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型技術

2024.10.07

企業と加工メーカーをつなぐ「ビジネスマッチング」事業が拡大加工技術の研鑽と新規事業の発展にも貢献―燕三条地場産業振興センター

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めっきの種類も寸法も謎‼職人の必需品を再現に挑戦

 そんな同社に今回持ち込まれた事例もまた「一風変わった」ものだった。依頼先はなんと京都の「絞り染め」メーカー。土田社長も「金属加工がどう関わるのか」と不思議に思ったそうだが、実は絞り染めには、ある小さな金属製品が欠かせない道具として存在していたのだ。 

 「絞り染めで使うある工具が金属製で、これをつくってくれるメーカーを探している、という問合せでした。今までは愛知県の自動車部品関連の企業が製造をしていましたが廃業し困っていたのだそうです」(山家氏)。 

 ビジネスマッチング事業にたどり着くまであらゆる企業に問合せをしたが製造先を見つけることができなかったという。この時点で工具の在庫はわずか10 個。早急につくり始める必要があったが、この工具に関する図面やデータはゼロ。現在使っている実物から、使われている金属やめっきの種類、寸歩などを割り出す必要があった。
 まずはセンターの保有する蛍光X 線分析装置を使用して素材は鉄、めっきはニッケルクロムめっきであることを突き止めた。また寸法は土田社長が自ら一つひとつ測り、図面に起こしていった。工具はパイプ形状で曲げ、つぶし、穴あけ、旋盤による穴あけ、テーパ加工、切削など小さいながら多くの加工が施されている。使い込まれたものである以上経年劣化や汚れの付着もあるため、正確な寸法を出すのは少々苦労した。なにせ在庫数が少ないため、納期は「早ければ早いほどうれしい」というのが先方の正直な要望。2023 年11 月に土田工業に話が入ってから3 週間後の年末には試作品を手に京都に向かった。 

 「使い方が特殊なこともあり、実際に使用するところを見て微調整する必要がありました。また職人の方から『もっとこうしてもらえたら』という意見もあり穴あけの数や、先端の穴の径もより小さくするなど改良も行いました」(土田社長)。 

 ニッケルクロムめっきは近隣の協力会社が担当。従来のものより厚みのあるものにし、滑りと耐久性もアップした。短い納期ではあったが無事300 個を納品。先方にはずいぶん喜んでもらえ、また別の器具の製造・開発の依頼も来ているという。 

 実は、この事例に限らず伝統産業で使われる器具などは生産してくれる企業の廃業などが相次ぎ、困っている工房や企業は多いという。金属部品は製造現場にしかないという思い込みがあった、という土田社長。 「苦労しましたが、伝統産業という新たな求めてもらえる場所を発見できた、という喜びがありました。ビジネスマッチングは毎回挑戦ではありますが得るものも大きい」(同)

金型づくりの技術を集結しての粉体プレス~㈲エーワン・プリス

 同じくビジネスマッチングで大きな挑戦と発見をしたのが㈲エーワン・プリスだ。さまざまな難しいビジネスマッチング案件を形にしてきた燕市内のプレス金型メーカーで、例えば本来はプレス金型の大敵である「粉体」のプレス成形などは印象的な一例だという。 

 「粉体をプレスする、といっても成形をするわけではなく“一時的に”固形にしたいというもの。なかなか条件が多かったので難しかったですね」。 

 そう振り返るのは遠藤慎二社長(図4)。粉は数種類の金属粉を混合したもの。工程の中で搬送する際、粉の状態ではこぼれたり、もれたりと扱いが難しいためプレス加工で強い圧を掛けてタブレットのような固形にしてほしい、という依頼だったのだ。一見簡単なように聞こえるが“一時的に”というのが難所だった。 

 「固めてしまって終わり、ではないので結合材のような『粉体の性質を変えるような何かを足す』ことは許されません。また金属の粉ですからいろんな所に入り込めば金型や機械にもダメージがあります。検討事項は多かった」(遠藤社長)。 

 センターは一般的な粉体プレスに使用される金型の定石や選択されやすいコーティングの種類、プレスする際の圧力など情報をできる限り集めて同社に提供。これらの情報は金型の仕様や加工条件を割り出していくのに役に立ったという。 

 「せっかく固めても金型から外す際に壊れてしまっては意味がない。力を掛けずにきれいに金型から外れるようにコーティングと表面処理の選択にはこだわりました。また、油圧の仕組みを活用してプレスした後、固形化した粉体が浮かび上がってくるような仕組みも仕込みました。金型屋の技術はフルに活用しましたね」(遠藤社長)。
図4 遠藤慎二社長

図4 遠藤慎二社長

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