ここまでお読みいただけた方であれば、ロットサイズに応じた値決めを行い、見積書に明記していくことが大切であると思われたことでしょう。具体的には次表のように表していきます。実際には、最終的な原価をしっかりと算出した上で売価設定を行ってください。
もちろん、市場価格や競合価格がある場合、上記のような差をつけた見積り価格では注文が取れないこともあります。特別価格(赤字)でも受注に動く場合には、特別値引きを行ったという事実を見積書に残しておきましょう。次表のように書いて、顧客に“一種の貸し”を作っておくのです。このような積み重ねによって「小ロットの原価は高くなるのだ」という事実を伝えます。顧客教育を行っていくことが大切なのです。
実際、筆者の顧問先には、段取り費の公式を顧客に見せて丁寧に説明し、小ロット品の値上げを認めてもらえた企業が数多くあります(当然ですが、原価は丸裸にはしないこと。仮の数字でも十分伝わります)。
ここまでで段取り費の重要性と小ロットにおける値決めのポイントについて解説してきました。そして最後に、あと1 点だけ重要なポイントをお伝えします。
それは“段取り改善も同時に実施する”ということです。段取り改善とは、段取り材料ロスを減らしたり、段取りST を短縮したりすることです。段取りレートを下げることも重要です。ロットサイズが小さくなって段取り回数が増えることは今後避けられないのですから、このような改善活動も進めて上手に段取りできるようにワザを磨いておかないと、ライバルに勝てなくなっていきます。なぜなら、ライバルは段取り改善を行っているはずだからです。
くれぐれも「小ロットだから営業が高く売ってくればいいのだ」「段取り改善はしなくても良いのだ」と誤解しないようにしてくださいね。収益改善は製販一体となって進めていくことが大切です。
今回は「段取り費」について解説しました。大事なことは、とにかく「原価計算書に別途切り出して見える化!」。たったこれだけで社内の営業姿勢が変わり、工場のコストダウンも進むようになってきます。ぜひ、皆さんの会社でも試してみてください。
次回のテーマは「間接費」です。ハッキリいって難所ですが、しっかり解説いたします。お楽しみに。