機械設計 連載「教えてテルえもん!3次元ツール習得への道」
2025.10.27
第18回 3次元CADにおける「押し出し」をマスターしよう!
いわてデジタルエンジニア育成センター 小原 照記
おばら てるき:いわてデジタルエンジニア育成センター長。自動車内装部品の設計会社を退職後、岩手県北上市を活動の拠点に10年以上、3次元デジタル技術関連の人材育成、企業支援に努め、学生から求職者、企業まで幅広く指導し、3次元から始めるDX推進活動を続けている。同センター長のほか、3次元設計能力検定協会の理事も務める。
はじめに
3 次元CADを使用して機械設計を行う際に、頻繁に使用するコマンドとして「押し出し」がある。押し出しは、2次元のプロファイル(断面)を面直方向に平行移動させ厚み付けを行い、形状を作成したり、形状を削ったりする機能である。面直方向以外にも指定した方向に形状を作成できる3 次元CADもある(図1)。また、勾配角度を指定して形状を作成したり、押し出しの開始位置と終了位置を点や線、面などの要素を指定し、さらにオフセット量を設定できたりするものもある。押し出しは単純な機能ではあるが、奥が深く、使いこなせるようになることで、機械設計の効率を上げることができる。今回は3次元CADで機械設計を行ううえで重要なコマンドとなる押し出し機能について詳しく説明をする。
プロファイルについて
押し出しを行ううえでユーザーが指定する必要な要素として、「プロファイル」がある。プロファイルは、主に「スケッチ」という機能を使用して、押し出し機能で立体を作成したい2 次元の輪郭(断面)を作成する。例えば、平面の円を押し出して円柱にしたり、長方形を押し出して立方体にしたりする。基本的には、端点がつながっている閉じた2 次元の輪郭を作成し、押し出し機能で中身の詰まった立体形状(ソリッド)を作成する。端点がつながっていない開いた2 次元の輪郭を作成した場合、3 次元CADでは押し出しができないとエラーになるものもあるが、板厚を指定してソリッド形状を作成したり、厚みのない面形状(サーフェス)を作成したりすることができるものもある(図2)。
1 つのスケッチに閉じた領域が複数ある場合に、押し出しする領域を選択式で立体形状を作成できる3 次元CADもあるが、エラーで押し出しができない3次元CADもあるので注意してほしい。押し出しする領域を複数選択して立体形状を作成できる場合には、1 つのスケッチに例えば、正面から見た形状を描き込んで、押し出しする際に複数回に分けて、それぞれの閉じた領域を選択して押し出す量を入力し立体形状を作成していくことができ、2 次元CADで設計していたときと同様にスケッチを行うことができるが、できない場合には、押し出す領域ごとにスケッチを分けて作成していく必要がある。
押し出しの開始と終了位置について
スケッチ機能でプロファイルを作成する際には、平らな面を指定して2次元の輪郭を描いていく。3次元CADでの押し出しの基本は、プロファイルを作成した平らな面の位置から押し出しが開始される。したがって、設計上、押し出しを開始したい位置にプロファイルを作成する必要がある。
ただし、3 次元CADの多くは、押し出しを行う開始位置を変更できるようになっている。プロファイルを作成した位置からのオフセット量を入力して、開始位置を平行移動させたり、点や面を指定して開始位置を指示したりすることができるものもある。点や面を指定した位置からオフセット量を入力して、さらに位置を変更したり、面を指定する場合に、平らな面(平面)ではなく、曲面を指定することができるものもあり、曲面に形状を彫り込んだり、浮き出させたりすることができる(図3)。
押し出しを終了する位置についても同じことが言え、数値を入力して押し出す量を指示する方法のほかに、点や面などを指示し、オフセット量を入力できるものもある。また、貫通した穴をあけたいような場合に、形状があるすべての範囲まで押し出しを実行させる設定ができるものもある。この機能を使用することで、ヒストリ型のパラメトリック機能を搭載した3次元CADの場合、後から板の厚みを変更しても貫通した穴があくので、再度、押し出しの数値を変更する手間を省くことができ、設計業務を効率化できる。
押し出しの開始位置、終了位置をうまく設定することで設計業務の効率化が図れるが、うまく設定できていないと設計変更の際に意図しない形状になってしまい、修復に時間を浪費してしまうことがある。例えば、板の上の面からの高さが欲しいのか、板の下の面からの高さが重要なのかによって、押し出しを開始する位置や入力する距離が変わってくる(図4)。設計するうえで必要な値を押し出しのパラメータに入力することが重要である。
図4 押し出しの開始位置の違いによる設計変更の影響の例
押し出しの開始位置、終了位置に点や面などの要素を参照指定した場合、設計変更などにより指定した要素がなくなったり、エラーが起きてしまったりすると、参照指定して作成した押し出し形状も消滅したり、エラーが起きたりしてしまう。点や面などの要素を参照指定する場合には、設計変更などが起きても消滅したり、エラーが起きたりしにくい要素を指定した方がよい。例えば、XY平面やYZ 平面などの基準平面を指定したり、立体形状の点や面ではなく、基準平面からオフセットして作成した平面や座標入力して作成した点などを指定したりすることで回避できる。