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工場管理 連載「リーダーに捧ぐZ世代の新人育成バイブル」

2024.10.07

第1回 イマドキの若者をどうやって教育したらよいのか?

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ジェムコ日本経営 古谷賢一

ふるたに けんいち:本部長コンサルタント、MBA。経営管理、人材育成から、品質改善支援、ものづくり革新支援など幅広い分野に従事し、地に足がついた活動をモットーに現場に密着。きめ細かい実践指導は国内外の顧客から高い評価を得ている。“工場力強化の達人”とも呼ばれている。おもな著書は『まんがでわかるサプライチェーン 知っておくべき調達・生産・販売の流れ』(日刊工業新聞社)。
URL:https://www.jemco.co.jp
 現場のベテラン作業者の方々が、毎年のように頭を悩ませる問題の1 つが、新入社員の教育。工場の現場では、人材の不足が常に問題となっているので、工場に新しい仲間が入ってくることは喜ばしいことだ。しかし一方で、新入社員をきちんと教育して、生産活動に貢献できるように育てるには、多くの苦労が伴うものである。特に、新入社員の指導役となった先輩社員にとっては、自分が生産活動に多忙なことに加えて、現場の作業に不慣れな新入社員に対して、適切な教育を施すことは大きな負担になっていることも事実だ。

 新入社員の教育では、昨今「ハラスメント」に対する配慮も欠かすことができない。強い口調で指導する、覚えが悪いと叱りつける、といった積極的な行為だけではない。指導をしない、手抜き指導をする、といった消極的な行為ですら、新入社員が不満を持ってSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)などに投稿してそれが拡散すると、企業は社会から厳しく指弾されてしまい、経営に大きなダメージを被ってしまう(図1)。「気遣いは、昔上司に、今部下に」という、サラリーマン川柳が話題になった背景には、指導役となった先輩社員の苦悩があるのだろう。

来年度の新入社員はどんな人?

 新入社員が仲間に加わるたびに、先輩社員が「最近の若いやつは」と愚痴をこぼすことは、もはや日常の風景かもしれない。しかし冷静に考えてみると、先輩社員でも、そのまた先輩社員から入社直後に「使い物にならない」などと愚痴をこぼされていたであろう。いつの世でも「先輩は、若い奴らを、はがゆがり」という川柳が的を射ている。

 時代が変われども、新入社員の基礎的な能力が低下しているのではなく、単に先輩社員たちが経験を通じて能力を高めたに過ぎないのだ。当たり前だが、先輩社員にとって「知っている、できている」ことでも、新入社員にとっては「知っていない、できていない」。このギャップに気づかない人が、「最近の若いやつは…」と愚痴るのだ。

 2023 年の4 月に入社する新入社員は、高校卒で2004 年生まれ、大学卒で2000 年生まれが中心となろう。これらの世代を含め、10 代~ 20 代半ばまでの若者を「Z 世代」と呼んでいる。テレビや雑誌など、メディアでもよく使われる言葉なので、耳にした読者諸氏も多いことだろう。この「Z 世代」とは、もともとアメリカで使われていた「GenerationZ」が語源で、従来の若者とは、生活スタイルや考え方が違うことを指して使われる。

 もちろん、若者全員が同じ特徴を持っているわけではないので、この「Z 世代」の括りもまた、その世代に共通する特徴を表現する1 つに過ぎないが、「Z 世代」の特徴として語られるキーワードは、われわれが生産現場において新入社員を教育する際に非常に重要な視点となる。
図1 従来の教え方では伝わらない

図1 従来の教え方では伝わらない

「Z 世代」に合わせた教育とは?

 これから新入社員として入ってくる「Z 世代」の若者は、決して従来の人より能力が劣っているわけではない。ただ、先輩社員たちと異なるのは、身の回りの環境が大きく変化をしている中で育ってきただけなのだ。そのような「Z 世代」の若者を適切に教育するためには、「Z 世代」の特徴を理解することがポイントになる。

 「Z 世代」の代表的な特徴をいくつか挙げてみる。まず、「デジタルネイティブ」。子供の頃から身の回りにスマホやタブレットが存在しており、デジタルツールを自在に使いこなすことができる世代。逆に、紙に書かれた文字を読む経験が、それ以前の世代に比べて少ないと言われている。学校の授業ですら、パソコンやタブレットの活用が増えて、教科書を熟読するといった機会が減少しているのだ。すると新入社員の教育にはデジタルツールの活用がカギになる。

 もう1 つが、「共感を大事にする」。一方的な押し付けを嫌い、自分が納得したことには一生懸命になるが、理不尽なことや無意味と感じることには強く抵抗をすると言われている。すると新入社員の教育には頭ごなしに教えるのではなく、背景や理由をきっちり教えることがカギになる。

 さらに、「教えられ慣れている」。先輩諸氏の中には「教えてほしければ聞きに来い」と指導された経験を持つ人も多いだろう。しかし、学校教育の現場で、ていねいに教えられて育った若者は、教えてもらうことが当たり前と考えている。すると新入社員の教育にはていねいな教育計画の立案と実践がカギになる。

 こういった「Z 世代」の特徴に、違和感を持つ人も少なくはないと思うが、その是非はともかく、現実に新入社員となる若者の特徴であることは事実であり、事実に即して教育のやり方を変えることが大切なのである。

「Z 世代の新人育成バイブル」の全貌

 本連載は、「新入社員の指導者向けバイブル」として、Z 世代と呼ばれるイマドキの若者に合わせた育成ノウハウを展開していく。

 全15 回を新入社員の受け入れ準備から実施、振り返りまでを4 段階に分け、どのような教育を、どのような方法で実施するべきかを解説する(図2)。読者諸氏は、これらを順々に読み進めながら、これから仲間となる新入社員の指導役として、今から適切なスキルを身につけていってほしい。
図2 本連載の全体構成

図2 本連載の全体構成

次回までの振り返り

 次回からは本論に入る。まず、現在の新入社員教育での困りごとを列挙してほしい。指導役となった人たちが何に困っているのか、「一度教えても、すぐに同じことを聞き返してくる」といった困りごとが、指導役にとって歯がゆく、「1 回で覚えろ」と思うのも無理はない。このような、新入社員の教育における問題点や悩みなどを、ぜひご自身で洗い出していただきたい。
今月の検討課題
・ 新入社員教育で、直面した困りごとを列挙してみる。
・ 指導役となった人たちが、何に困っているのかを、振り返ってみる。

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