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機械設計 連載「若手技術者戦力化のワンポイント」

2025.04.04

第10回 若手技術者があらかじめ決めた時間軸で期待する結果を出せない

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FRP Consultant 吉田 州一郎

若手技術者立案の計画をリーダーや管理職が丁寧に修正する

 死守すべき締切りを明確化する一方、そこに至る道のりを若手技術者に考えさせることは、若手技術者の技術業務設計能力向上の特効薬だ。
 若手技術者から出てきた計画を見た際、多くのリーダーや管理職が持つと推測する感想がある。それが、「計画が抜け漏れだらけ、もしくは詰め込みすぎで最終締切りは死守できない」だ。この時点で、リーダーや管理職は自らの技術業務推進計画のイメージと、若手技術者が見えている像の違いを理解することになる。

 違いを理解したら、それを最小化する“修正”をリーダーや管理職は行ってほしい(図3)。若手技術者も一度自分で考えた計画のため、リーダーや管理職の修正に伴う指摘や助言を理解しやすいだろう。若手技術者の計画立案スキルを高めるにあたり、これほど効率的かつ効果的な指導方法はないと言っても過言ではない。
図3  若手技術者立案の技術業務推進計画を修正し、最終締切りを死守できる現実的な計画へと進化させる

図3  若手技術者立案の技術業務推進計画を修正し、最終締切りを死守できる現実的な計画へと進化させる

 修正は技術業務内容を理解していない若手技術者を育成することはもちろん、技術業務推進計画を「現実的」なものにする狙いがある。

修正が終わった計画はリーダーや管理職が承認する

 修正が終わり、リーダーや管理職から見ても問題ないと考えられるレベルまで計画が出来上がったとする。ここで終わりではなく、リーダーや管理職はその計画を“承認する”ことが求められる。これには2つの狙いがある。

 1 つ目は若手技術者に立案、確認、承認という技術業務の基本プロセスを理解させることだ。仕事は一人でするものではなく、上司に適宜相談しながら確認をしてもらい、最終的には承認してもらわなければ進まないことを理解させる目的が含まれている。能動的に動けるようになるには、逆にこのようなチーム運営の基本フローを理解することが前提条件なのだ。

 もう1 つがリーダーや管理職に継続フォローの意識を持ってもらうことだ。計画の修正まで終わればリーダーや管理職の手は離れ、実務は現場の若手技術者を含む技術者たちが進めるという姿勢では、業務推進遅延や想定外の事態が生じたことに気がつきにくくなる。進捗状況を把握できないからだ。承認するという作業は、それを進めることに対して同意したのと同じであり、同意した以上、リーダーや管理職はその業務進捗を管理し、適宜フォローする義務が発生する。この義務発生をリーダーや管理職も理解することが必要だ。

得たい結果は適宜図や絵を用いながら若手技術者に理解させる

 次に、得たい結果についても触れておきたい。計画に基づいて最終的に欲しい結果、いわゆる成果物についてだ。得たい結果について、既述のとおりリーダーや管理職は明確なイメージがある。計画と同様、求められる結果の説明の後、そのイメージをリーダーや管理職相手に若手技術者が説明する場をつくってほしい。リーダーや管理職が持つイメージと比較し、やはり大きな隔たりが若手技術者との間に存在することを感じるだろう。

 隔たりを埋めるのに効果的なのが活字に加え、「図や絵」の活用である(図4)。手書きでかまわない。ホワイトボードや白紙に、リーダーや管理職が欲しいものを描写すればいい。例えば最終的に欲しいグラフやチャートであれば、縦軸と横軸を何にするのか、表であれば最初の行と列にどのようなパラメータを入れるべきか、さらには顕微鏡で撮影した画像が欲しいとなればどの部分をどのアングルで撮影してほしいか、といった議論がこれに該当する。
図4  求められる結果のイメージは図や絵を活用すると若手技術者も理解しやすい

図4  求められる結果のイメージは図や絵を活用すると若手技術者も理解しやすい

 以上のとおり、リーダーや管理職が期待した結果を得るためには、図や絵を使ったコミュニケーションが効果的である。

計画と結果のイメージのすり合わせは定常業務まで落とし込む

 今回紹介した計画と結果に関する、リーダーや管理職と若手技術者間のイメージのすり合わせは一過性で終わらせず、定常業務に落とし込むことが大変重要だ。最初は技術業務が実際に始まるまで時間がかかるため、もどかしいと感じるリーダーや管理職も多いと思う。しかし、その焦りに耐えながら継続して続けて習慣化することこそが、結果的には技術業務の後戻りを抑止し、若手技術者の自立を促すことを理解してほしい。

 リーダーや管理職にとって、今回紹介したことを定常業務にすることが1つの目標になる。

まとめ

 若手技術者があらかじめ決められた時間軸で、期待された結果を出すためには、以下の点を意識してリーダーや管理職がイメージ合わせを行うことが特に重要であることを述べた。

 1 .最終締切りを伝えたうえで計画を若手技術者に立案させ、それの修正・承認を行う。
 2 .欲しい結果図や絵を用いてリーダーや管理職から若手技術者に説明する。

 若手技術者に指示事項が伝わらなかった場合、リーダーや管理職は強い不満を覚えるだろう。しかし、相手は異なる人間であることを改めて認識し、リーダーや管理職の考えていることの多くは、実務経験の浅い若手技術者では思い描けないことに配慮し、その現実を許容するゆとりが必要だ。

 指示待ちの技術者を望むリーダーや管理職はいないだろう。能動的に計画を立案し、それを意識しながら求められる結果を得ることができる若手技術者に育てるため、できるだけ早い段階で今回紹介した一連の取組みを開始し、そして粘り強く継続することで定常業務にしてほしい。
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