プレス技術 連載「我が社の現場DXはじめの一歩」
2025.03.17
第2回 SiO シリーズでできること
企画=ものづくりライター 新開 潤子(オフィス・キートス)
文=山田 綾子(SUS ㈱)
協力=SUS 株式会社
しんかい じゅんこ:ものづくりライター/オフィス・キートス代表
URL:
https://office-kiitos.biz/
やまだ あやこ:経営管理グループ総務チーム
URL:
https://fa.sus.co.jp/
「誰でも簡単電気制御」を実現する現場・メカ設計者のためのコントローラ
工場のデジタル化・自動化(=デジタルトランスフォーメーション、以下DX)による現場の効率化が多くの企業にとって喫緊の課題となる中、製造現場のスモールDX に有用な手段の一つとして、「SiO(エスアイオー)シリーズ」を活用した現場改善をご紹介するこの企画。第2 回目となる今回は、SiO シリーズの特長やラインアップについて詳しく取り上げていく。
SiO シリーズは、アルミフレームを主力製品とし、各種駆動機器・制御機器と合わせて製造現場の自動化・省力化に取り組んできたSUS 株式会社が、「制御の専門知識を持たない『現場の作業者』や『メカ設計者』のためのコントローラ」をコンセプトに2016 年に発売した製品だ。開発にあたっては「実現したいことやアイデアがあっても電気(制御)は難しく、専門の技術者に頼むと時間やお金がかかるため、改善がなかなか進まない」という現場の困りごとを解決するべく、「誰でも簡単に使えること」を目標とした。
その際、ポイントとなったのが、つまずきやすい「プログラミング」と「配線」の簡略化だ。時間がかかるプログラミング言語の習得を必要とせず、日本語で必要な選択肢を選んでいくだけで使えるソフトウェア「SiO︲Programmer」(図1)を独自に開発し、無料で公開するとともに、配線に関しては業界標準のe︲CON コネクタを採用。コントローラ本体に内蔵された端子台に、あらかじめe︲CON コネクタを取り付けた周辺機器を差し込むだけ(図2)で、電源・信号線といった電線の違いを意識しなくても、制御したい入出力機器との接続がワンタッチで完了する仕様となっている。
図1 SiO-Programmer のインターフェイス。選択肢や項目の説明が日本語で表記されている。
図2 SiO コントローラと入出力機器の接続イメージ。コネクタにより抜き差しが簡単に行える。
ターゲットは「簡単な現場改善」 SiO の「入出力制御」でできること
ここからはSiO シリーズで具体的に何ができるのかを見ていこう。SiO の名前の由来はSimpleInput Output の頭文字だ。用途としては、製造ライン全体を制御するような大規模なものではなく、専門の技術者でなければ扱いが難しいPLC(Programmable Logic Controller)を使うほどではないものの、ちょっとした電気制御によって便利になる「簡単な現場改善」をターゲットとしている。日本語ではSiO シリーズのコントローラを「簡単入出力制御装置」と呼んでおり、文字通り接続した入力機器のON / OFF 状態に応じて出力機器の制御を行うことが可能だ。PLC と比べて用途や機能を限定したことで、60 分程度のプログラミング教室で小学生でも基本の使い方を習得できるほどの簡単さを実現している。
現在、SiO シリーズには後述する複数のラインアップが存在し、ネットワーク通信機能を備えたものや、さらに機能を追加した上位モデルなどもそろっているが、いずれも基本となる「入出力制御」の流れは同じ。SiO コントローラは、接続された「センサ」や「スイッチ」といった入力機器のON /OFF の状態を常に監視しており、例えば「スイッチが押されてON の状態になったら、出力機器であるブザーをON にする(鳴らす)」といった制御を行うことができる(図3)。入力機器がどの状態になったら、どの出力機器に指令を出すのかといった条件は、あらかじめ専用ソフトウエアであるSiO︲Programmerでプログラミングし、コントローラに登録しておく仕組みだ。
動きとしてはシンプルだが、同じブザーを鳴らすという制御であっても「現場や装置の異常を周知する」「特定の人を呼び出す」「作業の完了を知らせる」など用途は多様。なお、日本語で必要な選択肢を選ぶだけとはいっても「スイッチがON の状態になったら、5 秒間ブザーをON にする」や、「スイッチ1 がON の状態になったら、スイッチ2 がON の状態になるまでブザーをON し続ける」など、さまざまな条件設定が可能となっている。
図3 SiO コントローラによる入出力制御のイメージ。コントローラの周囲に並ぶ入力/出力機器は、あらかじめe-CON コネクタを取り付けて販売している周辺機器の一例で、ほかにもさまざまな種類を用意している。
オプションとして購入可能なコネクタ付きの多様な入出力機器との組み合わせ方によっても応用の幅は広く、シンプルな入出力制御だけでも図4に示した「現場の異常検知」や「材料の残量検知」、「ポカヨケ」など、アイデア次第でさまざまな改善を実現することができるのだ。
図4 SiO の「入出力制御」でできることの一例。プログラムによる条件設定と機器の組合せ方でさまざまな改善を実現可能。