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機械技術

2025.01.30

【特別座談会】機械加工現場の自動化を見据えた「見える化」技術のこれから

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切削・研削・接合の見える化技術を提供し機械加工メーカーの競争力向上に貢献する

加工中の温度、力、振動をモニタリング

山本 山本金属製作所は1965 年創業の機械加工メーカーです。切削による部品加工が中心でしたが、2009 年頃から加工のモニタリングに取り組み始めました。リーマンショックをきっかけに“ お客様の求めるものを安くつくれる会社” から、チタンや耐熱合金など難削材の加工を手掛ける“ オンリーワンの会社” へと軸足を移したことが背景にあります。難削材を削るには、加工のことをもっと知らなければいけない。そこで、購入した動力計や赤外線サーモグラフィでモニタリングを始めたのですが、それでは足りず、加工中の温度を計測するツールホルダ「MULTI INTELLIGENCE(マルチインテリジェンス)」を開発しました。

笹原 15 年前からとは、先駆的ですね。

山本 IoT が言われ始める少し前から取組みを始めたので、今では温度と力、振動が測れるようになりました。現場向けの低速サンプリングタイプと生産技術向けの高速サンプリングタイプを展開しており、近年は、得られたデータを活用するために、工作機械のCNC と連携するためのソフトウェア「Advanced Control(アドバンスドコントロール)」の開発に力を入れています。その理由としてモニタリングツールを機械加工現場に導入する際、「データを自動でとってほしい」、「異常が出たら自動で機械を止めてほしい」というニーズがあるからです。また、切削加工だけでなく、FSW(摩擦攪拌接合)への適用も進めています。

笹原 FSW は2015 年に基本特許が切れて実用化が進んできた技術ですね。

山本 EV のバッテリーケースなどに、ギガキャストと並んでFSW の適用が模索されています。FSW は接合中の温度と力が品質に関わることがわかっているので、モニタリングしながらお客様に品質改善してもらえればと考えて製品展開しています。マシニングセンタ(MC)やロボットにFSW システムを取り付けて行う加工試験も社内で実施しています。

加工現場や開発部門で導入進む

笹原 次に、見える化システムの導入状況をお聞かせください。

阿部 まず前提として、センサ内蔵工具はお客様に販売することを主目的にしていません。われわれの工具をうまく使ってもらうために、お客さまと当社が一緒に改善を進めていくためのツールと考えています。そのうえで、2023 年10 月の製品発表から24 年度前半までの期間中、約600 の案件に対応しました。当社のテクニカルセンターで対応するケース、お客様の現場を訪問するケースの両方があり、旋削加工から穴あけ、フライス加工までいろいろな加工に使われています。なお、お客様からの要望を受けて24 年11 月からは一部でレンタルを開始しました。

笹原 御社の工場でも使われているとか。

阿部 カッタやドリル、エンドミルの量産工場で実際に使っています。一般的な部品加工と切削工具とでは物量に違いはありますが、自社工場で試してみて、得られたデータを最終的にはお客様のために役立てたいと考えています。

板津 当社の場合はといしの観察ツールなので、まずはといしメーカーを中心に販売を進めています。と粒の分布や構成をリアルタイムに見ることができるため、開発したといしのテスト加工段階で使われています。なお、現在のグライドアイは機上に常に固定してあるタイプではなく、必要なときに取り付けるポータブル型です。今後はといしの上に常に固定しておく機上搭載型を開発し、研削盤に搭載した状態で販売できるようにするのが目標です。

笹原 ポータブル型が付けられるのは御社の研削盤だけですか。

板津 どんな研削盤でも取り付けられるのですが、常に観察できるわけではないので、機械加工の現場で使うのは難しいと思います。クーラント液がかかってもリアルタイムで観察できるのが理想ですが、それにはまだ改善が必要です。ただ、生成AI を使うことで、見えないモノが見えるようになることがわかってきたため、いろいろ面白いことができそうです。

山本 当社ではツールホルダ型のセンシングデバイスの販売とレンタルをしています。ほかにも、当社の工場に材料や工具をもち込んでもらい、試験データのみもち帰ってもらう形式や、お客様の工場にわれわれがデバイスをもち込み、モニタリングしてデータのみ納める形式があります。データをどう見たらいいかわからないというお客様には、当社へのもち込み、お客様への訪問という形が多くなりますね。われわれはロボットシステムインテグレータも手掛けているので、モニタリングから始まり最終的に生産ラインを含む全体を手掛けるケースもあります。そういう仕事を含めれば年間約5 億円の事業になっています。

笹原 5 億円は大きいですね。

山本 最近はセンシングデバイスを教育サービスにも活用しているので、それをすべて含めた数字です。FSW 領域で特に多く、FSW がそもそもどんなものなのか、温度、力のモニタリングがなぜ重要なのかを当社に来て学んでもらっています。
ツールホルダ型のセンシングデバイス 「MULTI INTELLIGENCE(マルチインテリジェンス)」(写真提供:山本金属製作所)

ツールホルダ型のセンシングデバイス 「MULTI INTELLIGENCE(マルチインテリジェンス)」(写真提供:山本金属製作所)

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