツールを発見した。アルミフレームのメーカーとして知られるSUS ㈱が製造販売している「SiO(エスアイオー)シリーズ」だ。

 ブースでは大掛かりな自動搬送システムやロボットが稼働する中、壁際で「バーコードリーダーによるシャッター制御」というデモが行われていた(写真1)。試しにバーコードリーダーを読み込んでみると、パソコンの右手にある部品箱のふたがパタンと開き、部品の取り間違いを防ぐポカヨケの仕組みになっていた。
写真1 「国際ロボット展2023」で見たシャッター制御の展示(写真提供:新開潤子)

写真1 「国際ロボット展2023」で見たシャッター制御の展示(写真提供:新開潤子)

 興味をもって詳しく聞いてみたところ、これは小学生でも使うことのできるコントローラで無料ソフトを使って簡単に現場のデジタル化ができるツールだという。もしかしたら、これこそ私が探していた「都合のいいツール」ではないか。そして、DX で困っている多くの企業のDX を推進するポテンシャルがあるのではないだろうか。私はその可能性が高いと確信し、情報収集を開始した。

「人が数える」「人が走る」「人が記録する」を簡単に自動化

 SiO シリーズの詳細は次号の本連載2 回目で取り上げる予定なので、今回はポイントとメリットを簡単に紹介したい。
SiO シリーズのポイント
ポイント① プログラム知識不要
メーカー提供の無料のソフトウェアを使い、日本語で簡単にプログラムできる。プログラム知識が不要
ポイント② コネクタ付きのカタログ製品
センサやモータなど、コネクタ付きのカタログ製品がラインアップされている。電気配線の人材・外注も不要でコネクタをコントローラに差し込むだけ
ポイント③ 1個1 万円台~の低価格
コントローラは最も安価なタイプで1個1 万円台~の低価格。数千円~のアイテムと組み合わせて、スモールDX が実現できる
 このように、前述の「壁」をたやすく乗り越えてしまう要素が満載だ。この仕組みを使ってできることは、これまで人が手間と時間をかけてやっていた「ひたすら数える」「走って伝えに行く」「紙に記録して回る」などの定型業務を簡単にデジタル化できるイメージだ。

【自動化の事例】
・ 指示書のバーコードを読んだら、対応する部品箱のシャッターが開く
・ 重さが○グラムよりオーバーしていたら赤のランプとブザーで知らせる
・ センサの前を製品が○個通過したら止まる
・ センサの前を人が通過したらアラームを出してメールを送る
・ モータを30 秒動かしてから止める
・ AのセンサがON になったら、Bのコンベアを動かして次に送る

 このような自動化やポカヨケの仕組みを、社内のスタッフがちゃちゃっと組めるようになれば、「こういうのが欲しかった!」となる現場も多いことだろう。

 しかし本当に誰でもできるのか、というところは正直ちょっと疑わしかった。なぜなら世の中には「簡単」と言っておいて実際には難しくて素人にはとても使えないソフトやシステムがたくさんあるからだ。

 その点、メーカーのSUS では、「SiO」を使った小学生向けのプログラミング教室も開催しているそうで、子どもたちは60 分ぐらいでプログラムができるようになっているとのこと。これなら私でもできるかも? とその気になってしまった。プログラムの知識がない私ができるなら、きっと誰でもできるに違いない!

 ということで、勧めていただいたトレーニングキットを購入し、文系ライターの私が自らプログラムにチャレンジしてみることにした。ちなみに購入先はモノタロウで、SiOt トレーニングキット(品番:SIO-L25)は22,900 円(税込25,190 円、原稿執筆時)だった。
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