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機械設計 連載「B to B向け機械設計のポイント」

2026.03.30

第6回 デザインレビューで大切なポイント

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技術力向上カウンセリングオフィス 布施 裕児

実際のデザインレビューで大切なこと

1.顧客の状況と要求事項の確認

 本連載の「第4回 基本設計/基礎開発の段階で大切なポイント」で紹介したように、基本的には設計開発部隊でPDCAを早く回すことが大切である。しかし、商品をつくって量産移管した際に受け取る部署と共同でコンセプトを定め、要望事項についても優先順位を決めるべきであると紹介した。すべての関連部署との協議に移る前に、顧客の状況、コンセプト、優先順位づけは、共同で進めている部署と改めて確認をとることが大切である。

2.要素技術/開発目標の進捗状況

 設定した要素技術の開発状況、開発目標の進捗を確認し、技術的に突っ込んだ議論をすることになる。実際に顧客に評価をお願いする試作品をつくる前に、予察実験を行うか、プロト機で確認を行う必要があるかは、開発レベルに応じて決める必要があるため、ケースバイケースとしか言いようがない。しかし、予察実験、あるいはプロト機で問題点が見つかった場合は、改めて、予察実験で確認するのか、プロト機で確認できるまで先に進まないのかについてはよく協議を行い、確実に改善できるめどが立っているのであれば次のステージに進むことも大切である。

3.過去の不具合対策

 過去の品質上の不具合は現象がまとめられていても、真の原因にたどり着いていない場合、対策を打ったとしても不具合はなくならない。品質不具合の真の原因にたどり着くには、「なぜなぜ分析を最低5 回繰り返せ」とよく言われるが、物理化学的な現象による不具合の原因追究においては、「なぜ」がわからないのに「なぜ」を繰り返しても本当の原因には到達しない。

 図2 に、真の原因の追究方法のイメージを示す。大切なのは品質の不具合品の現物を徹底的に、定量的に調べること。また、1 つの品質クレームを深堀りするのではなく、同じような品質クレームをまとめて、帰納的な考えと演繹的な考えから、真の原因を追究することである。もう少しわかりやすく言えば、図3 に示したように、テレビのサスペンス番組の犯人捜しをイメージするとよい。
図2 品質不具合の原因追究(その1)

図2 品質不具合の原因追究(その1)

図3 品質不具合の原因追究(その2)

図3 品質不具合の原因追究(その2)

 具体的な例を紹介すると、筆者の場合、一辺が3 m近くで厚さが0.7 mmもない、非常に大きくて薄いガラスを運ぶパレットを設計開発していた。しかし、ある頻度で顧客が開梱するとガラスが割れているといったクレームが発生していた。いろいろな人から、見てきたかのように「ガラスの保持機構に問題がある」などと言われ、設計変更を要請されることがあった。

 筆者はまず、割れたガラスを徹底的に調べた。専門的な話になるが、返却されたガラス全体を観察することで割れが発生した起点がわかる。また、起点を含む破断面を顕微鏡で観察することでガラスが割れたときの応力がわかる。ガラスの強度は傷があると著しく下がることがわかっており、ガラスの加工品質に大きく依存する。

 しかし、実際に調べた結果、通常の加工品のガラスよりも大きな破壊応力がかかって割れていることが判明した。当初、ガラスの加工や梱包工程で何らかの傷をつけ、その傷が起点となり輸送中の衝撃で割れにつながったものと推定していたが、その可能性が否定されたことになる。また、輸送中の衝撃を想定した再現試験では、実際にガラスが割れるような応力はかからないことが判明した。輸送中の衝撃で割れないとなると、何が原因なのか、複数のクレームから割れの発生位置や4M(Man、Machine、Material、Method)を切り口とした要因とを比較し、仮説を立て、再現試験を行い、原因を特定することができた。結局、ガラスの保持機構の設計を見直すことなく解決できたのである。

 筆者が、ここで伝えたいことは、結局、本当の原因をデータをベースに定量的に議論することが大切であるということである。真の原因は、当初は思いもしなかったことである場合が多い。何を当たり前のことをと思われた方は、反面教師として改めて大切さを認識していただけるとありがたい。

4.特許戦略の明確化

 自社開発の要素があれば、特許対応は避けられない。最低限、他社の特許を侵害しているか、していないかの事前調査は必要である。ただ、特許調査は調査対象となる特許を選び出す時点で時間と手間がかかるのが通例である。デザインレビューの段階では最低限、設計開発者が調べられる範囲で侵害判定を行うとして、製品化するまでにより詳細な調査を進めるのか、そもそも特許出願をどうするのかといった現実的な特許戦略を明確にしておくことが大切である。

 特許は訴訟を起こされ負ければ被害は甚大であるが、実際に訴えられるまではリスクでしかない。どんなに調査をしっかりしても、特許は出願後公開されるまでは1 年半ブラックボックスである。想定されるリスクを考慮し、会社の規模にかかわらず、現実的な侵害判定や特許戦略を構築することが大切になる。

5.マージン評価

 機械設計としては信頼性評価のための加速評価、マージン評価が該当すると考えられる。製品や業界、顧客の要求によりいわゆるJIS 規格で規定されている、あるいは顧客から独自要請があるような場合は、その方法にのっとってプロト機などで評価した結果をレビューすることになるであろう。

 しかし、まったくの新しい製品の場合、JIS 規格に当てはまらないことが多い。その場合はやはり、設計開発者が加速評価/マージン評価をどうするか、結果を品質管理や品質保証にどう反映させるかを考える必要がある。その場合は、デザインレビューでは信頼性評価をどうするのか協議することが大切である。具体的に信頼性評価をどう考えればよいかに関しては、また改めて信頼性評価をテーマにした回(第9回を予定)で紹介したいと考えている。

6.量産性評価(品質/コスト/納期)

(1)品質に対するリスク評価

 第4回で、基本設計/基礎開発で過去の不具合対策、重大クレーム案件を想定し、FTA(故障の木解析)やロジックツリーの考えを参考に設計開発を行うことが大切だと紹介した。デザインレビューではその一連のリスク評価を改めてレビューし、まとめた仕様で対策が十分か、スペックは適切かなどを検証することになる。また、信頼性評価のように量産設計に持ち越しで評価するものについては、評価方法などもよく議論することが大切になる。

(2)コストに関して

 実際にコストを見積もることで検証を行う。そのためには試作品の図面の検図が終了していることが前提になる。コスト試算は不確定な部分があるため、設定した試算条件は明確にしておくことが大切である。

(3)納期に関して

 材料の調達に時間がかかるものがないか、組立工程の生産性がどうかが検討ポイントとなる。

まとめ

・設計開発部門でのデザインレビューの段階で一番大切なことは、完成形がイメージでき、量産もできると自信が持てることである。

・ 懸念材料はゼロにはならないが、それは実際に検討していけばよい。ただ、修正が必要となった場合のリカバリー策も含めて説明できることが大切になる。

・ 過去の不具合対策を設計に盛り込むには真の原因を明確にすることが大切である。見てきたような話や推定が前提になっていないかよく検証することが大切である。

・ 開発要素がある限り、リスクを考慮して現実的な侵害判定、特許戦略の構築を行うことが大切である。

・ 品質に関しては過去の不具合、想定した重大不具合案件への対応状況を検証していく。また、量産設計以降、設計開発が中心となって実施する信頼性評価など、評価方法も含めて検証することが大切になる。コスト、納期に関しては検図をベースとして見積もることになる。見積もるときに条件を設定して計算することになるので設定条件は明確にしておくことが大切である。

                        ☆

 次回は本格的な量産検証で大切なこと、特にデザインレビューの続きとして、開発計画書などでの関係部署との体制づくりにおいて大切なことを紹介していく。
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