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型技術

2024.10.07

企業と加工メーカーをつなぐ「ビジネスマッチング」事業が拡大加工技術の研鑽と新規事業の発展にも貢献―燕三条地場産業振興センター

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微細加工の極地未来をつなぐ医療器具への挑戦

 そのほか、同社には最先端の医療器具の量産の実績も。例えば、ある形成外科器具なども同社の技術力を発揮した事例だ。いわば骨を切る極小ののこぎりのようなもので、刃の部分の長さ15 ~ 30 mm。既存の器具を参考にしながら、依頼側の要望をくんでエーワン・プリスで図面から起こしたという。実は、並んだギザギザの歯の部分が真上から見ると互い違いになっているように少し角度を付けて曲げている。これは「あさり曲げ」と呼ばれるのこぎり独自の歯の構造。市販ののこぎりを購入し、その構造を調べてそのまま活かしたのだという(図5)。 

 「この独特の曲げ方のおかげで発熱を抑えることができるんだそうです。歯の部分の成形はワイヤ放電加工やファイバレーザー溶接で接合し、曲げはプレス加工。またのこぎり部分と軸の部分は素材が違うため熱膨張率が違う。溶接にも少々コツが必要でした」(遠藤社長)。
図5 形成外科手術用のこぎりを上から撮影。「あさり曲げ」の様子が見て取れる

図5 形成外科手術用のこぎりを上から撮影。「あさり曲げ」の様子が見て取れる

 同社は実はもともと医療関連器具の製造・修理のノウハウを有しており、遠藤社長は燕市の商工振興課が運営する「燕市医療機器研究会」の会長も務めている(図6)。そして遠藤社長は実はこの医療機器に関して大きな次の目標も見据えている。 

 「実は現在治療法が確立しつつある『鼓膜再生法』という治療に使われる『鼓膜切開刀』(図7)というものがあります。先端の刃長は3 mm で極細の槍のような形状になっているのですが、この刃付けは現状では私しかできません。これをなんとか若手の職人に伝承して会社全体の技術としたい。医療機器産業を『地域の産業』にしていきたい」(遠藤社長)。 

 職人の手に依存する「技能」を伝承するという取組みは全国で行われているが、課題も多い。しかし、センターも協力をしながらなんとか今年の夏頃には一定の成果が出せるよう現在センター主催の技能伝承研究会でのプロジェクトが進行しているという。ビジネスマッチングを含め、さまざまな挑戦は現場の負担にもなり得るが、遠藤社長は「挑戦でしか進まない、得られないものは山ほどある」という。 

 「自社が何かに取り組むとそれに他社を巻き込んでいける、というのがこういった挑戦の醍醐味。地域が新しい仕事や加工に挑戦していく入り口に当社がなれるならありがたいですし、誇らしいことです」(遠藤社長)。
図6 エーワン・プリスが修繕を手がけた眼科用の極細のピンセット。先端がしっかりかみ合うよう加工が施されている

図6 エーワン・プリスが修繕を手がけた眼科用の極細のピンセット。先端がしっかりかみ合うよう加工が施されている

図7 鼓膜切開刀。10種類がある

図7 鼓膜切開刀。10種類がある

ほかの地域との協力・波及も目標に

 ビジネスマッチングへの問合せが増える中で内容は難しく、また複合的なものも増えてきた。最近では燕三条地域に限らず、ほかの地域の企業についても情報を収集し、相談内容によってはそちらに案件をつなげることもあるという。せっかくビジネスマッチングのサイトにまでたどり着いてくれたユーザーのニーズをできるだけ満たしていきたい、という思いだ。 

 「難しい案件が増え、1 件1 件にかかる時間も増えています。もちろん大変な部分もありますが、専任スタッフや分析設備があるセンターだから対応できているところもあります。将来的には“困ったときの燕三条地域の駆け込み寺”として、日本全国に付加価値の高いビジネスマッチング事業の効果を波及させていけたらうれしいです。これからも地域企業の皆さんの協力を得ながら、どの案件にも真摯に取り組んでいきたいと思います」(山家氏)。
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