機械設計 連載「教えてテルえもん!3次元ツール習得への道」
2026.06.30
第29回 3Dプリンタの7つの造形方式について
いわてデジタルエンジニア育成センター 小原 照記
3Dプリンタの選定基準
3Dプリンタは3次元データを積層造形により実体化する装置である。価格が数万円~数千万円、1 億円以上と価格帯があり、造形方式もさまざまあり、各機種で特徴があるため、導入の際は事前の情報収集が必須である。
すべての3Dプリンタに共通することは、3次元データのジオメトリをベースに薄い断面を生成し、それを積み重ねて立体を造形することである。機種によって異なることは、どのように材料を積層するか、何の材料を積層するか、どのようにサポート材を作製するか、取り除くかなどがある。
3Dプリンタの選定基準として、①造形サイズ、②造形精度・品質、③造形スピード、④材料、強度・剛性、⑤後処理(サポート材の除去など)・メンテナンス性、⑥コスト性などがある。これらをレーダーチャートにして比較してみるのもよいだろう。
図4 のレーダーチャートは、右側のレーダーチャート(B)で示した3Dプリンタと比べて、左側のレーダーチャート(A)で示した3Dプリンタは造形サイズで優れるものの、コストや品質、メンテンナンスなどに課題があることがわかる(図5)。
このほかにも、3Dプリンタの造形設定を行う「スライサー」と呼ばれるソフトウェアの機能性や操作性、使える材料の色や材質の種類の豊富さ、不具合や困ったときのサポート体制なども検討事項として挙げられる。自社で3Dプリンタを導入する際は、どのような用途で使いたいのかを明確にし、レーダーチャートを参考にして選定基準をつくり、さまざまな3Dプリンタの機種を比較検討するとよい。
3Dプリンタ活用に向けて
用途に応じて、3Dプリンタを使い分けるのが理想ではあるが、1 社で複数台の3Dプリンタを購入し、メンテナンスもしながら使用していくのは非常に大変であり、コストもかかる。機械設計で必要な精度や強度を求めていくと、どうしても何千万円もする高額3Dプリンタが必要になってくる。金属を造形する3Dプリンタとなると1億円を超えるものもある。量産目的など、製造設備として導入する選択肢もあるが、小ロット生産などであれば、自社で3Dプリンタを保有するのではなく、外部の造形サービスを利用する方法もある。
また、これまでの切削や板金加工などの加工方法にとらわれない設計思考が必要になってくる。3Dプリンタだから可能な設計形状を考え、より軽量化された剛性が高い魅力ある製品を生み出していくことも必要になってくるだろう。
3Dプリンタには、試作以外にもさまざまな活用用途がある。設計者が3Dプリンタの機能や特徴を理解し、試作ではなく製品製作に活用するようになることも、今後の企業の事業継続、そして未来のモノづくりのためには必要なことである。3Dプリンタを使っていくうちに、知識も増えていき、3Dプリンタや周辺ツールも進化していく中で、少しずつ活用の幅を広げていけばよい。
3Dプリンタを活用していくためには、3Dプリンタの特徴を理解した「DfAM(Design for AdditiveManufacturing:付加製造のための設計)」のスキルを身に付けることも重要になってくる。3Dプリンタだけでなく、ほかの3 次元ツールをうまく組み合わせた製品開発の知識やスキルが必須になってくるだろう。
3Dプリンタだけでつくるという発想を変えて、後処理(2 次加工)として切削加工を施して高精度なモノをつくるなど、技術を組み合わせて実現の方法を模索してみることも必要であり、従来工法と単純比較するとメリットを感じられない場合があるかもしれないが、モノづくりプロセス全体で比較して考えてみてもらいたい。