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プレス技術 連載「モノづくり革新の旗手たち」

2025.08.04

加工技術のさらなる研鑽で高度な技術· 技能集団を形成 顧客課題の解決に貢献する―セイコー

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㈱セイコー 代表取締役
村下 正樹氏

1970 年創業のセイコー(愛知県小牧市)は、各種輸送機器や産業機器を中心に幅広い分野を得意とする精密板金加工メーカー。1983 年にはそれまでの建築金物に加えて板金加工事業に業容を拡大。先端加工機と職人技の融合で急成長を遂げた。最近では、自社開発のアウトドアギアのブランディングに成功、大手量販店での扱いが始まるなど攻勢をかけている。同社の二代目社長 村下正樹氏に同社技術の特長と、ものづくりのこれからついて聞いた。

誠実に手を抜かないことが信頼につながる

『プレス技術』編集部

どんなものを得意としていますか。

村下

メインは建築· 建設関連機器をはじめ、航空機· 鉄道車両、各種産業機器の精密板金品です。また介護機器やパチンコなど遊技機の部品加工なども扱っており、多品種少量品を幅広く手掛けています。最近では、訓練用のコックピット型のシミュレータ機器の注文をいただき、土台からフレーム、パネル、中に付く板金部品などすべてを加工、組付けまでをしています。なお、大型の板金機械も保有していますので、小物から大物までカバーできるのも特長です。
左:A2024 材の航空宇宙機用部品  右:シミュレータ架台

御社の強みは。

一つは、他社で難しいとされる加工を得意としているところ。他社で曲げられないモノを曲げたり、溶接で抜くのが難しいひずみを抜いたりなど、いろいろな「技」を持っています。もう一つは、それらの技術を駆使してきめ細かなサービスをしているところです。特に溶接後の仕上げにはこだわっています。溶接がどれだけキレイでも、仕上げが汚かったら台無しとなります。当社では、下地のバイブレーション仕上げまで手掛けることもあります。不景気の時代だからこそ、誠意は伝わります。真面目にコツコツとやってきたからこそ、最近の不況下でも忙しくさせていただけるのかなと思っています。
3 次元の曲げ加工品(自動車用試作部品)

3 次元の曲げ加工品(自動車用試作部品)

最近の顧客からの要望は。

村下 当たり前のことですが、まずは事故を起こさず納期厳守で安定供給を続けること。そのうえで少しでも品質の良い物を納品することです。ある程度のお付き合いを経て、「あそこに出せば大丈夫だ」と思ってもらえるようになれば勝ちです。当社もコロナ禍で厳しい経営を経験しましたが、それでも信頼をしていただき適正単価で仕事を出していただけるお客様もいるということを再認識したので、そうした仕事をどれだけ開拓していけるかが勝負です。

新規開拓で大切なことは。

こちらから探しに行くのではなく、見つけてもらう営業スタイルを貫くことだと思います。当社では、新規のお客様の8 割は紹介で、2 割はネットで見つけていただいたお客様です。なので、情報発信の仕方には特に気を使っています。安売りをして一時的に受注が増えても闘えません。残念ながら安値の実績が邪魔をして誰も手を出せない仕事も多く見られます。

昨夏、厚労省の定めるものづくりマイスターに認定されました。

父親(現会長村下清幸氏)と私の2 名が工場板金部門のものづくりマイスターに認定されました。ものづくりマイスターは5 年以上の実務経験のある技能士(技能検定に合格した特級や一級技能士)を対象とした資格で、認定されると厚労省の委託で学校や私企業などさまざまな場所で技術を教えることができます。
企業にとって技術は飯の種。普通は簡単に教われるものではありませんが、この制度では国が仲介してくれるので企業の垣根を越えて学べるようになります。当社もマイスターの方に機械加工を習っていますが、今度は自分が教える立場となります。受講企業の方との交流を深めることで新しい仕事にもつながっていくのではないかと期待しています。
工場内部

工場内部

板金加工への参入で大きく飛躍

創業のいきさつは。

1970 年(昭和45 年)に父親が創業しました。当初は建築金物を作る会社としてモニュメントや手すり、階段、看板とか、いろんなものを作っていたと聞いています。その後、航空機や電車といった輸送機器や産業機械など工業製品の板金部品を作る仕事を開始し、そちらにシフトしていきました。1983 年(昭和58 年)に板金加工事業を始めるにあたって現在のセイコーに社名を変更しました。セイコーとは会長の名前の清幸の音読みにしたものです。

板金事業をはじめた理由は。

仕事の幅を広げていこうと考えたからです。創業以来、建築金物を作ってきましたが一つの産業だけに偏るのは危険と考えていた矢先に板金の仕事の引き合いをいただきました。以来、様々な産業· 業界の製品を手掛けるうちに、業績も拡大、成長することができました。

ご自身の入社の経緯は。

2017 年、父親の求めに応じて16 年間のアメリカ暮らしを切り上げて入社しました。もともと高校時代に留学し、米国で大学卒業後そのまま向こうでプロのミュージシャンとして活動、併せて、レコーディングエンジニアとして有名アーティストの音作りを手掛けたり、楽器の商社としての活動もしていました。そうしたなか、突然、「帰って来ないのなら、会社は畳むぞ」という報せが父親から届きました。米国ではアーティストビザも取得、キャリアを積んでいましたので悩みましたが、まるで自分の家がなくなるような寂しい気持ちになり、親孝行すべきと考えて帰国しました。ただ、音楽も諦めたわけではなく、大谷選手のように二刀流を目指しています。

入社後はまず何をやられましたか。

すぐに現場に出ました。私の入社と同じタイミングでファイバーレーザの溶接ロボットを導入したので、それをメインで担当、朝から晩までひたすら多忙な毎日でした。特に当社は短納期を売りにしていることもあり、翌日納品という仕事もザラでしたので余計です。今はだいぶ休みは増えましたが、それでも特急で依頼された仕事についてはまだ土曜日を稼働日にすることもあります。ムチャ振りが多いなか、従業員は本当によくやってくれると感謝しています。
レーザ加工機

レーザ加工機

大型ベンダー

大型ベンダー

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