人手不足への対応や危険作業の廃止を目的に需要が高まる「バリ取りの自動化」。スギノマシンが掛川事業所(静岡県掛川市)内に開設したバリ取り研究所「デバラボ(Deburring Labo at SUGINO)」は、バリ取りの自動化に向けた解決策を提供する技術交流&研究施設だ。最大の特徴は、顧客との話し合いや共同作業を通じて、個々の現場に合った解決策を提案できる点。機械加工や鋳造工程で発生するバリは千差万別で、それを除去する方法も1 つではない。現場ごとに異なる最適解を見出すには、ツールや設備の単なる紹介にとどまらない、顧客を巻き込んだ取組みが必須となる。
デバラボでは、バリ取りだけでなく、マシニングセンタ(MC)での切削加工でバリの発生をいかにコントロールするかも研究している。バリ取りとバリ抑制の両面からアプローチすることで、「バリ取りで困ったときの相談先」としての地位を確立しつつある。
バリ取り相談窓口を1 カ所に
デバラボの開設は2023 年7 月とつい1 年ほど前だが、同社とバリ取りとの関わりは10 年以上前にさかのぼる。もともと同社には、ウォータージェットカッタや部品洗浄機、MC などを扱う設備関連の事業と、仕上げ用工具を主力とする工具関連の事業があり、前者は富山県内の2 拠点で、後者は掛川事業所で製造している。バリ取りに関しては、設備関連の顧客と工具関連の顧客それぞれから「困っている」と相談があり、富山ではウォータージェットによるバリ取り洗浄機を、掛川ではバリ取り用ツールを開発するなど別々に対応していた。
デバラボの責任者を務める武藤充マーケティング課課長(図1)は、富山と掛川の2 系統でバリ取りをターゲットにした商品が展開されていたことについて、「バリ取りで困っているお客様にとっては、同じスギノマシンの中で富山と掛川のどちらに相談すればいいのかがわかりにくい状態でした」と振り返る。「担当する営業マンによって、ウォータージェットバリ取り洗浄機を提案するのか、ロボットにバリ取りツールを取り付けて自動化する方法を提案するのかが変わってしまうのは、お客様のためになりません。ならば、バリ取りに関する相談窓口を1 カ所に集めようと考えたのが、バリ取り研究所をつくるきっかけでした」
コンセプトは2022 年に開催されたJIMTOF(日本国際工作機械見本市)で発表した。初めて「バリ取り研究所」と銘打ち、バリ取りに関する同社の製品やサービスを集めて展示したのだ。来場者の反応は非常に良く、「バリ取りに関する相談先が欲しい」、「バリが多様すぎて、誰に相談すればいいかわからなかった」、「相談しながら一緒に解決に向かっていける“場”があれば」などの声が聞かれたという。
話し合いで解決策を探る
デバラボは掛川事業所の一区画にあり、相談者との打合せを行う「Hub エリア」(図2)と、バリ取り設備のある「Labo エリア」(図3)に分かれている。Labo エリアにはウォータージェットバリ取り洗浄機、バリ取りツールを取り付けたロボットバリ取りシステム、MC が各1 台あり、それぞれに1 人の担当研究者がついている(図4)。デバラボ自体が開発部門の一部であるため、研究者らは外部からの相談に応じるのと並行して研究活動も行う。
図2 打合せのためのスペース「Hub エリア」(写真提供:スギノマシン)
図3 バリ取り設備が並ぶ「Labo エリア」(写真提供:スギノマシン)
図4 武藤課長(中央)とデバラボを担当するマーケティング課のメンバー