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型技術 連載「巻頭インタビュー」

2025.05.19

独自の工具設計・製造技術を礎にこだわりの小径ドリルを世に提供する

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㈱イワタツール 代表取締役社長
岩田昌尚氏

Interviewer
㈱C&G システムズ
商品企画統括部 統括部長
小泉 哲氏

切削以外の手法を切削に置き換える提案を

日本の金型業界をどのように見ていますか。

強く感じているのが、やはり生産性向上の必要性です。日本の金型業界の生産性が上がらない原因はさまざまですが、金型メーカーにも変革に挑むチャレンジ精神が求められているのではないでしょうか。
当社が初めて金型加工工具として世に出したのが「トグロンハードシリーズ」です。もともと研究の中で偶然、硬い焼入れ鋼に穴をあけるドリルができたのが開発のきっかけだったのですが、これが当初まったく売れなかった。60 HRC 程度までの硬さだったら既存の超硬ドリルで穴あけできないことはないし、そもそも穴あけは焼入れ前に行うのが常識ですから当然と言えば当然です。ところが、愛知県の三洋技研という金型メーカーがこれを評価してくれた。「この工具の長いものをつくってくれたらワイヤカットで穴をあける必要がなくなる」と言うのです。この会社はある自動車の試作金型をものすごい短期で要求されていて、細穴のワイヤ放電を行う時間がなく、とにかく早急に金型を仕上げなければならない状況にありました。それで要求を満たすドリルを納めた結果、ドリル一発で焼入れ鋼に公差H7 で直径の20 倍の深さの穴があいたのです。だからマシニングセンタ1 台で形彫りもイジェクタピンの穴あけも全部終えられて、無事金型を納品できた。三洋技研からは「こんな良いモノはもっと売るべきだ。営業用に金型をもう1 つつくってあげたからこれを見本に見せて売れ」と言われて、それでトグロンハードシリーズが一気に爆発したのです。
 何が言いたいかと言うと、三洋技研は非常に珍しい例で、日本の金型メーカーはこれまでのやり方を変えて工数や加工時間を短縮することに積極的にチャレンジしない面があると感じています。ドリルでやれば圧倒的に工程短縮できると伝えても、日本の金型メーカーはなかなか首を縦に振ってくれない。
トグロンハードシリーズ(上)と 三洋技研から提供を受けた金型(下)(写真提供:イワタツール)

トグロンハードシリーズ(上)と 三洋技研から提供を受けた金型(下)(写真提供:イワタツール)

おっしゃる通り、保守的で新たな挑戦にも慎重な姿勢を見せるところは少なくありません。

一方でトグロンハードシリーズは欧州でとんでもなく伸びていて、日本での売上げを抜いています。欧州の顧客は「これは早い、工程短縮できる」とすんなり受け入れてくれて、おかげで販売の勢いもものすごい。欧州では当社の知名度なんて微々たるものなのに。実際、トグロンハードシリーズを採用してからワイヤ放電加工機をどんどん現場から処分している超大手メーカーもあって、こちらがハラハラするくらいです(笑)。日本の金型メーカーに対しては生産性の向上を目指した変革にも大胆にチャレンジしてほしいという期待があります。

欧州ではチャレンジしてもリカバリーできる、余裕のある納期と価格で発注する企業が多いというのも、そうした日本と欧州との違いを生み出す理由の一つになっていると思います。日本の金型メーカーにも新たな挑戦をしたいという熱い思いを抱いているところは少なくありません。

確かにそれはあると思います。視点を変えれば、当社としてはそうしたチャレンジを支えるという意味でも、他社の工具を当社のものに置き換えてもらう提案ではなくて、切削以外の手法を切削に置き換えてもらえる提案や製品開発ができるようにならなければいけないと感じています。

なるほど。そうした発想こそが御社の独自性を支えているのですね。本日はいろいろなお話をどうもありがとうございました。
岩田昌尚(いわた まさなお)
1991 年 中部大学 経営情報学部 卒業
同年 ㈱日立旭エレクトロニクス 入社
1993 年 ㈱イワタツール[旧㈱岩田鉄工所]入社
2008 年 同社 代表取締役社長
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