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機械設計 連載「若手技術者戦力化のワンポイント」

2025.04.04

第10回 若手技術者があらかじめ決めた時間軸で期待する結果を出せない

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FRP Consultant 吉田 州一郎

よしだ しゅういちろう:代表取締役社長。東京工業大学工学部卒業後、Fraunhofer Instituteでのインターンを経て、同大大学院修士課程修了。繊維強化プラスチック関連の技術指導や支援を企業に行いながら専門性鍛錬を行う一方、技術者に特化した育成事業を法人向けに展開。自らの10 年以上にわたる研究開発と量産ライン立上げ、国内外企業連携によるプロジェクト推進の経験を踏まえ、繊維、機械、化学などの企業の研究開発現場での技術者育成の指導、支援に尽力。福井大学非常勤講師。
若手技術者戦力化のワンポイント
「若手技術者があらかじめ決めた時間軸で期待する結果を出せない」とき、「実験や評価計画を若手技術者に立案させ、必要に応じた修正をさせた後、承諾する」ことを常に行う

はじめに

 技術者を含む技術職に共通する思考の傾向の一つに、時間軸に関する意識の希薄さがある。特に研究開発など、何か新しいものの創出を期待される職種でこの傾向が強い。当然、じっくりと腰を据えて物事を考えることは技術者にとって重要だが、時間は有限であるうえ、昨今の働き方改革という掛け声で短縮が続く労働時間を考えれば、時間をぜいたくに使うことは難しくなっているといえよう。

 このような状況で技術者を部下に持つリーダーや管理職が求めることは「計画通りに技術業務を推進すること」だろう。あらかじめ結果が出るために必要な期間がわかっていれば、それを念頭にチームである技術者(たち)の工数を配分することが可能となる。このやりくりができれば、限られた時間の中でも停滞させることなく技術業務を進めることができるのだ。

 しかし、既述の傾向ゆえ、技術者の中には時間軸を意識することができない者もおり、リーダーや管理職が想定する時間内に期待される結果が出ない状況に直面することがある。これを挽回するには現場の技術者にとって負担が増すことはもちろん、その指示とフォローを継続し、業務バランスを取りながら工数配分をしなければならないリーダーや管理職の負荷が大きくなる。これは現場が疲弊する典型例の一つではないだろうか。

 このような状況を回避するには、若手技術者のうちから、あらかじめ決められた時間軸で期待される結果を出す「習慣づけ」を徹底することが肝要だ。今回は若手技術者に、あらかじめ時間軸を意識させたうえで、期待する結果を出させるために必要な育成方法を考える。 

若手技術者戦力化のワンポイント

 「若手技術者があらかじめ決めた時間軸で期待する結果を出せない」とき、「実験や評価計画を若手技術者に立案させ、必要に応じた修正をさせた後、承認する」ことを定常業務としてほしい。

若手技術者は別の人間であることが大前提

 指示を出すリーダーや管理職と若手技術者は“別の人間”である。この当然のことが日々のコミュニケーションでは忘れられがちだ。

 リーダーや管理職は何かしらの業務指示をする際、

・具体的な業務の進め方 
・欲しい結果

の2 点について、明確なイメージを持っている。このイメージを持った状態でリーダーや管理職は若手技術者に指示をするため、どれだけ丁寧に説明したとしても伝える側の伝達情報不足が生じる。これは今回の課題である、若手技術者があらかじめ決められた時間軸で、期待される結果を出せない原因の一つとなり得る。

 しかし、より本質的、かつ大きな原因は、若手技術者とリーダーや管理職は完全に別の人間である事実による。伝達情報不足があるのは、ある程度仕方ないが、これについては意識をできるリーダーや管理職も多い。これに対し、指示を出す相手の若手技術者が「別の人間」であることは忘れられがちなのだ。

 別の人間であることの認識が薄れるとはどのようなことか。簡単に言ってしまえば「ここまで伝えれば、ここまでわかっただろう」という、楽観的理解予想の発生だ。この楽観的理解予想が若手技術者とリーダーや管理職間の認識のずれを生じさせる。

指示の文言を暗記することより、具体的な技術業務推進イメージが持てるかが重要

 リーダーや管理職の中には、指示内容を口頭で話させて相手に伝わったかを確認しているかもしれない。これは情報伝達精度を高める効果があることから、実行する方々はコミュニケーションに関する意識が高いと考える。

 しかしながら、例えば業務指示の文言の一つひとつを暗記したことと、業務指示内容を理解したことは「別物」だ。本当の意味で業務指示内容を理解できるとは、「求められる結果の画像が鮮明であり、かつそれを得るために、必要な技術業務内容やそれに付随する技術業務のイメージを持てること」にほかならない。リーダーや管理職は技術業務の実践経験を有するため、得たい結果と技術業務内容に明確なイメージを持っている。しかし、同じイメージを実務経験の浅い若手技術者が持つことは極めて困難だ。リーダーや管理職は、当人たちが無意識に画像化している結果や技術業務内容のイメージが、若手技術者には浮かんでいないことを念頭に指示を出すことが求められる。

若手技術者に最終締切りの重要性を理解させるのが時間軸理解に大変効果的

 ここから、若手技術者をあらかじめ決められた時間軸で、求められる結果を出させるにあたり、リーダーや管理職が行うべきことについて述べていきたい。

 まずは時間軸の理解だ。時間軸を理解させるには、特に最終的な締切りを意識させて計画を立案させることが重要である(図1)。最終的な締切りとは、必ずこの日までに求める結果を出す縛りとなる。この締切りについては、リーダーや管理職から若手技術者へ明確に伝えなければならない。締切りの死守は、企業に勤務する技術者にとって常識であることを徹底理解させることが望ましい。
図1  時間軸の理解では、最終的な締切りを意識した計画を立案させるのがポイント

図1  時間軸の理解では、最終的な締切りを意識した計画を立案させるのがポイント

最終締切りを死守するための計画を若手技術者に考えさせる

 もう1 つのポイントは、計画を若手技術者に考えさせることだ。若手技術者に立案させる、という表現は、若手技術者が能動的に計画を立てることを意味している。若手技術者も遅かれ早かれ自分で時間軸を決め、それに基づいて技術業務を推進することが求められる。この力量は一朝一夕で身につくものではないため、若手技術者のときから自分で立案、提案するという実践を繰り返すことが肝要だ。

 既述の最終締切りを死守するため、実験や評価をどのような手順で進めるか、そして何と何を並行して進めるかという技術業務設計が、計画立案に該当する(図2)。
図2  技術業務をどのように進めるか“具体的”な設計を行うのが計画立案の本質

図2  技術業務をどのように進めるか“具体的”な設計を行うのが計画立案の本質

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