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プレス技術

2025.03.05

新規導入のロボットラインとサーボプレスが業績好調の一翼を担う―町井製作所

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サーボプレスの利便性を実感

 2018 年のロボットラインに続いて、2021 年には同じくコマツ産機製の200t サーボプレス「H1F」を導入した(写真5、写真6)。既存の門型のメカプレスにき裂が入り油漏れを起こしたためである。それまでの機械はブランクの打抜きに使用していたが、おそらくは衝撃の蓄積が原因であると考えられた。とはいえ、「それを使い続けるのは生産が成り立たないので困っていたとき、『打抜きの衝撃を和らげる生産方法がある』とコマツ産機さんから紹介されたのがH1F でした」(山内専務)。そして、実機を確認したうえで短期間のうちに導入した。
写真5 200t サーボプレス「H1F」

写真5 200t サーボプレス「H1F」

写真6 H1F のワーク取り出し口

写真6 H1F のワーク取り出し口

 「最初はコマツ産機さんのサービスの人に来ていただき、実際の現場で設定方法やオペレーティングの仕方を教えてもらいましたが、意外なほどオペレーターの習熟が早く、操作方法を覚えてからは何でもオペレーター自身で行うようになりました」(山内専務)。

 効果はすぐに実感できた。サーボプレスなので振り子が使えるし速度を緩やかにすることもできる。たまたまこのサーボプレスを最初に実践で使用したのは、前述したアブソーバマウンティングの前工程のブランキングだった。同社の生産品の中でも数が多く板厚も2.6mm と厚めだが、「スムーズに打てるし、もちろん故障もなく今日まで使えている」という。音や振動が少ないということは金型寿命が延びることにもなり。今では同機でさまざまな品番を作っている(写真7)。
写真6 H1F のワーク取り出し口
写真7上下 サーボプレスではさまざまな品番を作る(写真提供:町井製作所)

写真7上下 サーボプレスではさまざまな品番を作る(写真提供:町井製作所)

 オペレーターの評判もよく、「振り子の効果でspm が上がったことを実感。また金型データを記憶させることができるので、選択キーを押すだけでダイハイトが変えられるなど、段取りの設定が楽になった」という。生産スピードが上がると短時間で仕上がるので、余った時間を他の品番に振り向けることもできている。「本当に、今は仕事がすごく多いのです。どんどん種類が増え、H1F はフル回転の状態ですが、逆に残業は減少しています」と山内専務。

生産品は約1700 種類

 現在の生産品は自動車の車体を形成するための部品が多く、自動車のあらゆる部位に使用され、アイテムとして約1700 種類を生産。多い月には1000 万個の部品を客先に納入することもあるという。代表的な生産品には、車の運転席前のインパネに付き計器を支えるブレース・インパネ・カール・アッパー。車の運転席のハンドルを固定するステアリング・サポート。インパネの両端に付き、インパネと車体フレームを接続するブラケット・インストルメントパネル・マウンテン。ハイブリッド車のインバータを乗せ固定する受け台となるブラケット・アッシー・インバータ。ハイブリッド車のウォーターポンプを取り付ける台の部品であるブラケット・ベース・ウォーターポンプ。車のリヤーフェンダーの骨格と車体フレームをつなぐ部品のトレーリングアームなどがある。

 また最近、増えているのが次の5 部品だ。1 つ目はインパネ・リンホース・ブレース。パイプ状にいろいろな小部品が付くカーナビを支える部品である(写真8)。2 つ目はロアバックの構成部品。3 つ目はバッテリークランプ。バッテリーを積み固定するクランプ付きの部品である。4 つ目はラジエーターマウンティング。エンジンを冷却するためのラジエーターを投入するためのブラケットである(写真9)。そして5 つ目がEV 部品だ。
写真8 インパネ・リンホース・ブレース(写真提供:町井製作所)

写真8 インパネ・リンホース・ブレース(写真提供:町井製作所)

写真9 ラジエーターマウンティング(写真提供:町井製作所)

写真9 ラジエーターマウンティング(写真提供:町井製作所)

 同社が手がけるEV 部品の精度はボディ系部品と同等レベルの10 分台公差(10 分の1mm オーダー)のものだが、アッセンブリの後に脱脂を行い、その状態で納品するのが特徴だという。

障害者や高齢者の雇用促進も狙う

 現在、サーボプレスは200t 機1 台だけだが、サーボの良さを実感できたため、今後はサーボプレスの台数を増やすことや、さらに大型の機械にチャレンジすることも視野に入れている。これまで同社が保有するプレス機械は意識的に最大でも250t に留めてきた。300t 以上になるとピットを掘らなければならないからだ。こうした理由から、「お客さまから要請があっても、『当社は250t までです』とお断りしてきましたが、金型の大型化時代に対応し、今後はそういう要請にも応えていきたいと考えています」(山内専務)。

 もっとも、大型機械を入れる前にやるべきことはある。それがサーボプレスの活用だ。250t クラスの順送では、品目によっては機械がばたついて送りミスが起きるケースが出ている。そういうばたつきを減らし、精度よく打つにはサーボプレスが適していると感じている。また既存のメカプレスのダイハイトをすべての金型で共通の高さにすることは難しい。かといって、そこに人の手が入ると設定ミスが起こりやすいが、その設定が一発でできるのもサーボプレスの大きなメリットであり、将来的には第2、第3 のサーボプレスの導入も視野に入れている。

 このほか、切り口は異なるが、同社では障害者雇用にも力を入れており、「もにす認定」(障害者雇用の促進に関する取り組みで優良な中小事業主を厚生労働大臣が認定する制度)も受けている。「現状では障害者の方々には製品取りのために現場に入ってもらっていますが、サーボプレスによってこれまでオペレーティングで不可欠であったダイハイトの設定がキー1 つ押すだけですむことは今後、高齢者や障害者、外国人の方々の活躍場を増やせるのではないかと期待しています」と山内専務は語っている。
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