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型技術

2024.10.07

企業と加工メーカーをつなぐ「ビジネスマッチング」事業が拡大加工技術の研鑽と新規事業の発展にも貢献―燕三条地場産業振興センター

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 燕三条地場産業振興センターが取り組む「ビジネスマッチング事業」が好調だ。同事業では、金属加工集積地、燕三条地域が有する加工技術について熟知した選任スタッフが、加工業者を探す企業のニーズをていねいに聞き取ったうえで最適な加工メーカーを紹介してくれるというもの。また紹介だけではなく、実際に受注し、試作を経て量産にこぎ着けるまで、加工メーカー・発注企業双方をサポート。「頼んでよかった」、「受注できてよかった」と双方が思える取引の実現を目指している。2021 年の10 月18 日にホームページサイトをリニューアルして以降はさらに問合せやマッチング実績も増加しているという。

ミスマッチを防ぐため~最適な技術と量産能力のマッチングを

 ビジネスマッチング事業では今までに1,400 件以上のマッチング実績がある。サイト経由で来る問合せは製造業関連メーカーだけでなく食品・半導体・アウトドア・建築・化学・医療関連やアパレル関連など多様だ。

 「事業には現在、燕三条地域の764 社がマッチング対象の加工メーカーとして登録をしていただいています。プレス、板金、鍛造、鋳造、塗装、めっきなど幅広い加工メーカーが狭い地域に、しかもそれぞれが協業体制を築いているのも、古くからモノづくりに取り組んできた地域の強み。1 つの製品に幅広い加工が必要な場合もすべて近隣でまかなえてしまいます」。

 そう話すのは、ビジネスマッチングの専任スタッフである山家攻氏だ。山家氏は技術士(金属部門)・中小企業診断の国家資格をもち、その専門知識を活用しながらさまざまなマッチングを実現させている。前述のように燕三条地域には多種多様な加工メーカーが集まっており、また地域の知名度も高い。しかし一方で、それらの加工メーカーのうち1,200 社あまりが従業員4 名以上の企業規模のため、各社が自社の技術を広くPR するのは難しく、また探す側としても「適切な1 社」に巡り会うのは困難だ。

 「せっかく新規のお客さんから問合せをもらっても自社が保有していない加工機が必要だったり、生産数が規模に合わなかったりというミスマッチが頻発し、双方が疲弊してしまいがち。その点、ビジネスマッチングでは、燕三条地域の各加工メーカーのキャパシティや加工能力、周辺の協業状況などの情報を精査したうえでマッチさせますので、スムーズな受注につながります」(山家氏)。

 ホームページリニューアルの成果 2021 年でのホームページリニューアルではマッチング事例とともに実際に活用した企業の「お客様の声」などを掲載。実際の量産に至るまでのフローとともに事業の利点やサポート体制をわかりやすく紹介している。 

 「リニューアルをした2021 年は33 件の問合せ件数でしたが翌年の22 年には51 件と約1.5 倍に伸びました。23 年は57 件の問合せがあり、さらに多くの件数の問合せがありました。また中には成約額に関して最大1,400 万円以上(年間見込額)の案件もあり、今後も積極的にPR しビジネスマッチングの拡大に努めていきたいと思います」(山家氏)。 

 ちなみにビジネスマッチング事業では山家氏をはじめとしたエキスパートだけではなく、3D測定レーザー顕微鏡や3D スキャナ、3D プリンタ、蛍光X 線分析装置などの設備も保有しており、ビジネスマッチング目的の場合は無償で対応しているため、材質・粗さ・形状などが不明な問合せに活用し、問合せ先からはとても喜ばれているという。前述のように問合せの企業の幅は広く、相談内容の情報量には幅がある。すでに詳細な図面まで出来上がっているケースもあれば「こんな色・こんな形のものをつくりたい」といった、おおよそのイメージのみといったケースも。専任スタッフのヒアリングや、設備を活用した分析、そして加工メーカーとのすり合わせを経て具体化していった事例もあるという。

伝統工芸関連の依頼に金属の新たな可能性~土田工業㈱

 そんなさまざまな検討とすり合わせを経て量産を実現した事例をもつのが土田工業㈱だ。 同社は板金加工・プレス加工の高い技術を有し、特に「金属什器」の設計・製造を得意としている。金属什器は外観もさることながら精度・強度も重視されるため、ていねいで確実な加工技術が要だ。2023 年には最新のファイバー溶接機も導入。アルミや真鍮の溶接も可能で精密機械関連の受注に活用していく見込みだ(図1、図2)。 
図1 得意とする溶接作業。特別な機械を揃えるのではなく汎用機械と技を合わせるのが同社の持ち味

図1 得意とする溶接作業。特別な機械を揃えるのではなく汎用機械と技を合わせるのが同社の持ち味

図2 ファイバレーザー溶接機

図2 ファイバレーザー溶接機

 「当社技術として、『手溶接』のクオリティも評価いただいているものの一つ。今回のファイバレーザー溶接でもあえて手溶接での活用を進め、差別化を図っていけたら」。 

 そう話すのは同社の土田淳平社長だ。同社はビジネスマッチング事業のサイトに事例としても掲載されている観光列車「えちごトキめきリゾート雪月花(せつげっか)」の内装・外装の金属製品やオブジェの加工を担当。山家氏にとってもマッチング先として頼りになる1 社だ(図3)。
図3 (右から)土田社長と山家氏

図3 (右から)土田社長と山家氏

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