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機械技術

2024.12.06

「バリ取りの自動化」に役立つ知見を蓄積し顧客との共同作業を通じて解決策を提案―スギノマシン

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工具や条件を変えテスト

 これらバリ取りの自動化とともに取り組んでいるのが、MC 加工で発生するバリに関する知見の蓄積である。工具や加工条件を変えて、どのようなときにバリが発生するのか・抑えられるのかを検証しているほか、バリ取り工具でのバリの除去状態を調べ、顧客との話し合いに役立てている。バリに関して提唱されている学術的な知見を実際に試し、現場に落とし込めるかどうかも調べている。

 たとえば、クロス穴加工のバリ取りで一般的に使われる、穴を出たり入ったりすることでバリを取る工具。簡便な方法だが、ユーザーに話を聞くと、バリが取れないケースがあるという。原因を調べるためテスト加工を行い、加工面をスキャナ式3 次元測定機で測定したところ、穴側面のカーブに工具がうまく追従できず、加工を繰り返すうちに取り残しが発生することが確認できた。

 また、バリ抑制に有効とされる市販ドリルを集め、送り速度やクーラントを変えて実験し、どこまでバリが抑えられるか、現場で使えるかどうか(生産性との兼ね合い)も調査した。すると、工具によっては、かなり遅い送り速度でないとバリ抑制の効果が得られないものがあることがわかった。また、クロス穴加工にドリルを使う場合、交差する穴同士の直径比率がバリの大きさに関係することも明らかになったという。

「加工のプロであるお客様が感覚で捉えていることを、われわれは数値で捉えます。こうした数値を基礎データとして頭に入れておくことで、お客様との話し合いがスムーズに進むのです」

 最近取り組んでいるのが、CAM の負荷制御を活用した超高速加工だ。バリ取りの時間を捻出しつつ、トータルの加工時間を抑えるには荒加工の高速・高精度化やバリの均一化が必須。そこで、工具を長持ちさせる効果のある負荷制御に着目し、テスト加工を行った。高速軸移動が可能な40 番のMC(図8)で加工したS50C のワーク(図9)は、わずか2 分でこの形状を削り出しており、バリの出やすい角の部分がきれいに加工されている。
図8 40 番の小型・立形MC「SC-V40a」(写真提供:スギノマシン)

図8 40 番の小型・立形MC「SC-V40a」(写真提供:スギノマシン)

図9 負荷制御を活用した超高速加工ワーク

図9 負荷制御を活用した超高速加工ワーク

人手不足で進む自動化

 バリ取りの自動化ニーズはこの数年で一気に高まりを見せている。同社がMC に取り付けるバリ取りツールBARRIQUAN を発売したのが2013年。その2 年後の2015 年にロボット用BARRIQUANを発売したが、当時は「手作業でできているのに、どうしてロボットに置き換える必要があるのか」という考えの現場が多かったという。流れが変わったのは新型コロナが収束し始めた時期。人同士の接触が避けられる中で自動化が求められるようになり、そこに人手不足が重なった。危険を伴うバリ取り作業をやめようという流れも強まっていた。

「バリ取り現場はとにかく人がいない。以前とは現場の危機感がまったく違います。ロボットに対する意識も変わってきました。機械加工現場でのロボット活用に対するハードルが下がり、立派な選択肢の1 つになっています」

 デバラボは開設から1 年にも満たない間に相談件数が100 件を超え、訪れた相談者数も80 組以上になった。今後は「上流から考えること」をバリ取りに悩む現場に提案していく。

「バリ取りは工程設計の中できちんと位置付けられていない、いわゆる“しわ寄せ工程”です。目指すゴール(品質)があいまいで、しかも時間とコストがかかるので、これまでは自動化が進みませんでした。一方、“誰かがやらなければならない工程”であるのも事実。どうせやるなら、皆で分かち合った方がいい。そのためには商品開発や設計など上流から考える必要があります。最適な手段が見つからなければ、われわれがサポートします」

 人手不足が深刻化し、作業環境の改善も求められる中、バリ取りを人手に頼る時代は終わりつつある。バリとの新しい付き合い方を考えるうえで、デバラボの活動は1 つのヒントになりそうだ。
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