機械設計 連載「教えてテルえもん!3次元ツール習得への道」
2025.04.25
第11回 3次元モノづくりに関する資格取得について、実体験からのアドバイス
いわてデジタルエンジニア育成センター 小原 照記
おばら てるき:いわてデジタルエンジニア育成センター長。自動車内装部品の設計会社を退職後、岩手県北上市を活動の拠点に10年以上、3次元デジタル技術関連の人材育成、企業支援に努め、学生から求職者、企業まで幅広く指導し、3次元から始めるDX推進活動を続けている。同センター長のほか、3次元設計能力検定協会の理事も務める。
はじめに
3次元CADや3Dプリンタなどの3次元ツール習得に取り組む方々から、資格取得の相談を受けることが多くある。企業からは評価指標として定めたい、個人からは自己研鑽のため、学生からは就職に向けて資格を取得したいなど相談を受ける。資格の種類から取得するまでの取組み方などさまざまな相談を受ける中で、今回は主な資格試験の概要や具体的な取組み方について、筆者の経験や考え方を交えながら詳しく解説する。
3次元モノづくりに関する資格試験
3 次元モノづくりに関する資格試験にはさまざまあるが、今回は筆者が実際に試験を受け、保有している5 つの資格試験について実体験を踏まえて解説する。
1.「3次元CAD利用技術者試験」(図1)
「3次元CAD利用技術者試験」は、一般社団法人コンピュータ教育振興協会(ACSP:Associationfor Computer Skills Promotion)が主催する資格試験。2 級、準1 級、1 級とレベルがあり、2 級は学科試験(筆記試験)で、3次元CADの知識だけではなく、CAEやCAM、3Dプリンタ、CATなど、3次元モノづくりに関する知識を幅広く問われる。現在はCBT(Computer Based Testing)での試験となり、通年で全国にある専用のCBT試験会場で受験することができる。
準1 級、1 級は実技試験である。PCを持参するか、会場のPCを使い受験できる。使用できるソフトに特に制限はないが、試験の問題を解くことができる機能を有するソフトが必要である。問題の指示に従いながら3 次元モデルを作成し、体積や重心、距離などを解答していく。試験は毎年一斉に7 月中旬、12 月中旬の2 回開催され、回答はマークシート形式である。
資格取得までの勉強方法については、書店やECサイトなどで販売されている公式ガイドブックを入手し、そこに書かれている内容をしっかりと覚えることが合格に向けた第一歩である。公式ガイドブックは年度ごとに新刊が発売され、サンプル問題や昨年度の試験問題が掲載される。これらをうまく活用して出題傾向を把握しておくことが大事である。
筆者の実体験からアドバイスすると、2 級の学科試験については、公式ガイドブックに書いてあることをしっかりと覚えつつ、繰り返し過去問を解きながら理解度を確認していくとよい。また、学科試験ではあるが、実際に3 次元CADや3 次元ツールを操作していないとガイドブックに書いてある内容が頭でイメージしづらい部分もあるため、実際に3 次元CADや3 次元ツールを動かしながら書かれている内容に対する理解度を上げることが重要である。
一方、準1級、1級の実技試験は三面図の解読が非常に難しく、そこに時間をかけすぎてしまうと制限時間内に問題を解くことができない。対策として、過去問を解きながら三面図から3 次元モデルを作成する練習をしておくべきである。最初は制限時間内に解けないかもしれないが、練習を繰り返すことで徐々にスキルが身に付き、素早く3次元モデルを作成できるようになっていく。
2.「3Dプリンター活用技術検定試験」(図2)
図2 3Dプリンター活用技術検定試験の公式ホームページ画面
「3Dプリンター活用技術検定試験」は、先ほど紹介した3次元CAD利用技術者試験と同じく、一般社団法人コンピュータ教育振興協会が主催する資格試験である。造形方法や材料、後処理、データの取扱いなど、3Dプリンタを活用するために必要な基礎技術知識を身に付けることができる。試験は筆記試験で全国にある専用のCBT試験会場で受験できる。
資格取得までの勉強方法については、こちらも公式ガイドブックが販売されているので、その内容をしっかりと覚えることが合格するためには必要である。また公式ガイドブックの巻末には、サンプル問題とその回答が掲載されているので、試験の傾向を把握する際に役立つ。
筆者の実体験からアドバイスすると、前述のとおり、公式ガイドブックに書かれていることを確実に覚えておくことで合格は可能である。しかし、公式ガイドブックに記載されている内容だけを読んでもイメージしづらく覚えられない。実際に3Dプリンタを見たり、使ってみたりすることがオススメである。もし、手元に3Dプリンタがなければ、施設を見学したり、造形サービスを利用したりするなど、装置や造形物の実物をご自身の目で確認し、触れてみることでも理解を深めることができる。