Labo エリアとドア1 枚を隔ててつながるHubエリアには、複数人が座れるテーブルや大型モニタ、アイデアを書き込むためのホワイトボード、スキャナ式の3 次元測定機(図5)などが設置されている。このスペースが、デバラボの目指すところをよく示している。
図5 スキャナ式の3 次元測定機でバリの厚みや高さをすぐにチェックできる
「われわれは話し合いを大事にしています。相談内容を書類で提出してもらい、それに対して当社だけで答えを出すのと、ここで話し合いながらお客様と一緒に答えを出すのとではまったく違います。お客様がどういう問題を抱えているのか、最終的にどういう形にもっていきたいのかを聞き、それに対してわれわれが提案し、一緒にテスト加工しながら解決策を探っていきます。3 次元測定機を用意したのも、いいアイデアが出たら隣のLabo エリアでテストし、その結果をすぐに確認できるようにするためです」(武藤課長)
話し合いの場では、「ゴールを明確にすること」を心掛ける。ゴールがあいまいであることが、バリ取りの自動化を妨げる要因となっているからだ。たとえば、図面によく書かれている「バリなきこと」という言葉。設計者としての経験もある武藤課長によると、設計者がこれを書き込むのは、具体的な数値を書き込むことで、現場の手間やコストが増えるのを防ごうという“善意”によるケースが多い。ただ、現場で実際に加工する立場からすれば「C0.5」のように一応は数値を設定しておく必要があり、過剰品質にならざるを得ない。過剰品質になればなるほど、人による手作業が必要になり、自動化から遠ざかる。
「だからこそゴールを決め、『何をもってこの自動化を完成とするか』を明らかにするのが大事です。そのためには設計者も巻き込まないといけません。設計者に納得してもらうには、数値的なエビデンス(根拠)がいる。バリの厚みや高さをすぐに確認できる3 次元測定機は、そのためにも役に立つのです」
強みとする2 つの自動化手法
同社が提案するバリ取り自動化の手法は大きく分けて2 つ。ウォータージェットバリ取り洗浄機によるものと、フローティング加工が可能なバリ取りツールによるものであり、それぞれ得意分野が異なる。バリ取り洗浄機「JCC シリーズ」(図6)は最大50MPa の高水圧とキャビテーション(水中の空気が破裂するときの衝撃)でバリを除去する。工具の届かないクロス穴のバリ取りに有効で、バリ取りと洗浄を同時に行えるため、工程集約にもなる。刃で直接削らないため、エッジを残したバリ取りも得意だ。
図6 バリ取り洗浄機「JCC シリーズ」(写真提供:スギノマシン)
バリ取りツール「BARRIQUAN」はフローティング加工でバリを除去する。フローティング加工とは、工具をワーク形状に一定の圧力で倣わせることでバリの取り残しや削りすぎを防ぐ方法。BARRIQUAN は工作機械の主軸に取付けるタイプと、ロボットの先端に取り付けるタイプ(図7)があり、用途に応じて使い分けができる。昨今、ニーズが高いロボットタイプは、形状にばらつきのある鋳物の機械加工後のバリ取りに威力を発揮する。また、同社ではバリ取り洗浄機の中にフローティング加工用のバリ取りツールを取り付けたハイブリッドタイプも提供している。顧客の求める最終的な品質や許容されるコスト、どの工程でバリを取りたいのかなどを勘案し、最適な方法を顧客と一緒に導き出している。
図7 ロボット先端に取り付けられたバリ取りツール「BARRIQUAN」(写真提供:スギノマシン)