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機械設計 連載「若手技術者戦力化のワンポイント」

2026.04.07

第25回 若手技術者に指導される新人技術者のスキルが上がらない

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FRP Consultant 吉田 州一郎

若手技術者への新人技術者育成に向けた指示のポイント 

 若手技術者が新人技術者育成に取り組むことで、結果的に両者の成長を促すには、どのような指示が適切かを述べる。ここでは“役割の明確化”、“報告義務”、“ホットライン”の3点が重要だ(図3)。次項以降でそれぞれについて概要を述べる。なお、ここでの技術者は“研究開発”を主たる業務とすることを前提としたい。
図3  新人技術者育成において若手技術者に出す指示のポイント

図3  新人技術者育成において若手技術者に出す指示のポイント

“役割の明確化”には技術テーマ、雑用、モチベーション向上の3点を入れる 

 役割の明確化は、新人技術者にどのようなことをやってもらいながら成長を促すかについて、その指導者である若手技術者に説明することである。ここでは技術テーマ、雑用、モチベーション向上の3点を盛り込みたい(表1)。
表1  若手技術者に理解させたい新人技術者の役割関連項目

表1  若手技術者に理解させたい新人技術者の役割関連項目

 技術テーマはOJTを通じ、新人技術者が技術者の普遍的スキルを高めるための技術業務の位置づけとなる。新人技術者は主担当ではなく、若手技術者が主担当で新人技術者が副担当となる技術業務が該当する。技術テーマはあまり長期的なものではなく、短期で完了するものが良く、また納期や目的がはっきりしていることが前提となる。若手技術者は本点について、目的と納期を意識しながら新人技術者をうまく動かし、時に連携し、技術テーマの完遂を目指す。 

 雑用は言い換えると定常業務だ。技術者とはいえ、日々技術業務だけに注力すればいいというわけではない。購買や発送の手続き、各種連絡、議事録作成など、技術とあまり関係がなく、かつ定常的に発生する業務は一定数存在する。これをあらかじめ新人技術者に業務として理解させ、また若手技術者に指導の必要性を把握させることは、新人技術者育成において必須である。これをあらかじめ若手技術者を通じて新人技術者に伝えることは、
 「自分はこのような雑用をやるために入社したわけではなかった」
 といった新人技術者が感じることの多い後ろ向きな感情の低減につながる。 

 モチベーション向上は、新人技術者の専門性至上主義を利用したものと言える。技術テーマの推進ではあまり力になれない、そして雑用については楽しみがないとそれぞれ感じるのが新人技術者の本音だろう。そこで実際に戦力になるかならないかは別として、新人技術者の興味のあること、または強みと考えていることに関連する業務をあてがうことで“自分の専門性は活かされている”と実感させることが目的だ。これは新人技術者のモチベーション向上に直結することであり、技術者育成を継続させるために不可欠だ。 

 これら3 点について、リーダー・管理職と新人技術者の指導者である若手技術者の間で整合をとった後、若手技術者から新人技術者に伝える。

“報告義務”の際は指導者である若手技術者に対して強制的に新人技術者育成の状態を短時間で報告させること

 報告義務の目的は、新人技術者の育成に取り組む若手技術者からリーダーや管理職に対し、以下の点を報告させることにある。
 
 ・新人技術者ができたこと
 ・新人技術者ができなかったことや課題
 ・ リーダーや管理職から支援や指示が必要なこと
 
 一般にこの手の報告では、課題や問題点から入ってしまうが、指導者として必要なのは“できたことや成果”を抽出し、それを上に報告することだ。特に技術者はこのような視点が欠けがちであり、それゆえ、技術者育成においてネガティブな視点で物事を捉え続けることで、指導する側もされる側もモチベーションが下がりやすい。まずは新人技術者が若手技術者から見てできていることから報告させる。 

 そのうえでできなかったことや課題を報告させる。これは多くの若手技術者もできると思う。加えて、リーダーや管理職から支援や指示が必要と思うことについて報告させる、もしくはヒアリングすることがリーダーや管理職に必要な姿勢だ。 

 この報告は“強制”にしてほしい。推奨するのは週に1 回程度だ。ただし、これを強制的に続けるには“短時間”であることが不可欠で、目安は10 分程度としてほしい。短時間で既述の3 点を報告させるには、報告する若手技術者側もあらかじめ報告内容をまとめ、そして整理しておくことが不可欠であろう。このような緊張感が報告業務では必要である。そして短時間で必要な報告をさせることは、リーダーや管理職が不必要な打合せ時間を割くことを回避することに加え、若手技術者自身にとって技術者の普遍的スキルの醸成にも役立つ。

“ホットライン”により若手技術者はいつでも相談できる状態にする 

 報告義務を課す一方、リーダーや管理職は何かあったときにすぐ相談できるよう、若手技術者との間でホットラインを準備しておいてほしい。若手技術者は、リーダーや管理職に対して“忙しそうで話しかけにくい”といった躊ちゅう躇ちょや遠慮があるのが普通であるため、日頃から雑談でもいいのでコミュニケーションをとることで、若手技術者から話しかける心理的障害を低減させることが肝要だ(図4)。
図4  リーダーや管理職は指導者として歩み始めた若手技術者と継続的なコミュニケーションをとり、会話を始める心理的障害を下げることが重要

図4  リーダーや管理職は指導者として歩み始めた若手技術者と継続的なコミュニケーションをとり、会話を始める心理的障害を下げることが重要

まとめ 

 新人技術者の指導者に若手技術者をあてがうことは、技術者育成の観点でいえば妥当である。若手技術者は自分よりも経験の浅い新人技術者を見て、異なる視点から物事を見直す想像力を鍛錬でき、同時に新人技術者も年齢の比較的近い若手技術者だからこそざっくばらんに話しやすい部分もあるだろう。指導経験も浅い若手技術者の指導法は物足りないものも多く、新人技術者のスキル向上が遅いこともあって、リーダーや管理職はそのやり方に口を出したくなる。しかしここで育成しているのは新人技術者だけでなく、若手技術者も含まれることを念頭に新人技術者への直接指導や、新人と若手を一緒くたにした指導は控えてほしい。 

 それよりもリーダーや管理職は、若手技術者には新人技術者に果たしてもらいたい役割を示したうえで、指導状況に対する報告を義務付ける一方、若手技術者からの相談を常に引き受ける門もん扉ぴを開いておくことが肝要だ。リーダーと管理職から信を得た若手技術者の指導は、結果的に新人技術者の成長を促進するだろう。
参考文献
1 )吉田州一郎:第23 回 欧米流のジョブ型雇用と異なるアプローチで技術チームの戦闘力を上げたい、機械設計、Vol. 69、No.8(2025)
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