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型技術 連載「巻頭インタビュー」

2025.05.19

独自の工具設計・製造技術を礎にこだわりの小径ドリルを世に提供する

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㈱イワタツール 代表取締役社長
岩田昌尚氏

Interviewer
㈱C&G システムズ
商品企画統括部 統括部長
小泉 哲氏

 100 年企業への仲間入りを目前に控えるイワタツール(名古屋市守山区)は、日本で初めてセンタードリルの国産化に成功した切削工具メーカー。長い歴史の中で独自の開発理念のもと、「SPセンターシリーズ」や「トグロンハードシリーズ」などの高性能工具を世に送り出してきた。同社の岩田昌尚社長に小径ドリルへのこだわりや製品開発の実際について話を聞いた。

小泉

まず創業からの御社の歴史をお聞かせください。

岩田

1928 年に私の祖父が創業しました。祖父は小学校卒業後すぐにオークマで働きだして、そこでお金が貯まるとまた学校に行って勉強して、しばらくするとまた働いてということを続けながら学校へ通ったそうです。そういう経験を経て、28 歳でこの会社を立ち上げました。当時、今も当社でつくっているセンタードリルを初めて国産化しました。いまだにセンタードリルは当社製品の大きな柱の一つです。ちなみにセンタードリル以外にベルトサンダーも、当社が日本で初めてつくり始めたそうです。
まだ戦前の話で、海軍の管理下で戦闘機の部品などさまざまなものを製造していました。戦後は自動車部品の仕事もやりました。ただ、やはり自社製品に絞ろうということになってベルトサンダーとセンタードリルを中心に製造を行い、そのうちにベルトサンダーは他社から安いものも出てきたので切削工具に注力することにしました。今から30 年近く前からセンタードリル以外に超硬工具や特殊なドリルをやり始めて、今に至るという流れです。20 年ほど前からはタイや中国へ海外展開も始めています。

いろいろとやられてきたのですね。センタードリルだけで言うと国内シェアはどのくらいですか。

昔からある規格上のセンタードリルが狭義のセンタードリルと言えますが、一方でスポットドリルなどもセンタードリルと言われるので、それを入れるか入れないかで変わります。昔からのセンタードリルに限ればたぶん10 %もないくらいだと思いますが、もみつけなども含めた広義のセンタードリルという意味では、少なくとも当社が最も強みだと捉えている1 mm 以下の小径で言えば国内トップシェアを保っています。

小径ドリルは御社の得意分野ですよね。小径ドリルにこだわる理由といったものはありますか。

センタードリルや面取りドリルに関しては全サイズやりますので小径に絞っているというわけではありません。ただ、ろう付けやインサート物はやっていないのでソリッド工具になります。ソリッド工具はおのずと小径になりますよね。なので、結果的に小径を得意としているという形になっています。また、最近は機械や工具の精度が上がっているので、部品加工などで精度が十分に担保できる場合はわざわざもみつけはやらない。そのため、センタードリルの需要は全般的に減っています。ただ、小径の場合は精度要求が厳しくなり、小径になればなるほど十分な精度が担保できなくなるので、センターをとって精度を安定させることになる。結果として、そういった領域ではセンタードリルの需要が逆に伸びています。これも当社が小径ドリルを主に手がける大きな理由の一つです。
当社が小径ドリルへ舵を切ったきっかけとなる出来事があります。当社には1990 年代半ばから展開している「SP センターシリーズ」があって、現在も当社の主力製品になっています。その頃に碌々産業(現・碌々スマートテクノロジー)が「MEGA」という微細加工機を開発して、「繰り返し精度が良いので穴位置がピタッとそろう」と謳っていたのですが、確かに機械の精度は良いのに加工の際に工具が逃げてしまって位置がばらつく。それで精度がしっかり出せる小径のセンタードリルを探していたときに、当社のSP センターが非常に良いという話を耳に挟んだそうで、「小径のSP センターをつくってくれないか」と依頼されました。当時は小径向けの工具研削盤はなかったので非常に苦労しましたね。MEGA も1 台導入して、社内でどんどんテストができるようにしました。そうやって開発した小径ドリルで機械の繰り返し精度に近い穴位置情報が出せた。この開発を通じて、「小径の高精度の要求があるんだな」と知り、その後は小径のセンタードリルをどんどんラインナップしていったのです。
イワタツールの主要製品の一つ「超硬SP センター」(写真提供:イワタツール)

イワタツールの主要製品の一つ「超硬SP センター」(写真提供:イワタツール)

当時の碌々産業としても非常にありがたかったでしょう。そこで小径の技術を磨いてきたのですね。

その頃EV シフトが叫ばれ始め、「自動車部品も減っていくから自動車以外の需要を取り込まなければいけない」と、ハードディスクや半導体系、情報機器など小物部品加工用の小径工具もかなり手がけました。
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