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プレス技術

2025.02.19

サーボプレス+サーボ搬送ロボットラインで高速生産と省エネ稼働を実現―齋鐵

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 齋鐵(新潟県三条市)は住宅設備機器メーカー向けの部品・ユニット製造をメインとする金属加工会社。プレス・板金・溶接・組立・塗装などの社内一貫生産体制を構築。精密金型の設計・製作も行っている。主力のプレス加工では5 つのロボットラインをはじめ、単発、順送など約50 台のプレス機械を配備。中でも自慢は150t サーボプレス5 台とサーボ仕様の搬送ロボット6 台で構成するサーボロボットライン。メカプレス使用の他のロボットラインに比べ加工速度は約1.4 倍。電気消費量を約40% 節約できているという。「サーボロボットラインで培ったノウハウを今後、さまざまな分野に生かしていきたい」と齋藤孝之輔社長は意欲を見せる(写真1)。
写真1  社長の齋藤孝之輔氏(左)と、社長室主務の伊藤富博氏(右)

写真1  社長の齋藤孝之輔氏(左)と、社長室主務の伊藤富博氏(右)

コロナ社のメインサプライヤー

 齋鐵は1929 年に齋藤鐵之助氏(齋藤社長の祖父)が新潟県三条市の特産品である包丁、ハサミ、爪切りなどの刃物類やタンス金具などを製造する町工場として創業。戦時中は飛行機部品の製造に従事。戦後は農機具や煙突部品の製造などに業務の幅を広げた。転機となったのは1958 年に三条市に本社を置く住宅設備機器メーカーの内田製作所(現株式会社コロナ)との取引を開始したことである。以来、コロナのメインサプライヤーとして、ファンヒーターなどの暖房機器やエアコンなどの空調機器、給湯器、暖房システムなどの部品・ユニット品の供給を主な事業にするようになった。

 プレス加工は内田製作所製の小型プレス機械の活用から始まり、その後は100 ~ 150t クラスの単発プレスを用いて製造していた。しかし、ファンヒーターの需要が急速に伸びた1980 年代以降、単発プレスでは生産が間に合わなくなった。一般的なメカプレスのほか、順送やトランスファプレス、ラインペーサも用いたりもしたが、そもそも1 日に生産できるのは3000 ~ 4000 ユニットが限界のところへ、倍増数の生産を求められるようになり、既存の設備ではとても追いつけなくなった。

新潟県内初のプレスロボットライン

 そこで、1982 年にアマダ(現アマダプレスシステム)製の5 台の150t メカプレスと搬送ロボットによるロボットラインを導入した(写真2)。「私の入社以前のことですが、私の父(現会長)が『お客さまの要望に応えるには、自動化する以外に方法はない』と判断したのです。プレスロボットラインは新潟県内では初めてのことで、多くの方が当社のロボットラインを見学に来られたと聞いています」(齋藤社長)。
写真2 メカ式のプレスロボットライン

写真2 メカ式のプレスロボットライン

 実際に、ロボットラインの生産能力は当時としては画期的であり、メカプレスと搬送ロボットによるロボットラインはその後も増設を続け、現在も5 ラインが稼働している。

オールサーボのロボットライン

 最初のロボットラインの導入から30 年余り経過した2014 年、今度はアマダプレスシステムの150t サーボプレス「SDE︲1522」5 台とサーボ駆動の2 軸搬送ロボット「RHN」6 台で構成するサーボプレスロボットラインを導入した(写真3)。同ラインは社内ではSS1(サーボプレス+サーボロボットライン1 号)と呼ばれている(以下、SS1)。
写真3  150t サーボプレス5 台とサーボ仕様の搬送ロボット6 台で構成するサーボロボットライン(SS1)

写真3  150t サーボプレス5 台とサーボ仕様の搬送ロボット6 台で構成するサーボロボットライン(SS1)

 「サーボプレスは当社が導入する2 ~ 3 年前頃から普及し始め、私自身、大いに興味を持ちまして導入の機会を狙っていました。そこにオリイさん(現アマダプレスシステム)から『当社でサーボ駆動の良い搬送ロボットをつくったし、ちょうど国の補助金申請のタイミングにも合うので、導入を検討してみないか』という話があったのです」(齋藤社長)。オールサーボ仕様のロボットラインは、この頃全くの新しい仕様であり、価格的にも値が張るため、通常であれば二の足を踏むところだが、30 年にわたるロボットラインの運用で効果がはっきりと読めていたことと、補助金活用の可能性が決め手となった。かくして「平成24 年度円高・エネルギー節約対策のための先端設備等投資促進事業」への応募(2013 年6 月)と採択により導入が実現した。

 システム導入の最大の目的はさらなる生産力の向上だが、オールサーボの特徴を生かし既存設備では難しかったさまざまなことに挑戦することにした。生産性向上の面では、セッティングの半自動化による段取り時間の大幅な短縮。1 ショット当たりの加工時間の短縮。チョコ停の削減、材料と金型の接触時間、スピードを自由に設定することによるかす上がり、打痕、傷を最小限に抑え、生産性を向上させること。品質面では、打抜き、曲げ、絞り、張出し・圧縮加工などで、それぞれに合致した最適加工条件を設定し、安定品質を維持すること。また、ファインブランキング、冷間鍛造、型内複合加工、非鉄材・新ステンレスの加工により、既存顧客以外の新市場を開拓すること。このほか、サーボプレスの大きな特徴である省エネルギー(消費電力、エアー消費、加工油使用料の削減)性を生かし、連続同期運転(プレスを止めない)によるタクトアップ、鍛圧機械特有の騒音減少などを目指すことにした。

期待通りの効果

 実際に運用を始めると、期待通りの効果が現れた。何と言っても他のロボットラインと大きく異なったのは、加工速度が速いことと、使用電気料金が削減できたことである。同社で実施した2023 年5 月から2024 年5 月までの1 年間のロボットライン別の加工数と加工時間の調査では、最初に導入したメカ式ロボットライン(RY1)の1 個当たりの所要時間は0.1003 分であるのに対し、SS1 は0.0629 と約40% 生産性が向上していることがわかった(図1)。同社によると、「加工速度の向上はサーボプレスだけでなくサーボ駆動搬送ロボットによる効果も含まれる」という。次に、同期間中の電気料金を見ると、他のロボットラインに比べSS1 では37.17% 省エネ化された(図2)。サーボプレスはワークの特性に合わせてモーションを変えることができるので製造がスピードアップ。前記目標の大部分を達成することができた。
図1 ロボットライン別の加工数と加工時間

図1 ロボットライン別の加工数と加工時間

図2 SS1 ラインと他のロボットラインとの加工電力料金の比較

図2 SS1 ラインと他のロボットラインとの加工電力料金の比較

 「SS1 は稼働時でもメカ式に比べてそもそも消費電力は少ないが、メカ式は稼働を止めてもモータは動いているのに対し、SS1 は稼働を止めれば電気の消費もピタリと止まり待機電力がかからないのも省エネ化に寄与しているようです」と社長室主務の伊藤富博氏は話す(写真1 右)。
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